仕事も生活も上手くいかずに絶望したOLは、勤務先の社長令嬢である16歳の少女に飼われる形で一緒に暮らし始める……という甘さを連想させるあらすじに反して、1話から不穏。 OL側の事情が明らかになるにつれて、物語はおかしな方向へ向かう。たった1巻で状況は大きく変わり、私は展開にビックリしながら、少女の血縁を巡る物語を追わざるを得なくなる。 警護の男性二人組はウザい程の圧力でOLにつっかかり笑いをもたらす。OLは不器用で嘘をつく事も出来ない誠実さ。何かを隠しつつ隠しきれない?OLを、捻くれているようで意外と真っ当な少女は試すように翻弄する。 この二人の距離感と共に百合的なのは、少女と叔母の関係……というか、叔母が一方的に募らせるある想い。ここには酷く歪んだ「姉妹百合」がある。 様々ないびつな思惑が、お互いを大切に想い始める少女とOLを翻弄する。事態は二人の本意とは少し違って進んでゆく。今後どうするのか……手錠無しで添い寝できる日が来るのを願って。
完結記念に感想書かせていただきます。 「隠れ同人作家の清水さんが同僚の前川さんにオタバレして秘密を握られてこれからどうなっちゃうの!?」 という導入こそ軽妙ですが、ひとを愛することと、創作することに真摯に向き合っているのが本作の魅力だと感じます。 百合はもちろんのこと本格的なマンガ家マンガとしての読み応えも抜群です。 物語を描くのって過酷です。 真面目に向き合えば向き合うほど、ときには現実の人間関係や自分自身を傷つけてしまうことさえあります。 一方で、その過酷さは誰かの支えがあれば乗り切れることもあります。 物語を通じて前川さんが「誰かと一緒に描く」ようになり、清水さんが「誰かの傍にいる」ことを選ぶのが私にはとても尊いことのように思えました。 そして最終3巻のボリュームが圧巻。260ページ超えてます! ふたりがそれぞれのゴールと言うか、あり方を決めたあとのようすがじっくりと描かれています。 こういうエピローグがたっぷり読めるのはなんだか幸せですね。 素晴らしい余韻の残る作品でした。
秘めた同性愛を同人誌にぶつける清水真琴。父を見返すために漫画を描き、見失って描けなくなった前川茜。創作の動機も愛情の形も歪んだ二人の、繋がるような繋がらないような、絆の物語。 —— 拗らせながらも前向きに生きてきた清水の前に現れた前川は、拗らせ方が尋常ではない。清水は翻弄されるが、それでも前川を気にかける。 一方、清水を試すように距離を縮めたり、突き放したりする前川。 小悪魔女子の前川が抱く「病み」と、どうしようもない寂しさが、捻じ曲がって清水に向かうのが息苦しい。 彼女達を繋ぎ止めるのは「漫画創作」。過去に間違ったモチベーションで失敗した前川には、真っ直ぐに創作の楽しさを語る清水は苦しい存在。それでいて、自分の中にもあった創作の喜びを、思い出させてくれる存在でもある。 前川が自分の創作意欲を見出そうとするのを、清水は応援する。そして寄り添いながら、二人は思う。 「色恋で壊れるような関係など、いらない」 この想いは、例えば過去に、友情に恋愛を持ち込んで失敗したことのある人なら、分かるかもしれない。 大切な事との距離の取り方を致命的に間違えてきた、「未だ病み」の中にいる二人。それでも少しずつ時間を共有し、気持ちをぶつけ合ってきた彼女達は、今後、どのような絆を繋ぐのか。切ない気持ちを共有しながら、見守りたい。 (2巻までの感想) (創作の動機が歪んでいることを否定する意図はありません。本質的に創作の動機は属人的で歪んだものであり、だからこそ愛おしいものだと考えます)
仕事も生活も上手くいかずに絶望したOLは、勤務先の社長令嬢である16歳の少女に飼われる形で一緒に暮らし始める……という甘さを連想させるあらすじに反して、1話から不穏。 OL側の事情が明らかになるにつれて、物語はおかしな方向へ向かう。たった1巻で状況は大きく変わり、私は展開にビックリしながら、少女の血縁を巡る物語を追わざるを得なくなる。 警護の男性二人組はウザい程の圧力でOLにつっかかり笑いをもたらす。OLは不器用で嘘をつく事も出来ない誠実さ。何かを隠しつつ隠しきれない?OLを、捻くれているようで意外と真っ当な少女は試すように翻弄する。 この二人の距離感と共に百合的なのは、少女と叔母の関係……というか、叔母が一方的に募らせるある想い。ここには酷く歪んだ「姉妹百合」がある。 様々ないびつな思惑が、お互いを大切に想い始める少女とOLを翻弄する。事態は二人の本意とは少し違って進んでゆく。今後どうするのか……手錠無しで添い寝できる日が来るのを願って。