大砲とスタンプ

棚卸しは大事なのだとよくわかります

大砲とスタンプ 速水螺旋人
ゆゆゆ
ゆゆゆ

架空の国、架空の戦争ではありますが、戦場の後方で戦う人たちの物語です。 撃ち合い、殴り合いでなく、紙の上で戦闘をする兵站部「紙の兵隊」たちの生活が、主人公を中心に描かれています。 あらすじいわく、「ミリタリー法螺漫画」です。 主人公の母国、大公国の軍には、陸海空にくわえて、兵站が存在します。  主人公は、ショートヘアなめがねっ子・マルチナ・M・マヤコフスカヤ少尉です。 食料や衣類や武器など、必要な物資を必要なところへ届ける手続きをする兵站軍。 兵站軍の士官学校を卒業し、アゲゾコ市にある補給廠に配属されるところから、物語は始まります。 四角四面すぎる主人公が、生真面目すぎて当初は疎まれつつも、その個性を大切にされているのが印象的です。 部隊の人たちもよくみれば、みんな個性的です。そしてアットホームです。 使えるものは使えるところで、うまく使えばいいという感じがします。 トラブルに巻き込まれた場合、主人公は銃で打ち合いなどは苦手なようで、かわりにクソ真面目な知識を元にした知恵で切り抜けます。 軍隊内の事情は、パワーでねじ伏せるのでなければ、決まりで乗り切るのが効率的なようです。 読んでいて混乱したのですが、登場する国は、主人公が属する「大公国」、そして占領したアゲゾコ市でともに連合軍を組んでいる「帝国」、敵国である「共和国」の3国です。 長い戦争のせいか、どの国も疲れています。 なぜ戦争をしているのかわからないのですが、振り上げた拳を下ろすのは難しいようです。 ちなみに、物語冒頭に毎回描かれている、緻密な兵器などの紹介も圧巻です。

ストロングスドウくん

令和のGTO #1巻応援

ストロングスドウくん 瀬澤ノブコ
兎来栄寿
兎来栄寿

ちょうど四半世紀前の1998年に反町隆史さんと松嶋菜々子さん主演のドラマ版が始まり、大人気を博した『GTO』。私は和久井繭くんが大好きでした。何なら『GTO パラダイス・ロスト』も連載中なのですが、「『GTO』ってまだやってるの!」と驚く人も多いかもしれませんね。 そんな『GTO』のDNAを感じさせる、同じくマガジン系レーベルから送り出された型破りな教師が主人公で一癖も二癖もある生徒や同僚たちと渡り合っていく学園群像劇です。 骨格は同じではありますが、いわゆるZ世代の生徒たちを描いていることで現代的な読み味となっています。配信者として人気になっている子がいたり、スマホを持っているのが当たり前であったりする時代。女子高生がSNSや動画を見てお金持ちのキャバ嬢に憧れていることが一部で話題となっていましたが、現代ならではの教師の大変さはあるでしょうし、その一部が描かれます。それ以外でも、そこかしこで令和的な価値観が現れてきます。 しかし、『3年B組金八先生』と『GTO』でもガワは大きく違っても根底にあるものは共通していたように、『ストロングスドウくん』も時代が違う作品であっても通底するものがあります。それは、どこまで行っても究極的には人間対人間の物語であるからでしょう。結局、子供が信頼できる大人というのは本気で自分たちのことを考えて向き合ってくれる大人です。 須藤先生はヒゲにサングラスの巨漢で見た目こそカタギに見えず、職員会議をサボって屋上で筋トレしているような自由人ですが、その部分ではどの教師よりもしっかりとしており魅力的です。1巻では描かれないのですが、連載中の部分で明かされつつある須藤先生がどうしてそういう風になっていったのか、というエピソードがとても好きです。 脇役である西先生の物語にも良い味があり、もちろんたくさんの生徒たちにもそれぞれの物語があって、学校という特異な空間の中での群像劇として秀逸です。 これから先、更に面白くなりそうでテーマも深まっていきそうですので楽しみです。 なお、作者の瀬澤さんのこちらの読切も非常にお薦めです。 第89回 青年部門 大賞「さらば太陽」瀬澤ノブコ(25歳・東京都)|小学館 新人コミック大賞 https://shincomi.shogakukan.co.jp/viewer/89/04/201.html