舞台は古代ギリシア。詩人を目指す少女の物語は、不自由な女性の生き方への抵抗と少女達の友情、両方に勇気づけられる。 実在の伝説的女詩人・サッポーが少女を集めた合唱隊は、女学校的女子教育の場所。そこに来るのは嫁入り修行が大半なのに、主人公のエーリンナは本気で詩人を志望する。 結婚に興味無く、男女の差別に疑問を持ち、がさつだけと前向きなエーリンナはしっかり者の同輩・バウキスを困らせながら次第に仲良くなる。 結婚を宿命づけられるバウキスをエーリンナはどこまでも想い、詩作の動機とする。二人はずっとこのままで……と願うのは、日本における「エス」を見た時の感情に近いだろう。 師匠たるサッポーが様々な考え方を教え、少女達を慈しみ育てるのも良く、古代ギリシアの事がビジュアル込みで伝わる歴史物としても楽しい。男子と対等に喧嘩するエーリンナの姿は、現在(2022年)佐藤二葉先生が連載中の『アンナ・コムネナ』のオスマン皇女アンナとも重なる。長い年月抑圧されてきた女性が戦う物語としても、とても胸躍る一冊だ。
時は十字軍初遠征の頃、ビザンツ帝国の皇帝の娘として生まれ、夫を早くに亡くしたアンナ皇女は新たな婿を取る。 弟が生まれた事で皇位継承権を失っていたアンナ。弟と敵意剥き出しに口喧嘩するのが可笑しくもありつつ、頼りないと思っていた夫に自らを深く理解され、強く想い合う様子にときめきを貰える。 アンナはめげない。どこまでも自分らしさを失わないまま、素晴らしい皇帝になれると信じて疑わない。知恵と好奇心と気高さに満ち、そして理性的な思考は現代人から見ると真っ当に見えるが、時代的には異端。 宮廷の女性の生き方に反発を覚える様子が、何度も描かれる。女性だから能力を軽んじられる、生きたいように生きられない、美貌も結局男性の所有欲に絡め取られる、女性は女性なりの戦い方しか出来ない……これらにほんの12、3歳のアンナが否を突きつけ、男とか女とかではない、アンナらしく生きるのだ、と宣言するのが小気味良い。 歴史物に現代的言い回しを取り入れた、軽やかなやり取りを笑いつつ、自分らしい人生を歩み始める一人の女性の真っ直ぐな意志に胸打たれる、そんな作品だ。
舞台は古代ギリシア。詩人を目指す少女の物語は、不自由な女性の生き方への抵抗と少女達の友情、両方に勇気づけられる。 実在の伝説的女詩人・サッポーが少女を集めた合唱隊は、女学校的女子教育の場所。そこに来るのは嫁入り修行が大半なのに、主人公のエーリンナは本気で詩人を志望する。 結婚に興味無く、男女の差別に疑問を持ち、がさつだけと前向きなエーリンナはしっかり者の同輩・バウキスを困らせながら次第に仲良くなる。 結婚を宿命づけられるバウキスをエーリンナはどこまでも想い、詩作の動機とする。二人はずっとこのままで……と願うのは、日本における「エス」を見た時の感情に近いだろう。 師匠たるサッポーが様々な考え方を教え、少女達を慈しみ育てるのも良く、古代ギリシアの事がビジュアル込みで伝わる歴史物としても楽しい。男子と対等に喧嘩するエーリンナの姿は、現在(2022年)佐藤二葉先生が連載中の『アンナ・コムネナ』のオスマン皇女アンナとも重なる。長い年月抑圧されてきた女性が戦う物語としても、とても胸躍る一冊だ。