カノジョは今日もかたづかない

仕事も恋も完璧だけど部屋は汚・・

カノジョは今日もかたづかない 加納梨衣
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

『スローモーションをもう一度』の加納梨衣先生の新作。 以前スペリオールに載っていた読切『裸の肖像』でたまらなく心揺さぶられてしまったので、ターゲット層は絶対に違うよねと思いながら普段読んでいないFEEL YOUNGに手を出してみた。 仕事も恋も上手くいってると自分に言い聞かす30歳OLの主人公は、部屋が壊滅的に汚かった。 気に入ってすこしムリして借りた1LDKだけど心安らげる場所はベランダだけになっちゃってたり。 彼氏を連れてきたいのにこんな部屋にはちょっと・・な状況で同僚の男に要領が悪いと嫌味を言われ風邪を引き、クリスマスの約束も仕事で潰れ、ほとほと参ってしまったところで帰るのが汚部屋。 マンションの前で立ち尽くしていたところで出会ったのが嫌味を言ってきた同僚で同じ間取りなのに素敵な部屋に住んでいて・・。 汚部屋・・、分かる。 僕も職業柄、いろんなものが多くなってしまって部屋が片付かない。 毎日少しづつなって思ってても、現状維持がやっと。 現状維持だと思ってやってても日々増えるものたち。 現状維持は現状維持になっておらず緩やかに汚部屋への一途を辿っている我が家なので気持ちは痛いほど分かった。 今にして思えば、うちの家庭は転勤族だったこともあって、とにかく引越しのたびにダンボール詰めが大変で、「物は増やすな」と口うるさく言われていた。 三人兄弟で末っ子だったので自分の持ち物のとにかく少なくさせられて新しく買うのは控えさせられていた。 いまでこそ漫画が好きで3000冊以上持っているけど当時は0冊。 一人暮らしのときに抑圧された物欲が爆発してとんでもないことになった。 それから今まで大人になってからの物欲との付き合い方が未だに分かっていない。 この漫画の主人公と同じく要領も悪いのかもしれない。ただ、上手く力が抜けないのだ。 全てに全力で向かってしまう。良くも悪くも完璧主義なのだ。 仕事も恋も私生活も、となったときに、自分つまりは私生活を切り捨ててしまうのもめちゃくちゃに分かる。 この主人公は彼氏にも、彼氏の目に映る自分の姿も完璧にしようとしてるようにしか思えないがそんなの窮屈すぎる。 彼氏を信用しようと思うならさらけ出すべきなんだろうが、まだそこまでも至っていないようで。 そんなときに見栄を張らずに素のままの自分でいられるような、言い方は悪いけど優しさから本音しか言ってこない同僚は魅力的に映るだろう、自分にはできないのにずるい、と。 ここから一波乱起きそうだ。

恋は雨上がりのように

画力と繊細なトーンワークに裏打ちされた演出力

恋は雨上がりのように 眉月じゅん
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

表紙の目ヂカラに心を掴まれてジャケ買いし、内容を読んでさらに心を掴まれました。とにかく画力を活かした演出が抜群です。 キャラの作画はCLAMPの目ヂカラと矢沢あいのフェミニンな細身のシルエットを見事に融合させており奇跡的なバランスで成り立っています。 そして手の細かな演技や表情付けなどは週刊漫画とは思えないほど繊細に描写されており手の動きだけでキャラの悲痛な感情が伝わってきます。 背景に関しては繊細なトーンワークによる光の表現が特に素晴らしく、この現実感のあまりないキャラたちを違和感なく世界に溶け込ませています。 さらに、シリアスとギャグの配分が非常によく。80〜90年代のサンデーが好きだった人にはたまらない配分になっていると思います。店長がパトレイバーの後藤さんに似ていますがその辺りの感覚はパトレイバーに近いと思います。 ストーリーに関しても初めての挫折を経験した少女の鬱と中年の危機に差し掛かったおじさんの鬱という2種類の鬱を恋愛という誰にでもわかる主題を使いながら見事に描き切っています。 少女漫画が好きな人、そして少年漫画が好きな人、もちろん青年漫画が好きな人、どの層の人にもお勧めできる恋愛マンガです!