吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
近未来の日本が舞台の新たな戦国時代、そして軍師の成り上がりを刮目して見たい! 令和末期から日本の斜陽を描いていき、日本の衰退と世界的な戦争、新型ウイルス襲来、相次ぐ震災、政治・経済の腐敗堕落、民衆の蜂起と暴力、といった具合に近未来のことにしてもリアルな「最悪な状況」が日本へ降りかかり、人口は1/10以下に減少し文明は明治初期レベルへ戻り、事実上の日本滅亡へと至る。 まだこれで5ページ!! そして!! 日本は、「大和」「武凰」「聖夷」の三つの国へと別れ覇権を争う三国時代に突入するのだが…。 日本三國(にっぽんさんごく)見た感じのざっくり三国の領土の分け方。 「聖夷」北海道~東北、北陸あたりまで 「武凰」宮城~関東、静岡、岐阜あたりまで 「大和」愛知、滋賀、福井から西側、四国、九州。首都大阪都。 主人公は、そんな領土争いの前線からは離れた「大和」の愛媛群で、知恵・知識を生かして平和に農業を取り仕切っている三角青輝(15)。 ここからいかにして、主人公が「日本再統一」へ名乗りを上げていくのかはぜひ大ボリューム83ページの第1話を読んでいただきたい!! 冒頭から香ってきていた血の匂いは当然…。 これは完全に、聡明な軍師による復讐と壮大な戦国成り上がりものの大作がスタートを切った感あってテンション上がりました! 個人的には、これを過去の歴史ものとせずに、近未来だけど文明が退化した状態で行われる戦争・領土争いというところがすごく好きで、歴史ものは歴史ものですでに正解があって答え合わせ的な面白さや再解釈もあるんですが、現在の現実から地続きな創作の歴史ものの方が好みかもしれません。 要するに、めちゃくちゃ楽しみということです。 地域別の特色も今後の展開に関わりそうで気になりますね。 「聖夷」北陸と北海道というかつての日本屈指の穀倉地帯。だが冬は厳しい。寒冷化した現在は? 「武凰」領土は狭いけどかつての首都東京を含むので人口が多いのかも?あと広大な関東平野もある。 「大和」聖夷と同じくらいの領土?だけど、他と面している国境の長さが一番短いから防衛のコストもかかってなさそう。大陸と貿易することがあったら有利かも? 松木いっか先生、ブラインドサッカーと多様性を描いた『ブクロキックス』もとてもよかったんですが、この1話読んだらここから本領発揮してきたのか!?と思わざるを得ません。 作品自体のことではありませんが補足で、担当編集が『映像研には手を出すな!』や『チ。ー地球の運動についてー』を立ち上げた方というのもさらに期待値を上げています。
近未来の日本が舞台の新たな戦国時代、そして軍師の成り上がりを刮目して見たい!

令和末期か...
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
まさか、あの『蟹工船』がこんなSFバトルマンガにされるとは小林多喜二氏も想像もしなかったことでしょう。 この『新約カニコウセン』は、日々命懸けで「蟹」との死闘を繰り広げる立場の弱い奴隷のような労働者と、彼らを支配する者を描いた作品となっています。 恐ろしい進化を遂げた「蟹」とのバトルシーンは非常に激しく、緊迫感があります。傷つけ過ぎると商品としての価値が損なわれるのでただ殺せばいいというわけではないのは、モンハンでの捕獲の難しさを髣髴とさせます。 アクションも良いのですが、この作品の一番の見どころは何と言っても原作『蟹工船』に通底するテーマ性です。原作が書かれてから100年近くが経ちましたが、労働者の苦しみは今の世でも不変。もう少し未来になれば、AIなどによる労働が普及して人間が働かなくていいようになり事情も変わっているかもしれませんが、過酷な労働を課せられて命まで絶ってしまう人は令和になっても存在します。 しかし、もし仮に人間が全く働かなくて良くなったとしても、別の面で人間は互いを相対比較してマウントを取り争いを起こし優越感に浸る体験を求めて止まないし、それによって傷つき悲しみを抱える人間は尽きないであろうなという絶望感を感じさせるエピソードが描かれます。 SFバトルアクションになりはしましたが、一見した印象とは違い深奥のテーマとしてはしっかり『蟹工船』を踏襲しており、リスペクトも感じる内容です。 時代を越えて人間の普遍性へ響く名作の力を感じずにはいられませんでした。