キスの強度と伝統女子校
この作品は、女子同士の「キス」が印象的だ。 そんなにしょっちゅうキスしているわけではない。1巻に1、2回描かれるキスはしかし、とても強く心を打つ。キスが心を打つ。それは一つ一つのキスに大きな意味が込められているからだ。 第1巻で描かれる、生徒会長・相原芽衣と男性教師との辛そうなキス。主人公のギャル・相原柚子が妹になった芽衣からされる、投げやりなキス。酷いイメージから始まるキスは、恋心を自認する混乱から相手を受け入れる過程を経て、熱いキスへ。そこに女性同士、姉妹という葛藤、芽衣にのしかかる重圧……唇を重ねる行為に意味が加わる度に、キスから受け取る感情が強くなってゆく。 とりわけ芽衣にのしかかる、学園を継ぐ者としての重圧、伝統ある女子校の規律を守る立場、そして家の為の結婚……それらをポジティブな柚子が解きほぐす度、二人のキスは心の解放の表現として、強度を増してゆく。 キスの度に訪れる、切ない程の多幸感。 キスを含む二人のエロス表現は、想いを通じ合ってからはトーンが落ちるのもまた、印象を深める。様々な物を乗り越えた先の、短い確かめ合い。相手を軽く束縛するだけの表現なのに、脳が沸騰するほどの感情が訪れる。 特に続編『citrus+』以降の、驚く程の清いお付き合いには、謎の喜びと「見守りたい」感覚が沸き起こる。 #マンバ読書会 #続編・スピンオフ
天真爛漫ギャルJK・柚子と優等生生徒会長・芽衣は親同士が再婚したから突然姉妹になっちゃった!どーなる高校生活!?という信頼の置ける設定。
全く息が合わないはずなのに柚子はドンドン芽衣のことが気になるようになっちゃって…っていうギャップ・姉妹百合です。ご理解いただけましたね。ちなみにふたりダブルベッドで寝てます。
お嬢様学校においてギャルである柚子の存在は異質そのもの。周りの人物と軋轢を生むこと数しれずですが、持ち前の真っ直ぐさで相手の心を掴んでしまいます。
作中では芽衣があらゆるキャラから激モテするファム・ファタールとして描かれるので「気が気じゃねえ!」とソワソワする柚子がたくさん見られるのですが、彼女自身も相当な人たらし。
次々と現れる恋の障害となるキャラクターたち(もちろん全員女の子)も、ひと悶着のあとには必ず打ち解けて仲間に加わります。これがバトルマンガっぽくて好き。あたたかく、優しく、そして正直であろうとする柚子の魅力なんでしょうね。
完璧超人に見える芽衣も柚子のことを翻弄するようでいて、自分に対してストレートな気持ちをぶつけてくるお姉ちゃんに対して内心は常にドキドキ。彼女から向けられる愛情の矢印をどう受け止めて、どう返せばいいのか悩み続けています。芽衣は自分の思いを柚子に伝えるのにずっと二の足を踏んでいるんです。これが本作の核心となる巨大感情なので、ぜひ悶絶していただきたい次第。
最終2巻の展開は息を呑むほどで、9巻ラストの演出には本当に胸を締め付けられます。つらすぎる。だからこそこれまでの登場人物が大集合してふたりのために奔走する10巻の盛り上がりがすごくて、まさに祝福のような最終巻。やっぱり最後は仲間全員で戦わないとウソですよね!
ふたりが紡いできた絆が集大成として結実するまで一気に読んでほしいです。