ゆったりとページをめくって味わう
ちいさこという小人のような不思議ないきものを題材にしたファンタジー・オムニバス。恋をまだ知らないか、死の間際にいる人にしか見えないという設定が秀逸。小人は子供にしか見えないという言い伝えを巧みにオリジナリティに昇華させた。それぞれの話もうまくまとまっており、オムニバス特有のさりげない前後の物語のつながりも味わえる。満足度の高い一冊
“ちいさこ”と人が紡ぐ、大人のための童話 森に棲むといわれる“ちいさこ”たち。絵本好きな少女、恋愛小説家と編集者、引きこもりの男子中学生…… 生きる時代も性別も立場も違う人間たちが“ちいさこ”に出会い――? “ちいさこ”と人間の不思議な体験が詰まったファンタジックオムニバス
『ちいさこ』という、妖精みたいな座敷わらしみたいな存在が暮らしている庭。
そこに移り住んだ家族に、『ちいさこ』はちいさな諍いをもたらします。
『ちいさこ』が見えるのは、家族で一番幼い少女だけ。
『ちいさこ』の姿が見えず、庭の木を切ろうとする大人たち。
友達の居場所を守ろうと、大人に立ち向かう少女のいじらしさに涙。
そして、大人たちが失ってしまった純粋さを思い出したとき、ささやかな奇跡が起こります。
自然の風景描写が美しく、心が洗われるような清々しい読後感です。