読むと幸せになれます。
宗教の勧誘とかじゃないです。 「人と人が想い合う」ことの真理をついているような、神秘的な(合ってるかは微妙だけどあえて使いたい表現)漫画です。たまにキャラたちから後光が差してるような場面があるんですよね。 内容はいたって普通の(といい切るのも違うけど)とある男女カップルの高校3年間を追ったラブコメディです。 男女交際のかたちに決まりはなく、人の数だけあるものですが、人と付き合うってこうであって欲しいというか、こうあるべきなのかなという、ある意味多くの人の理想となり得る交際。それを体現しているカップルです、ネギちゃんと星野くんは。 ラブロマというタイトルも読み終わってからなんかグッと来るんですよね。4文字で表すには内容がバラエティに富んでるんだけど、でも結局はラブロマだな、という感じです。平和の尊さを知れます。
「5巻完結の名作」というと色々と思い浮かぶ作品はあるのですが、私の中で真っ先に出てくるのはこの『ラブロマ』です。新装版でも全5巻ですが、とりわけまだとよ田みのるさんがこれを初単行本として出したフレッシュな時に描かれた、初々しさも残るコピックで塗られたカラフルな表紙の方の全5巻を思い出すのです。
本作は、主人公の少年・星野がクラスメイトの根岸さんに人目も憚らず告白するところから始まります。二人が付き合うところまでは非常に早く、付き合ってからの甘酸っぱい時間がじっくりことこと煮込むように描かれます。その後に完成する美味しい料理を早く食べたいような、完成に至るまでにずっと漂ってくる甘美な匂いに浸っていたいような、不思議な感覚を与えてくれます。
二人以外の周囲の人間の個性や関係性も含めて青春の粋が詰まっており、無限にかわいらしく無限に愛しみが湧く物語です。二人を笑顔と拍手で応援するモブが好きすぎる!
そして、意外と清らで品行方正なわけでもないところもまた魅力です。星野は根岸さんとキスはしたいし、乳にも触りたいし、何なら「みかん」もしたい。少し変わった性格の星野は、その欲望すらも包み隠さず明け透けに見せてちょくちょく根岸さんに殴られます。たがそれがいい。こういうのがいい。
一人一人全然違う人間同士が一生懸命生きて、時にぶつかり合いながらも同じ時を過ごして感動を共有する瞬間の尊さ、掛け替えのなさ。この作品から溢れ出るそういったシーンの輝きに、読む度に心を満たされて幸せになります。
全5巻を読んで最後に必ず笑顔になれる傑作です。