零れるよるに

削られた心で生きていく子供たち #1巻応援

零れるよるに 有賀リエ
兎来栄寿
兎来栄寿

″毎日ご飯が食べれるとか 明日も学校に行けるとか 突然どなられることを気にしなくていいとか そういうのわたし ここに来るまで知らなかった………″ それらが決して当たり前のことではなく、感謝すべき幸運なのだと心から思える人はどれくらいいるでしょうか。 本作は児童養護施設での暮らし、そこで生活する子たちの思考や感情を非常に解像度高く描いた作品です。 何よりも、虐待を受けていた主人公・夜(よる)の心情の吐露がリアルで胸を刺します。 ″私たちは心のどこかで 「自分の価値」に自信がない″ ″たった1%の幸せな記憶に生かされてるんだ″ etc... 多くの人が与えられるものを与えられずにむしろ傷つけられて生きてきた少女の癒えない渇望と、(作中の設定により2018年当時の制度として)18歳になったら施設を出て暮らして行かねばならないというタイムリミットのある現実への不安、スマホを持てる同年代のクラスメイトへの羨望と深い所では決して解り合えない断絶などが入り混じって吐露される言葉が強く響きます。 幼い頃から憧れを抱き続けて大きくなった、夜と同じ施設の少年・天雀(てんじゃく)との関係性も見どころです。他の同世代の子と解り合えない部分も、天雀となら分かち合える。ただ、そこには危うさも存在しています。タイトルが掛かる2話ラストのモノローグを含む美しい1ページも好きなのですが、どこか物語の行く末を暗示しているようでもあります。零れてしまう夜があることは避けられないとしても、いつか掬われる朝が訪れることを願わずにはいられません。 デリケートなテーマですが、しっかり取材をした上で覚悟を持って丁寧に取り組まれているのが伝わってきます。難しい題材に挑み続ける有賀リエさんを応援しています。

泥酔彼女

ストレスフリーなラブコメ

泥酔彼女 ぽんこつわーくす 加川壱互 串木野たんぼ
六文銭
六文銭

芸能事務所のマネージャーを姉にもつ主人公。 そこに所属する女性の1人が、酒飲みにやってくるという話。 年上女性×年下男性。 大きなくくりではそうなのですが、女性のほうが大酒飲みでウザ絡みをしてくるというのが本作の設定。 そして、ラノベ原作ではもはや様式美の、第3者の幼馴染がそのシチュエーションにヤキモキすると言った感じ。 年上のお姉さんが大酒飲みで泥酔がてら絡んでくるなんて、現実ならワンチャン期待しちゃうものですが、そこもラノベの主人公。 謎の貞操観念で、この状況でも何も起きない。 ひたすらダベって、たまにイチャコラして、それに嫉妬したりなんやりしするも、関係性にあまり進展はしない。 だが、それがいい!不思議とそれがいいのです。 この何も起きないヌルくて、ゆるい展開が、無駄にドギマギしなくて逆に良いのです。 ストレスフリーにペラペラと読める。 また、男女であっても上記のような関係が続くのって、今っぽい関係性の作品だなと思います。 ラブコメ作品ですが、ラブは少な目、というか主人公が安定の鈍感系なのであまり全面にでないのも個人的には良かったです。