名無し

自分はこんな複雑な青春を過ごしてはいないが、それでも「この登場人物はあの先輩に似てるな」とか、「こういうやついたよな」とか、思い当たる節はある。
狭くて動かし難い人間関係と、自分の何でもなさに息が詰まる感じがめちゃくちゃリアルで、読んでて辛い。
後半はかなり抽象的な会話が続くし、絶妙に核心には触れない感じがモヤモヤするのだけど、作者が大島弓子岡崎京子の系譜に置かれる理由が分かる名作。

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ヤサシイワタシ

悲劇でも負けていない!!

ヤサシイワタシ ひぐちアサ
影絵が趣味
影絵が趣味

ひぐちアサの『おおきく振りかぶって』という大仕事に取り掛かる以前の貴重なラインナップその2であります。 その1の『家族のそれから』もそうでしたけれども、死がひとつのモチーフになっている。『家族のそれから』は母親が亡くなることをきっかけに物語が始まっていますが、『ヤサシイキモチ』は主人公とその恋人になるヒロインがいて、終盤でヒロインが亡くなるという悲劇のかたちが明確にとられています。でも、ひぐちアサに悲劇はちょっと似合わないというか、らしくないような感じがしますよね。 やっぱり、そうなんです。形としては古典的な悲劇を踏襲していながら、なんか、どうも負けていないような感じがあるんです。『おお振り』の野球部たちのように、ひたむき且つ賢明な「転んでもタダでは起き上がらない」精神がここにも確かに息づいている。 このことは何べんも書いているような気がしますけど、大事なことだと思うのでもう一度。ひぐちアサは、生があって死がある、というような描き方をしないんです。プラスがあってマイナスがあるんじゃないんです。プラスをマイナスが帳消しにするように、生を死がなかったことにするなんてことはあり得ないんです。 不安で不安で仕方ななくて、いっそ風船に針を刺したい、高い所から手を離したい。そういう気持ちはあるかもしれないし、じっさいに針を刺してしまう人も、手を離してしまう人もいるかもしれない。でも、どんなことだって、それは良いことでも悪いことでも、それがあった起こったということは途方もない事実として消えることがないと思うんです。確かに今はそれはないかもしれない、でも、そんなことがあったという事実そのものはいつまでもそこに残り続けると思うんです。 最後の最後に、あのすっとこどっこいで、がむしゃらで、嫌なところもあるんだけど愛おしくもあるヒロインの弥恵さんの笑顔がコマのなかに現前としたとき、生は死なんかによって帳消しできるもんじゃないと確信せざるを得ないのです。しかも、弥恵さんはとある高校球児として生まれ変わる。そう、三橋くんとして。そして主人公の芹生くんもその後を追う。弥恵さんの、そして三橋くんの手を握って安心させてあげたいのは、芹生くんであり阿部くんなのだから。

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連載20周年記念 おおきく振りかぶって 公式選手名鑑

連載20周年記念 おおきく振りかぶって 公式選手名鑑

「アフタヌーン」(講談社刊)で大人気連載中の 高校野球漫画『おおきく振りかぶって』が連載開始から 祝・20周年! 20周年を記念し、初の『公式選手名鑑』を発売する。カバー絵はひぐちアサ氏描き下ろしイラスト、巻頭にはカラー原画、巻末に原画集を収録! 西浦高校をはじめ、武蔵野第一高校、崎玉高校、ARC学園高校、千朶高校、桐青高校、春日部市立高校、美丞大狭山高校、三星学園高等部、桃李高校、波里高校、泰然高校、久良高校、松ヶ丘高校、逗子萬翠高校、桜雲高校などを選手別に紹介。さらに、ひぐちアサ氏のインタビューを19Pのスペシャルボリュームでお届け! 「ひぐちさんに直撃!」コーナーでは、西浦の選手のことや、西浦以外の選手でとくに好きなのは誰?など、さまざまな角度から“おお振り”を楽しめる一冊となっている。

おおきく振りかぶって 公式コミックガイド

おおきく振りかぶって 公式コミックガイド

累計発行部数1500万部以上突破! 「アフタヌーン」で大人気連載中の高校野球漫画『おおきく振りかぶって』初の公式コミックガイドがついに登場! 西浦高校をはじめ、対戦高校主要メンバーの充実のキャラクターガイド や西浦ナインの日々の出来事を振り替えるエピソードガイド &熱闘スクラップ、名ゼリフや珍場面特集、そして彼らを支える人たちの魅力にもぐいぐい迫ります。球児の先輩・上地雄輔さんのインタビューほか、西浦高校硬式野球部の選手名鑑ほか、原画やイラストを巻頭カラーで特別収録。さらには、単行本初公開となる原画をカラーとモノクロ合わせて35ページに渡って紹介! ひぐち アサ 埼玉県さいたま市出身。法政大学文学部を卒業。1998年、ひぐちアーサー名義でアフタヌーン四季賞を受賞し、デビュー。現在、『アフタヌーン』にて『おおきく振りかぶって』を連載中。同作品で2006年第10回手塚治虫文化賞・新生賞、2007年第31回講談社漫画賞・一般部門を受賞。

ひぐちアサ初期新装版 傑作選

ひぐちアサ初期新装版 傑作選

大ヒット高校野球漫画『おおきく振りかぶって』のひぐちアサ初期作品、再婚した妻に先立たれた若い義父と残された連れ子の高校生の兄妹が織りなすちょっと変わったファミリードラマ「家族のそれから」、デビューとなった新人賞受賞作「ゆくところ」、純情青年が大学の写真部で出会った台風のような先輩女性との恋愛を描いた「ヤサシイワタシ」3話までを収録したワイドサイズの初期傑作集。

おおきく振りかぶって

おおきく振りかぶって

県外の高校に進学した卑屈で弱気なピッチャー・三橋廉(みはし・れん)。見学するだけと訪れたものの強引に入部させられたのは、全員1年生(くせ者揃い)に女監督(コワイ)という創設まもない野球部だった!オレらのエースは暗くて卑屈。勝つために、弱気なエースのために。行け、オレら!読むとためになり、しかも血沸き肉躍り涙する。絶対に面白い本格高校野球漫画!

家族のそれから

家族のそれから

母が死んだ。遺されたのは、高校生の兄妹・トオルとメグ、そして悲劇の中心は、周囲の猛反対を押し切って1ヵ月前に結婚した若い義父、小学校教師・ケンジ、26歳。共通する思い出を糧に、未来へ向かう急造家族のぎこちないコミュニケーションが始まる。ひぐちアサ、初めての連載作品であり、新感覚ファミリードラマの決定版『家族のそれから』他、高校生の同性愛をあつかい反響を呼んだ読み切り作品『ゆくところ』を収録!

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