こういうことがいつか自分の身に降りかかることはあると思っていたほうが良い。正直、気をつけようがないものでもあるけど。 ただこの漫画の何が一番恐ろしいかって、主人公が高齢者の一人暮らしということだ。まわりの友人知人は、主人公に何が起こっているのか察しているにも関わらずそれを直接伝えることはしないし、ましてや病院をすすめることもない。優しい言葉をかけて少し距離を置くだけ。 彼女のこの先を考えてものすごく不安な気持ちになって読み終えた。
※ネタバレを含むクチコミです。
自分の近くに望月さんのような方がいらっしゃらないのでなんとも言えないのですが……実際にこんな感じになるのかな、と思ったらぞわっとしました。怖い、純粋に。想像して喉奥がヒュッてなった。 誰だって、いつそうなってしまうか分からない。そのときなんて来ないでほしいと思っても、来てしまうかもしれない。自分だってこうなる未来はあり得る。そのどれもが怖くて仕方ないです。胸にぶっ刺さる読切でした。
冬虫カイコさん初の商業作品集。女性同士の関係性を主軸とした話が中心となっており、仄暗さがあるのが特徴となっています。 私は冬虫カイコさんの鋭利な眼差しによる世界の切り取り方が好きです。 例えば、webでも大いにバズったこの短編集の1作目「帰郷」の冒頭。従妹の葬儀のため数年ぶりに帰ってきた故郷でタクシーの運転手に行き先を告げただけで悼句を返された時に出る 「半径数キロメートルの円の中で すべてが進行し すべてが共有される だだっ広いくせに狭苦しい社会」 という息苦しい田舎の閉塞感への端的な表現。 こうした良さが随所に見られます。多くの人が抱いたことがあるであろう何とも形容しがたいモヤッとした想いの見事な表出など、マンガによる抽象概念の言語化に非常に長けている方だと感じます。 「きずあとに花 第2話 ふたりの色目」も6万RT・20万いいね以上されたお話ですが、個人的にも特に好きです。「かわいい」という言葉にトラウマのある年配の古文教師と、何かにつけて「かわいい」を連呼するギャルの物語です。 描き下ろしの「刺青」もそうですが、普通に生きていれば交わらない者同士が偶然の縁で美しく結びつく瞬間が謳うように描かれており、沁みます。 劣等感や嫉妬など負の感情に苛まれる主人公たちは、他の物語であればそんな感情とは無縁の主人公に隠れた脇役だったかもしれません。そうした陰の存在に寄り添い、こうして巧みに物語化する冬虫カイコさんの手腕。 そして、そんな感情も清濁合わせていつか懐かしく回顧する日が来るのかもしれない、と本を閉じてタイトルを見返した時に思います。 良さに嘆息しながら今後の作品も楽しみに待ちたいです。
こういうことがいつか自分の身に降りかかることはあると思っていたほうが良い。正直、気をつけようがないものでもあるけど。 ただこの漫画の何が一番恐ろしいかって、主人公が高齢者の一人暮らしということだ。まわりの友人知人は、主人公に何が起こっているのか察しているにも関わらずそれを直接伝えることはしないし、ましてや病院をすすめることもない。優しい言葉をかけて少し距離を置くだけ。 彼女のこの先を考えてものすごく不安な気持ちになって読み終えた。