人生をやり直すのはいじめっ子です
※ネタバレを含むクチコミです。
高校を卒業して別々の人生を送っていたある日、携帯ショップの店長とバイトという立場で再会した赤城佑と森純平。高校時代に赤城からイジメを受けていた純平は、いつか成功してイジメてた奴らを見返したいと思い続けて暮らしていた。そんな純平にとっては最悪な再会となってしまう。純平はその場から逃げるように立ち去るが、そこが建物の上階であることを知らず、飛び降りてしまう… そして気が付いた時には森純平の姿になった赤城佑が過去に戻って高校の教室に。何がなんだか理解出来ないまま、どこからか聞こえてくる森純平の声 「これは自分がかけた呪いであり、元の姿に戻りたいのなら過去の自分(赤城佑)を更生させなければならない」 元の姿に戻るため、最凶のイジメ魔である過去の自分と向き合いながらの過酷な生活が始まった…
久しぶりに再会したいじめられっ子の森といじめっ子の赤城。
逃げようとしてうっかり高所から落ちたと思ったら、森の体に赤城の精神が入った状態で高校時代に転生してしまう。
赤城は元の世界に戻るべく、森の人生を崩壊させた事件を解決していく…というお話。
あらすじだけを読むと「???」となってしまいますが、これがまた面白い。
いじめっ子といじめられっ子が入れ替わるわけではないので、赤城は過去の自分自身にいじめられることになる。
森がやり返すわけではなく(森自身は人魂みたいに赤城の近くを漂ってる)、赤城が自らの行動を反省したりやり直すことで未来が開かれていくという構図。
いじめっ子がただただ改心していくシリアスなお話ではなくポップなノリのギャグ漫画でめちゃくちゃ笑えるのもよい!
森の親友でこれまたいじめられっ子の卓や、森に恋するクラスの女王愛梨、校内の風紀を取り締まる菊池、赤城の舎弟やまじんなど、いじめられっ子もいじめっ子もそれ以外もみんな個性的で愛すべきキャラクターだらけ。
だからこそ、いじめ描写の残酷さが際立つ。
いいところも悪いところもある普通の愛すべき人間が、理由もなく暴力を受ける悲しさ。理由もなく暴力を振るう歪さ。
話せばわかりあえるのに、人を好きになったり笑ったりできる同じ人間なのに、そう思ってしまうからより恐ろしく悲しく感じられる。
しかもいじめ描写は作者さんの実体験がもとになっているそうで。もう言葉も出ませんね。
森と赤城のように人生をやり直すことはできないけれど、生まれ変わったつもりでファイティングポーズをとったり逆に拳を下げたりはできるかもしれない。
さんざん笑って少し立ち止まって、人生を見つめ直せるかもしれない作品でした。