スポーツ漫画には、ド素人が本人の意思に反して
スポーツをやるはめになったりとか、
主人公がチームを結成するために
ド素人であろうとも構わずに仲間を集める、
というストーリーのものも結構な数あったりする。
それはそれで面白くもアルが、
そう思いつつも、
「その競技がキライならやるなよ・やらせるなよ」
という思いを、自分は常に感じてもいた。
とくに、そのスポーツがキライなのに
好きなふりしてやっているキャラには、
見て嫌悪感すら感じることもあった。
風が強く吹いている、はそのへんに関して、
かなり上手く(自分の好みな感じに)扱っていると感じた。
主人公の蔵原走自身は、何があっても
走るのをやめられない人間だ。
一方、他のメンバーは灰二を除けばほぼド素人。
灰二の知略に絡めとられて箱根駅伝を目指すことになる。
半ば強制的ではあったし、なので基本的に駅伝に関して
「好きだから走りたい」という気持ちは希薄。
素人ゆえその競技の苦しさをしらないからこそ、
なめて安請け合いをしたな、という感じもあった。
だが「実は駅伝が好きでした」とか軽薄なことを
言われるよりはよほど良い。
そして徐々に強度を上げていく練習について行きながら
(強度を上げるのは灰二(笑))
箱根駅伝を目指すことの厳しさを正しく認識し、
それでいて各自がそれぞれ自分で箱根を目指す意味を
見出していく展開がとても良く感じられた。
そして各自が見出した「意味」が、
本番で各自がそれぞれの区間を走っているときに
走りから醸し出されていて、とても良かった。
勿論、10ヶ月程度でド素人集団が箱根駅伝に
出場を目指すのには無理があるし、
やはり漫画だから許される都合のいい面も
作中にはいくつかあるようにも思う。
だが少なくとも、箱根駅伝を舐めず侮らず、
敬意を持った上で漫画にリアリティを出そうとして、
色々と試みられた作品のように感じた。
そしてその試みがかなり結実した漫画だと思った。