怪奇・ミステリーマンガの感想・レビュー3325件<<12345>>人間とあやかしのお話鬼の花嫁 富樫じゅん クレハstarstarstarstarstarママ子※ネタバレを含むクチコミです。ノベライズ本と共に見ることをお勧めします鬼の花嫁 富樫じゅん クレハstarstarstar_borderstar_borderstar_borderこめつぶ絵もストーリーも好きです。現実社会と少しファンタジー要素もあるのでファンタジーも好きという方は良いかもですね。 妹や家族との確執や、愛され慣れてない花嫁の気持ちの変化が変わって行く様子も面白い。 自分が柚子だったら、あの若さであの育ち方、あの人生経験なら、きっと同じく、最強のあやかしの花嫁になった戸惑い、不信感、葛藤はあると思います。時間をかけて上々に変えていく過程が美しいです。 全く未知の鬼の世界観ですが、ぼちぼちとはまってしまいそうです。午後のロードショー的な人食いモグラパニックホラー×因習村?モグランド 水ポテト吉川きっちょむ(芸人)リゾートバイトで島へ行ったら、そこのモグラが異常で、地中から人間に襲い掛かってくるというモンスター(モグラ)パニックホラーって感じで面白かったです!! なにやら怪しい村人たち、一癖も二癖もある他のリゾートバイトの人たちも分かりやすくてよいです。 なによりモグラですよね。噛む力が尋常じゃない!ピラニアかってくらいの噛みちぎり方、そして水中かってくらいの掘るスピードの速さ! 映画『トレマーズ』を思い出す良さです。 あの映画の舞台はたしかアメリカの山間の荒野で障害物の少なさもまさに大海原でサメに襲われるような面白い恐怖で、谷になってるから無線も届かないみたいな陸の孤島状態がよかったんですよね。 この話もまさに離島でスマホの電波的な制限もバッチリですし、島には建物が少なため足場も心もとない。なんか企んでそうな村人たちの因習村的な雰囲気。そして人の味を覚えた異様に狂暴なモグラをたくさん配置されているので超楽しいです。 1巻が7/20に発売するみたいなのであらためて読み返そうかと思います。ふたりの出会いは、運命のいたずらなのか・・・。ねずみの初恋 大瀬戸陸干し芋まだ、幼さの残る殺し屋のねずみちゃん。 そして、そのねずみちゃんにゲームセンターで一目惚れした碧くん。 碧の真っ直ぐな告白により、付き合いはじめた二人。 そんな二人に試練が・・・。 殺し屋ねずみちゃんが、自分と同じ殺し屋に碧くんを育てることに。 かわいい二人のおままごとにたいな恋愛と殺し屋という狂暴な世界観の違いをギャップという言葉だけで片付けられるのか?! 初めて「東京BABYLON」読んでみた東京BABYLON[愛蔵版] CLAMPかしこ読み終わって「えーこれ完結してないじゃん!!」という衝撃がすごかったです。この後に「X」があるけどそちらは未完なんですね…なんということでしょう。でもCLAMP作品は網羅してこそ楽しいところがあるから読んでよかった。みんなが好きな北都ちゃんのことも知れたしね! 30年前の作品になるけど現在でも価値観が通じる脚本で面白かったです。お母さんが犯罪者になってしまった男の子に対して「ニュースで報じられているのは現実だけど真実ではない」「君はお母さんに真実を聞くことが出来る」とか、シンプルだけど心に響くセリフがたくさんありました。すごく面白いバックランク 波場章史名無しカタブツイケメンの主人公と、エヘラエヘラした食えない敵役の美形男の対比が最高 知恵比べにハラハラする 敵役が想像した「小学生の時の主人公」が、今のままの顔でランドセルしょってたりと、たまに笑わせにくるストーリーがよかったアミグダラ 永田一由かしこ脳みその恐怖を感じる部分をアミグダラというらしいです。人間の恐怖感情を誘発させる鉱物があり、それを使って残忍な事件を次々と起こさせる犯人がいる。犯行動機は一体何なのか…?自分的に分りやすくあらすじを説明するとこうなるんですが、関西の田舎町が原子力発電所の廃棄物処理場に選ばれたところから物語が始まってたり、割とストーリー構造としては複雑です。でも読みにくいとかはないですね。サスペンスものとしては絵の迫力が物足りない気もしますが、残酷なシーンも多いのでこれ以上怖かったら読むのやめてたかも。主人公が善人になり切らないラストが特によかった。 伊藤潤二の画力を堪能できる地獄星レミナ 伊藤潤二starstarstarstarstarかしこ新惑星を発見した学者が自分の娘と同じく「レミナ」という名前を付けたところ、娘のレミナが絶世の美少女だったので話題性も高まり芸能デビューまでしてしまう。しかし惑星レミナが地球に接近して人類滅亡の危機が高まると、民衆がレミナ親子を親子を襲い始めた…というパニックサスペンスです。 こういうジャンルでは人間同士のゴタゴタもお約束ですが、最初はただの惑星だったのが段々と意志を持つ生命体のようになっていくのがすごい画力で表現されていくので見応えがありすぎるほどありました。壮大な物語のラストを「アハハ」「ウフフ」で終わるのもすごいな。これが今やってる原画展で見れたら嬉しい。死体埋めJKものハジメテノサツジン 甘味starstarstarstarstarNanoマンガMeeで開始当初読んでました…絵が丁寧で綺麗で、だけど内容は殺人です。JKの。がっつり重い。一度連載が止まってしまってから「完結してから読もう…」と思ってたんですが、完結しているな…!!? 1話から目を引くストーリーと繭、音、悠の性格バラバラだけど仲良しな感じがすごく好きで惹かれたのをよく覚えています。女子校ぽい…!みたいな。でも内容がしっかりしんどくて、繭の悩みや葛藤や、お姉ちゃんに子ども産まれるのに…おばになるのに私は…ってところがもうキツくてキツくて…!!だからこそめちゃくちゃ最初から最後まで面白いです。ちなみに悠推し。7月から第三部が始まります降り積もれ孤独な死よ 伊藤翔太 井龍一名無し※ネタバレを含むクチコミです。 挫折しましたが設定は斬新で面白いマジャン ~畏村奇聞~ カミムラ晋作名無し友人に勧められて読みました。一巻だけ。個人的には麻雀の駆け引きがもうちょっとあったほうが楽しめたかな。けど設定は斬新で、村の掟が凄まじく面白い。ホラー要素あるのでそっち好きなひとにはいいかも。主婦・ユイのほうの義母がリアルどちらかの家庭が崩壊する漫画 横山了一starstarstarstarstarゆゆゆ孫に会いたい気持ちと、良いことをしている自分に酔うのを並立させちゃうかんじがリアル。 突然理由をつけて行くよ連絡に始まり、好みでない服を渡されるとか、子どもの面倒をみるといって古い知識で対応されるとか。 さらに、ユイの夫はダメ男過ぎて、読んでいて心がしんでしまう。なんでこいつと結婚した。 とはいえ、対照となる毒山家がイクメンお父さんとなっているのは、働いてないからだろうなと思った。 二人でみているから余裕がある。 お金はないけど。 赤ちゃんは大人二人で1から10まで面倒をみないと、とても大変。 そして毒山家義母は、嫁に好みでない、サイズも不確かな服じゃなく現金を手渡してくれる。 よくわかっている。 現金。 商品券じゃなく、現金。 取っておけば、子どもが成長したときの資金になり、使えば今助かる。 封筒にすら入ってないのが生々しいけど、そんなのは些末に感じるほど、いらない服や夫婦で決めたかったアレヤコレヤの押し付け(知人談)と比べると、現金は嬉しい。 作中の義母ふたりは、自分が当時必要だったものを与えているだけかもしれない。 それなのに差が生まれるのは、結婚相手の親は選ばなくても身内になってしまう他人、という距離感を忘れているからと思える。 夫婦の関係も危ういのに、義母が更に危うくしてくる。 どちらも崩壊しそうな、危ういところに立っている御夫婦のお話。推理とバトルの融合漫画ガス灯野良犬探偵団 松原利光 青崎有吾六文銭悲惨な生い立ちからボクシングに生きる道を見い出した主人公・リクを描いた快作『リクドウ』の著者・松原先生が作画の本作。 前作『黒鉄のヴァルハリアン』もそうだが、とにかくアクションシーンの躍動感が魅力的な著者だけに、最初推理漫画との相性はどうなんだろうと思っていたが、これがなかなかどうして良かった。 シャーロック・ホームズという、この手の題材では誰もが知っているような探偵が出てくるところもわかりやすく魅力があって良い。 (イケメンだがクセがあるのもポイント) 主人公は、ホームズの子飼いとして働く浮浪児で、推理でパシッと解決するよりは、時に泥臭く走り回ったり、時に裏社会の人間に対して危険な役回りを押し付けられたりして、推理とバトルの融合が見事だった。 推理面は、どんな少ない情報からでも真実にたどりつくホームズの頭脳が際立ち、バトルシーンはスピード感あふれる展開が圧巻な本作。 ただのバトル漫画、ただの推理漫画だけでは物足りない方はぜひおすすめします。 8巻 男の挨拶、頭蓋骨陥没! の感想極道ラーメン 神田森莉starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男全く話に脈絡がなく勢いだけで進み「アフガンに極道部隊を派遣」でどうなるかと思ったらすぐに終わった。さすがになんだと思ったのであらすじを見たら、雑誌打ち切りのため終わったと書かれていた 最後まで読んだがそんなに嫌いではないな7巻 極道ラーメン・新宿サイコの感想極道ラーメン 神田森莉starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男5巻ぐらいまではちょっとおかしいかなぐらいだったけど6巻以降おかしさが加速している。出来立てのラーメンのように熱い男万吉の正義感が全くなくなってきている。読んだ感想としては以下の画像の心境だ。画像の背景もよくわからない一気読みしたほうがいいクライム・サスペンス漫画 #完結応援ハジメテノサツジン 甘味名無しこの漫画は「思わぬ形で事件の泥沼にはまってしまった子ども達」を主役にしたサスペンス・ストーリーです。 ※事件の泥沼にはまってしまった子ども一覧 ⦿地雷ホイホイお人好し女子・繭 ⦿破壊的地雷サイコパス女子・音 ⦿ある想いを抱くボーイッシュ女子・悠 ⦿何も知らないお人好し男子・陸 ⦿自己愛地雷女(自己愛さん)・咲 綺麗かつ繊細で可愛い絵柄(柔らかいイラストのタッチ)とは裏腹に、イライラ・ハラハラするほどハードな分だけ考えさせられます。 登場人物達の心理描写が「わかりやすく」明確に表現されています。 甘味先生の初連載とは思えないくらいのめり込めるサスペンス漫画で、「図書館とか学校の図書室にも置いてほしい」と思うぐらい軸のブレない漫画作品でもあります。 繭以外の登場人物達の1人を主人公にしたアフターストーリー(後日談)もしくは番外編(外伝)を制作してくれることを望んでいます。 本編では断片的な部分しか明かされていない「音の過去」や「一連の事件が終結した後の繭の家族および陸」の全貌をこの目で見たいです。 最初はサラッと読むだけでいいからさ深東京 榊健滋starstarstarstarstarさんかく まず初めに最初は自分もあんまりだなと思ってました。 デスゲーム系の雰囲気で1つ目のゲームというか戦いが終わってもピンとはこなかったです。 なんか矛盾やツッコミどころが多くて脱落する人も多かったですし、私もその一人でした。 しかし、期間を空けて別の作品ついでに今どんな感じかなと冷やかし程度に見に行ったらそこは最初とは全く違っていました。 まずキャラが格段に魅力的になっています!敵も味方もです。 おまけは絶対に見てください。 見ないと後悔するレベルでおまけのギャグセンスが高くて、大体3ページくらいなのに満足度が高いです。 結構重要な情報では?と思わせる話も何でもないことかのように出てきます。 次にストーリーです。 最初は矛盾が多いと感じた部分が進むにつれて回収されていきます。 その上で新たな謎が出てくるので複雑になりすぎず楽しめます。 せめて信長が出てくるとこまで読んでほしい… この作品は基本、人側が不利なデスゲームをどうやって勝利するかのバトルです。 力勝負では絶対に勝てない相手には死亡の条件があり、それが達成されればいくら強い敵が相手でも勝つことができます。 味方と力を合わせて勝利への糸筋を見つける、そんな物語です。 ジャンプラで一気見できるのでぜひ見てください!みなさん、良い性格をしていますね拝み屋横丁顛末記 宮本福助starstarstarstarstar_borderゆゆゆ幽霊やお祓いがテーマなのに、ドタバタコメディ。 登場するのは、おじさん、おじいさん、おばさんと呼ぶのは失礼そうな年代、学生の男女、幽霊。 キャラクターの年齢高め。ジジイ、多め。むしろ、おじいさん成分高し。 掲載頻度は違えど、10年以上連載されていたそうで、一巻と最終巻で顔が違う! 最終巻は線が綺麗、でも若々しさのない一巻のころも好きだな。多くのキャラクターは若くないのだし。 元拝み屋のおじいさんズ三人組が好き勝手をやって、大家さんに怒られ、横丁界隈では、唯一幽霊が見えない学生男の言動に癒される。 この流れがおおいのだけど、毎回おもしろく読める。 先代大家さんもむちゃくちゃでたのしい。 どんどんキャラクター(生者と死者)が増えていくので、お気に入りのキャラクターも作りやすいかもしれない。おもてたんと違う深東京 榊健滋starstarstarstar_borderstar_border山下真司※ネタバレを含むクチコミです。 一家に一冊の名作です(上下巻二冊なのに?)ミスミソウ 完全版 押切蓮介まみこ※ネタバレを含むクチコミです。ウソをもってウソを征す!ウソツキ!ゴクオーくん 吉もと誠starstarstarstarstarNanoなぜか最近Twitterでよく流れてくる作品…!(調べてみたら真最終回や期間限定で全話無料やってたから?) 1話から胸を鷲掴みにされたような衝撃がありました!面白いしワクワクするし、スカッともする!コロコロの漫画って本当に小学生ぶりに読んだけど、大人になった自分が読んでもめちゃくちゃ面白くてびっくりしました。 ゴクオーくんかっこいいし、天子ちゃん可愛い!そして頑張り屋。ウソはよくないってのが世の常かもしれないけど、ゴクオーくんのはかっこいいウソ。そんな彼が1話で唯一言ったホントのことがまた良い。ネコカラスちゃん私も欲しいな…。奇跡の続編珍遊記2~夢の印税生活編~ 漫☆画太郎六文銭小さい頃、色んな意味でトラウマを植え付けられた珍遊記。 当時、絵を見るのも怖くて、だけどドラゴンボールは読みたいから、珍遊記のページにはいかないよう恐る恐るめくっていたのも、今となっては良い思い出です。 本作というか、著者を語る上でもはや絵柄に触れないのは無理なのですが、とにかく子供がみたら泣き出すような絵の濃さ。 特に婆さんキャラのシワがえぐい。 下品な下ネタも満載で絵柄と相まって、初見の方は気分悪くなると思うんですが、、、 著者が、現在、子供向けの絵本作家としても活躍しているというから驚きしかない。 謎に時代を感じる。 さて、本作の内容だか、前作珍遊記の続編という立ち位置だが、前作をなぞりながら、その裏で起きていたことを描きながら始まる。 もう一つの怪作、漫遊記とも繋がっているので両方知っているとより面白いのだが、正直、何も知らなくても大丈夫だと思う。 著者の作品を知ってる人ならわかると思うが、ストーリーはあってないようなもので、とにかく勢いが魅力。 そこは本作も健在で十二分にある。 映画化もした作品だが、玄人受けとか言うつもりもないが、毒にも薬にもならない作品と異なり、モノづくりに携わる人間に、何らかのインパクトを残す作品なんだろうってことは理解できる一作です。 笑いとシリアスと真理がごっちゃ混ぜになった、傑作であり怪作。出禁のモグラ 江口夏実starstarstarstarstarナカタニエイト<ログライン> 怪異と対峙する謎の人(?)と愉快な仲間たちのお話。 <ここがオススメ!> 設定とキャラクターというしっかりした土台の上に、最高な物語が乗っているものだから、とにかく面白い。 江口先生の書き込み多めな背景などもじっくりと味わえるので、このお値段で本当に良いのですか!?となる作品。 初めて表紙を見た時は、見た目的にめっちゃバトル物なんだろうなぁと思って、少しだけ倦厭していたんですが、全く違った。 超絶面白い作品でした。ごめんなさい。 笑いとシリアスと真理がごっちゃ混ぜになった、もはや傑作であり怪作。 コミカルな中にヒューマンドラマやホラーが丁寧に入っているから凄い。 加えて、レッサーパンダと猫の可愛さヤバい。 脳筋大食い女子な犬飼詩魚ちゃん、最高に笑う。 ただ、難点としては、いつも早く続きを読みたい!ってところで終わる。 あぁ、新刊を読み終わったところだけど、もう早くも続きが読みたい…… <この作品が好きなら……> ・銀魂 https://manba.co.jp/boards/19987 ・うる星やつら https://manba.co.jp/boards/20019 ・令和のダラさん https://manba.co.jp/boards/167074どちらかというと『テセウスの船』というより『動的平衡』じゃない?テセウスの船 東元俊也 東元俊哉starstarstarstarstar_bordermampuku時間遡行をして人生をやり直したとしたら、それは本当に同一の自分といえるのか?という問いを有名なパラドックス「テセウスの船」になぞらえたタイトルだ。 ストーリーに関しては論理的整合性や感情的整合性においてやや粗い部分も感じられたもののサスペンスとして緊張感もあり、ラストは新海誠監督『君の名は。』のような美しい締め方だったし概ね面白かった。 ただ、タイトル『テセウスの船』がイマイチストーリーにハマっていない感じがした。 どちらかといえば「動的平衡」のほうが比喩としてしっくりくるのではないだろうか。 「動的平衡」とはシェーンハイマーの提唱した概念であり、日本では福岡伸一氏による著書『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』で有名になった言葉である。“生命”とは、取り込まれ代謝されていく物質、生まれ変わり続ける細胞どうしの相互作用によって現れる“現象”である、という考え方だ。 主人公の田村心は生まれる前の過去に遡り、そこで巻き起こる惨劇を阻止することで、その惨劇により自身に降りかかった不幸な運命を変えようと奮闘する。作品では、過去を改変して自らの人生を曲げようとする一連の試みをテセウスの船にたとえているが、やはりピンとこない。作中、田村心は殺人事件を未然に防ぐため凶器となった薬物を隠したり被害者に避難を呼びかけたりするが、その影響で心の知る未来とは異なる人物が命を落としたり、結果的に大量殺人を防げなかったばかりか予想だにしなかった事態を招くことになる。 この予測不可能性こそがまさに動的平衡そのものって感じなのだ。生命体は、船の部品のように壊れた部分を取り替えれば前と変わらず機能する、ということにはならない。ある重要なホルモンの分泌に作用する細胞を、遺伝子操作によってあらかじめ削除してしまったとしても、ほかの細胞がそのポジションを埋めることがある。これは心が殺人事件の阻止に何度も失敗したことに似ている。思わぬ不運や予想しない死者が出てしまったのも、脚のツボを押すと胃腸の働きが改善するなどの神経細胞の複雑さに似ている。 船は組み立てて積み上げれば完成するが、生命は時間という大きな流れの中で分子同士が複雑に相互作用しあうことで初めて現象する。『テセウスの船』での田村心の試みは人生あるいは歴史という動的平衡に翻弄されながらも抗う物語だったのかもしれない。<<12345>>
※ネタバレを含むクチコミです。