娘を追い込んだのは…?
精神科医、うつ病。そんな単語が目に入って読み始めました。自分にも経験があるなぁと凛子視点で読み始めていれば、娘が飛び降りをはかって…。 最愛のヒューマンミステリーって表現がいいですね。精神の病気に関する切なさとやるせなさと、それを手助けしようとする凛子たち。そして最愛の娘悠里、そのクラスメイトたち。いったい娘を追い込んだのは誰なのか。このあたりのワクワク感、ドキドキ感がたまらないです。起こってしまった事態はとてもつらく悲しいけど…。 ストーリーが気になって仕方がない!
300万部「37.5℃の涙」椎名チカ新作 私の娘がどうして――…。精神科医の凛子のもとへやってくる人知れず悩みを抱えた人々。うつ病、パニック障害、依存症…。そんな人たちの悲鳴に耳を傾け心のケアをしてきた凛子だったが…。「悠里…!!」 目の前で飛び降り自殺を図ろうとする娘の姿。悠里を助けようとマンションから転落した凛子だが、病院で目覚めると!? 渾身にして最愛のヒューマンミステリー開幕!!
『37.5℃の涙』の椎名チカさんの新作は、精神科医。
精神科医の夏島凛子(35)は、離婚して娘・悠里(15)の親権を持つ女性。悠里は父親との板挟みには遭っていながらも特に大きな問題なく学校生活を送っていると思っていたある日、悠里が突然ベランダから飛び降り自殺未遂を図り、気がつくと悠里の体に意識が入れ替わってしまったというサスペンスミステリです。
4月の新入シーズンで退職代行も話題ですが、名の知れた大企業のブラックさが露わになることもいまだに日々起きている昨今。本作でも1話からブラック企業で働かされ日々大きなストレスをかけられて病んでしまった女性のケースが取り扱われますが、さまざまな精神科の患者、また精神科に行くべき症状を持つ人の様子も描かれていきます。
実際に精神科医による医療監修も入れて描かれているということで、ケアが必要な人に対しての診断やかける言葉などは本格的です。
「もっと精神病患者が増えればいい」
と『Shrink(シュリンク)~精神科医ヨワイ~』でも言われていましたが、まさにその最初に行くときのハードルの高さ的な部分が描かれています。精神科に行くという行為自体が特別で恥ずべきもの的な意識がある方も多いかもしれませんが、作中のあるキャラクターのように「これは治るもの」という意識を持ててもっと気軽に病院に行くという選択肢が取れるようになれば良いと思いますし、そういう社会を形成していくことを助けてくれる作品です。
友人や知人にも仕事や人間関係の問題で心を悩ませて苦しんでいる人は多いですが、人の心があまりにも軽視され蹂躙されることもある社会で、どうか何より大切な命や心が脅かされすぎないようにして欲しいです。
悠里に何があったのかという物語の根幹の謎が強い引きとして作用しながら、個々のエピソードで人の心の動きに寄り添ってくれる部分が多々ある今の時代に価値を放つ物語です。