能條純一作品はまるで邦画を見ているかのような気分になる。 しかも昭和の作品…松田優作の「蘇える金狼」のような空気感。 その雰囲気と空気感は凄まじい。 その一方、現在連載中でマンガ好き達にこぞって好評である「昭和天皇物語」ではスピード感を封印してゆっくり目に見えるオーラの漂う神秘的な人物像を描いている。 能條先生は凄いのだ。 私は本作で初めて能條純一作品を読んだ。当時スピリッツで連載されていた中でも異色を放っていて、ベタ部分から見える圧が下手なホラー漫画よりも恐ろしく見えた。 とかいうと言い過ぎかもしれないけど、それだけ「本気で集中している人間」というのを描くのが上手かった。 本作では将棋の天才、棋士 氷室将介が巻き起こす嵐の物語。 ただ、周りの登場人物たちも負けていない。 なにはともあれ、鈴本永吉戦が終わる3~4巻あたりまで読んでみてほしい。
麻雀を打つ人はきっと「哭きの竜」という名前ぐらいは聞いたことあるでしょう。 麻雀打ちにとって神のような無敵の麻雀打ちの代名詞のようなものです。 でも意外と読んだことある人は多くないのかも? 著者の能條純一先生は今現在は「昭和天皇物語」を描いておられますが、「月下の棋士」も超有名な作品です。絵柄や間の使い方が独特で、読者を魅了する作品を残しています。 本作の主人公は「哭きの竜」と呼ばれる雀ゴロ。 竜自身はめちゃくちゃ口数が少なく、たまに喋ったと思うとヤクザの親分達相手にも怯まずズバッとコケにしちゃうという恐れ知らずにも程がある性分。 ただ、ヤクザの親分になる器が私にはないのだと思うのですが、親分さん達には「神のヒキ」と言わんばかりの竜の持つ「強運」が魅力的に映るようで、テッペンを目指す親分がたは、こぞって竜の強運を欲しがります。 しかし彼らに対して竜は 「あンた、背中が煤けてるぜ」と言います。 背中が煤けてるってどういう意味?という議論が割とあったようなのだけど私の解釈だと「死相が出てる」ってことかと思ってます。 死相が出ている、今やろうとしてるソレはやめときなよ、と言ってあげているのではないかと。 事実、それを言われた人たちはその後大体死んじゃうんですよね。 死神ってわけじゃないんだけど。 触るもの皆傷つける的な、ギザギザハートの子守唄のような存在。 竜は最初こそヤクザの代打ちで稼いでいたものの、気づけば各方面の組長達からのラブコールで引っ張りだこ。 で、仕方ないからついてって麻雀打てというから打ってあげて、勝ったら相手が激おこで死ぬ。 そりゃー竜も嫌になりますわ。 「ふっ」って嘲笑に近い感じでよく笑うんですが、親分からすりゃ「いい度胸だ」と思われて逆に気に入られちゃうっていう悪循環。 竜本人は根無し草をヨシとしているとこもあるんですが、最初の"甲斐の正三"親分から充てがわれた女をしっかり家で待たせてたりと、人情っぽいものも無くはない。ミステリアスというと安っぽいですが、不思議な魅力の持ち主。 漫画としてはどうなのかというと、抽象的な表現が多く、ヤクザ屋さん達の意地や任侠の在り方がわからない私には少し難しかったですが、逆に麻雀を打つシーンはあるものの麻雀のルールを知らなくても全く問題ない感じです。 詰まるところ、竜を囲う周囲の成り上がりたいヤクザ達の物語、と言っても過言ではない。 というかほとんど甲斐組の話ですが、京都の大親分なんかですら竜に魅了されちゃってるわけで… 竜は「ファブル」の"山岡"のような恐怖を知らないタイプの男かもしれません。 読後感はとても良く、新装版では全5巻っぽいので(1冊380Pとかあるけど)一気に読むのには最適ではないかと思われます。 麻雀打ちなら嗜みとしてマスト、そうでない人でも話のネタにはもってこいの作品でしょう。
主要人物が素朴でそこがよかった。主人公の愚直さが料理において大切な才能というとこは名場面だなぁ。巻の終わりごとにラーメン屋が紹介されているのも楽しい。いい漫画だった
ビッグコミックオリジナルギャンブル増刊やその他の雑誌で掲載された哭きの竜の最新作 竜を追ったフリーライターが哭きの竜の伝説を追うところから始まる。 まあ相変わらず竜はいつも通りの感じでカッコいいし、昔からの関係者も登場したりして懐かしい気持ちになる。 ただ竜を追うルポライターが麻雀の力がついていくシーンが今回も哭きの竜でもっともカッコ良かったです。どんどん覚醒していって「タバコの灰が落ちる音がうるさい」「ゴキブリの足音が聞こえる」とエスカレートしていき最終的には「月が動いた音が聞こえる」までいった。これがギャグっぽくなくマジでカッコいいと思わせるのが能條純一が書くマンガの好きなところだな
「ばりごく麺」をネタ漫画として読むか、「ラーメンを通じて男たちの人生」を書いている漫画として読むかで全然楽しさが違う。 おっさんの良い顔が無茶苦茶うまいし、他の料理漫画とは全く違って、料理のうんちくはほとんど出ないで「湯切り」が勝負のほとんどを決まる 台詞周りはいつもの独特の言い回しで、「まずいが・・・最後の一滴まで変わらぬまずさが痛快だ!! 名付けて痛快ラーメン」など名言が多い やはり料理漫画はこういう荒唐無稽な無茶苦茶な方が好き 「榊原麺太」このセンスの名前は昔読んだラーメンの特集本に掲載されていた、ビッグ錠の「免馬麺平」以来だね。
男女の愛について描かれた5つの短編があり、最後の「冬の花火」だけ武論尊先生が原作についてます。 古めかしいわけではないが雰囲気としてどこか既視感のある思い出の中の風景という感じがしてとてもいい。そしてさすが能條先生は絵が上手いですね。 奇抜なストーリーではないが、登場する男女の心理が丁寧に描かれていてじんわりした味わいがあります。ラブストーリー・人生讃歌・冬の花火が特に好きでした。
50年後に廃墟と化す日本を救うために歴史を修繕する使命を背負ったリペアマンの漫画。 歴史のターニングポイントになるのはいつも麻雀。麻雀の勝敗が後々に日本を救う研究者が殺されるかどうかが決まってしまうから、リペアマンはありとあらゆる手を使って勝負を操作しようとするっていう、SF感のある麻雀漫画。 終始シリアスなんだけど、四暗刻であがれるのに、あがったら一緒に打ってる顔の怖いおっさんにボコボコにされそうで怖いから、崩して適当にやってたらハイテイで九連宝燈とか、ある意味どうしようもないほどのバカ麻雀漫画でどうにも笑ってしまう。 麻雀が少しわかると楽しいと思う。最後は結構爽やかな終わり方でかなりいい。
※ネタバレを含むクチコミです。
能條純一作品はまるで邦画を見ているかのような気分になる。 しかも昭和の作品…松田優作の「蘇える金狼」のような空気感。 その雰囲気と空気感は凄まじい。 その一方、現在連載中でマンガ好き達にこぞって好評である「昭和天皇物語」ではスピード感を封印してゆっくり目に見えるオーラの漂う神秘的な人物像を描いている。 能條先生は凄いのだ。 私は本作で初めて能條純一作品を読んだ。当時スピリッツで連載されていた中でも異色を放っていて、ベタ部分から見える圧が下手なホラー漫画よりも恐ろしく見えた。 とかいうと言い過ぎかもしれないけど、それだけ「本気で集中している人間」というのを描くのが上手かった。 本作では将棋の天才、棋士 氷室将介が巻き起こす嵐の物語。 ただ、周りの登場人物たちも負けていない。 なにはともあれ、鈴本永吉戦が終わる3~4巻あたりまで読んでみてほしい。