あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前
全国4万人の養護教諭の内、男性は百人に満たないという事実に、驚く反面納得もする……だって見たことないもの。そんなレアキャラ、新任の男性養護教諭の日々の奮闘記。明るくも緊張感の漂う、真剣な作品だ。 主人公は常に周囲からの「信頼」を得るために、気を配ることになる。 当然女子児童との関わりは酷く神経を使うが、そうでなくても児童の心と向き合い、信頼を得て悩みに寄り添う行程は、繊細で難しい。そのプレッシャーにハラハラしてしまう。 更には同僚や、男性医師等からも懐疑の目を向けられるとなると、心の休まる時がないなぁと、かわいそうなくらい。しかし彼のモチベーションと誠実さで、次第に周囲と歯車が噛み合ってくる時の喜び! 登場する子供達は、決して暗い性格ではない。普通だったり、明るかったり、しっかりしていても、それぞれに悩みを抱える。子供が抱きがちな痛みに共感してしまうし、それが救われる様は自分ごとみたいに嬉しい。 大人も子供もスマートな美形キャラで貫かれているので、暗さや生々しさがない(主人公・同僚・保健医の美男スリーショットが素敵♡)。美麗なイラストを気軽に楽しみながらも、大切な事を教えてくれる内容に、心を掴まれた。 (取材、参考文献も充実。安心して読める)
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前
日本で最も有名な焼物の一つ、信楽焼の作家である女子と、信楽焼を学びに来たイギリス女子を描いた本作。陶芸愛と、師弟愛に心温まる物語です。 若くして高度な作陶技術を持ち、亡き祖父に代わり工房を切り盛りする作家女子。そこに弟子入り志願したイギリス女子はかなりの資産家でありながら、陶芸への愛が深く、鋭い審美眼を持つ才女。最初は本気度を測りかねた作家でしたが、すぐにその熱意を知り、彼女の師匠になります。 しかし、問題は師匠の方にありました。様々な要因が重なり、作家としての自信を無くしてしまう彼女の力ない目と迷いは、周囲も読者もモヤッとさせます。 そんな師匠に、弟子が告げた一言…… どんな美辞麗句よりも、作家を勇気づけるその言葉。好きな物作りを、他人が肯定してくれることで得られる、作家としての自信。 芸術家・クリエイター(例えば漫画家やイラストレーター、デザイナーや文筆家なんかも含めて)に仕事を発注する人は、この弟子の言葉を知り、伝えることが大切だと思います。 納期を守るとか正確さとか、そんなことばかり褒めていませんか?それではクリエイターは消耗します。「自分じゃなくてもいいじゃないか」と。 クリエイターをやる気にさせるのは、たったの一言……彼らが創るものへの、敬意と愛と同調を込めた短いセンテンスを、この作品から見つけてみて下さい。
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
私は最も好きなアーティストがX JAPANなので、「紅」が物語上でとても大きな役割をもたらすこの物語には一際愛着が湧きました。「紅」は前奏が長いし何ならギターソロも非常に長いんですけど、それも含めて最高なんですよね。 昨年、颯爽と発売されたデビュー単行本『夢中さ、きみに。』でマンガ好きに旋風を巻き起こした和山やまさん。今年も『女の園の星』に加えて、この『カラオケ行こ!』で見事にマンガ読みを熱狂の渦に巻き込み、その勢いは早くも一般層にまで波及しようとしています。 本作は絶対音感を持った組長が開催する恐怖の罰ゲーム付きカラオケ大会でビリにならないために、39歳のヤクザが歌の上手い中学生に教えを請うという設定でまず1オモシロ。 次々と展開されるヤクザエピソードが笑えて2オモシロ。 そこに、コメディだけでなく合唱部部長でコンクールを目前に控えながらも声変わりという難題に直面する聡実のシリアスな葛藤が加わり物語の厚みが増して3オモシロ。 聡実の家族の出番はほんの僅かですが、その少しの時間で見せる人間臭い魅力、4オモシロ。 そして全体を通したストーリーの素晴らしさ、計100オモシロ。本作も最高でした。 「紅」では 「紅に染まったこの俺を慰める奴はもういない」 と歌われますが、狂児には聡実という言葉では表せない関係性を持った人間ができた、紅に染まっても慰めてくれる奴がいる、その尊さ。 単行本ならではの描き下ろしも非常に嬉しいおまけでした。 巻末の狂児のプロフィールにおけるカラオケベスト3で、1位が紅なのはもちろんですが、2位と3位があの曲になったのはとてもエモいですね。狂児が歌う2位の歌も聴いてみたいです。夢花火。