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兎来栄寿
兎来栄寿
8ヶ月前
何の変哲もない日常風景が舞台であっても、殺人のような大きな事件ではなく今もどこかで起きているようなありふれたことを題材にしても、面白いミステリーは描けるという良いお手本のような作品です。 同じバス停から通園する子供を持つ、月村家・西井家・雪田家・高見家の4家族がメインメンバー。ある日、母親たち4人が話し込んでいる隙に子供たちの誰かが高級車に傷をつけてしまいます。一体誰がやったのか? 犯人はわからないまま高額の賠償金を支払わねばならなくなり、それまで仲の良かった4人はその事件をきっかけに諍いが起きたり距離を取ったりすることになり、生活が変わっていきます。 七夕の短冊に「ひとをけしたい」と書いたライムくん。 社宅で起きたボヤ騒ぎ。 続発する自転車のサドル損壊事件。 ある真相を知る人物の存在。 不穏さを煽るできごとが次々と起こりながら、物語は実にサスペンスフルに駆動していきます。 かわいらしい絵柄ながら、人間社会における歪みが表出したキャラクターたちのリアルさが見事です。特に、断片的な情報しか得ていないにも関わらず、真実を知った気になって誰かを断罪しようとしたり、それによって更に当事者を傷つける結果を生んだりしてしまう人間。そして、それに対してほとんど罪悪感などあるわけもないという。現実でも仮想空間でもありふれた人間の在りようですが、非常に恐ろしいです。 ママ友や子育ての闇の部分が、うまい具合にサスペンスの雰囲気と溶け合っています。それでも、醜い部分だけではなく人間の良い面も描かれているところは一抹の救いです。 すべての謎は、最終的に綺麗に氷解します。そこで一旦スッキリはするのですが、その更に奥底にあるものに対して考え始めるとまた大きな難題の壁が立ちはだかるような気分です。1冊完結のミステリーマンガとしては非常にお薦めです。
toyoneko
toyoneko
1年以上前
「かってにシロクマ」「コージ苑」「サルまん」「真・異種格闘大戦」「ムジナ」などの名作・怪作を作り続けてきた相原コージ先生による実録エッセイ漫画です。 タイトルのとおり、自身がうつ病にかかった様子を描きます。 アイデアが出なくなり、マンガが描けなくなったので、あったことをそのままマンガに描いている…らしいのですが、その結果生まれた本作は、相原先生の最高傑作になりそうな予感のする作品です。 これまでの相原先生の作品は、良くも悪くもクセが強くて、フィクション感も強いものでした。 しかし本作は違います。 ものすごく、リアルなのです。 何しろ事実をそのまま描いてるのだから。 しかも相原先生は、うつ病のときの思考や感情を、おそらく本当にそのまま描いているようで、読者はそれをそのまま追体験できてしまいます。その破壊力たるや。 また、これは、キャリアの長い現役漫画家である相原先生だからこそ生み出せた作品でもあります。 うつ病を扱ったエッセイ漫画作品は数多く存在します。 しかし本作は、その中でも、漫画としての完成度が圧倒的に高い。ストーリーがあって、起伏があって、感情がこもっている。 こういう表現が適切かはわかりませんが、「面白い」のです! 実験漫画ばかり描いているイメージの強い相原先生ですが、こんなにも漫画力が高かったのかと、改めて実感させられます。 オマケにクセが弱くて読みやすい! これも、これまでの相原作品とは異なる点です。 つまり本作は、相原先生の漫画力が存分に発揮されながらも、読みやすくリアルなうつ病エッセイ漫画でして、これは…きっかけがあれば大いに売れますよ! 未読の方はとりあえず無料公開分だけでも読んでみることをオススメします。 https://comic-action.com/episode/3269632237294896715 #マンバ読書会