B型平次捕物控
究極のマンネリズム
B型平次捕物控 いしいひさいち
ナベテツ
ナベテツ
ミニマルミュージックというジャンルがあることを知ったのはいつだったか思い出せないのですが、その概念で語り得るギャグマンガというのは恐らくいしい先生のこのタイトルなのではないかと思います。 いしいひさいちという人がギャグの世界における革命者であるというのは、愛読者にとって今更語る必要もないことですが、この作品のおかしさというのは多分古びることなく笑い続けることが出来るのではないかと思います。 一見すると、同じフォーマットで繰り返されるマンネリのネタに感じるかもしれませんし、下らないと切って捨てられるかもしれません。ただ、読み続けていくうちに、恐らく読者にはクスリという笑いから始まって最終的には爆笑がもたらされると感じています。 くどいようですが、反復することによって生じるダイナミズムというものは存在していますし、いしいひさいちという天才は、その効果を自覚的に自らの手法として取り込んでいます。 河出書房新社のいしい読本において、大友克洋さんがこのタイトルを大好きだと答えていて、いしい作品をきちんと読んだことのない人に勧めるのに良いのかも知れないと思ったりもしました。
女には向かない職業
朝日新聞連載『ののちゃん』のスピンアウト作品
女には向かない職業 いしいひさいち
名無し
いしいひさいち先生といえば、『となりの山田くん』や『ののちゃん』を描いた、押しも押されね四コマ漫画界の大看板。新聞4コマで見かけることが多いので、「ほんわかする作品ばかり描いているのだな」と思われていると思いますが、それは誤解です。時事問題から哲学者4コマまで、ハイブロウ向けな作品もたくさん発表しているのです。また、もう一つの特徴として、ごくたまに、難解というにはあまりに理解不能な作品を発表し、読者を混乱に陥れたりもします。未確認のネットの情報ですが、どうやらいしいひさいち先生自身も、「自分でも意味がわからない」ことが多々あるそうで。もう、ニントモカントモ。  『女には向かない職業』は、朝日新聞に連載されている『ののちゃん』(旧:となりのやまだ君)のスピンアウト作品。ののちゃんの担任の藤原先生が学校をやめ、推理小説作家になった後が描かれています。『女には向かない職業』では新聞4コマでは潜めていた毒がすべて藤原センセイに集約されている素敵な4コマとなっています。  この作品が素敵である一番の理由は、藤原先生が正しくダメ人間だからです。酒癖は悪く、出版社の飲み会では大暴れし、ペコちゃん・ケロヨンを持ち帰り、書評家からは作品についてではなく「酒量を減らせ」と書かれます。部屋は本当に足の置き場もなく、限界を越えたところで引越しをし、すべてをチャラにします。ただ、締め切りに関しては、担当者からの「まだか まだか まだか まだか ……」のクレイジーなFAXが届くぐらいなので、一般的な作家と変わらないレベルに収まっているようです。  4コマまんがの常として、なにかが起きていく話ではありません。ただ、小説家・藤原瞳の自堕落な日常が描かれているだけなのです。なのになぜ、私がこんなにもこの作品が好きなのか、それはいまだにわからないのです。