WHITE BLUE PINK
女3人×シェアハウス×恋愛譚 #1巻応援
WHITE BLUE PINK 原川ユキ
兎来栄寿
兎来栄寿
「ミスキャン→キー局アナ→プロスポーツ選手と結婚→海外移住→お城のような豪邸でお姫様のように暮らす」という完璧な人生設計を、まずミスキャンになるところまでクリアしてIT企業の社長からアプローチを受けるも、気になる男性が現れる20歳の亜矢。 27歳で、結婚までいくと思っていた同じ会社の男性と別れて疲弊している中で、後輩に言い寄られる亜矢の従姉でグラフィックデザイナーのマコ。 入社時から片思いしていた上司が結婚式を挙げることになった、OLでマコの友達の吏佳。 そんな3人が、シェアハウスをして暮らしていく中で、互いの恋愛模様も含めた共同生活の様子が描かれていきます。 最初は亜矢の視点から物語が始まりますが、他のふたりの視点からの物語を読むと、亜矢のときの物語で抱いた印象とはまったく異なる内面が見えてくる多面的な構成が面白いです。たとえ、一緒に暮らすような仲であっても他人に見せない部分はある、むしろ取り繕うために他人と一緒に暮らすというのはリアルさを感じます。 恋愛模様も三者三様ですが、しかし共通しているのは3人とも元々抱いていた理想ではない方向へと転がっていくところです。ここも非常にわかりみが強く、恋愛に留まらず人生全体にも言えることですが、時として全然予想しなかった方に向かって行き、まさかそんなところに道があるなんて想像もしなかったようなところに道が拓けていくものなんですよね。若い時分に「自分は絶対に○○にはならない/やらない」などと考えていたことがいかに覆されていくか。それは本当に「あのネクタイの色好きだな」くらいの軽さから動かされ転げていくものです。 それでも、何かあったときに共有できる人間が身近にいるというのはやはり心が助かるものだなあと読んでいて端々で感じました。実際は苦労も多かろうと思いますが、それでも得難いものがきっとあることでしょう。 「クレマチスは冬にこそ水やりが大切なのだと思い出した  落葉している間にも根を枯らさないように」 など、ところどころのモノローグもじんわり響いてくるフレーズがあり好きです。 大人の恋愛物語を読みたい方に薦めたいです。
スイートモラトリアム
キラキラ眩しい地獄のような日々
スイートモラトリアム たまいずみ
野愛
野愛
地獄のようだけど、キラキラの青春のようにも見える。それが若さだよと言われたら苛立ってしまうけど、そうかもしれないなと思えるようになってきた。 モラトリアムを過ぎてしまった大人には、眩しいような恥ずかしいような作品だった。 彼女も友達もいて穏やかな日々を過ごしていた大学生・心の前に、元カノ・りんごちゃんが現れる。 何不自由なく真っ直ぐ育った真面目な今カノ・小夜ちゃんと、依存体質で破滅的な恋愛をする元カノ・りんごちゃん。 小夜ちゃんのことは好きだけど、りんごちゃんを放っておけない……2人の間で心は揺れ動いてしまう。 優柔不断で己の愚かさに酔う心も、不器用すぎるほどに正しい小夜ちゃんも、自分の感情で周囲を掻き乱すメンヘラりんごちゃんも、身勝手でダメで情けなくて嫌なやつで愛おしい。 これ以上最低だったら愛せないけど、これ以上善人だったらリアルじゃないし面白くない。可愛げのなさが絶妙で可愛い。 身を滅ぼすほどの恋愛をした覚えはないけれど、若かりし頃の愚かな自分を見せられているような瞬間があって、痛がゆいような気持ちになった。 今まさにこの日々を過ごしている人が読んだら、胸が張り裂けるほど切ないかもしれない。とっくの昔に過ぎ去って忘れてしまった人には、何も響かないかもしれない。 でも、みんなちょっとくらいは青春の痛みを思い出すんじゃないかなと思った。