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みこチャン
みこチャン
2020/09/29
まず、絵で殺され、そして泣く。不思議な漫画
手にとる時、「表紙がかわいくてオシャレだな」というだけの理由をもちレジに持って行った。家に帰り珈琲なんぞを啜りながらシャレオツな漫画を嗜む私カコイイむき出しで読みだしたのだが、気づけば珈琲はいつの間にか冷めていたし、組んでいた足は解かれてあぐらをかいていたし、私の中のシャレオツな漫画を嗜むカコイイ私は死んでいた。 プリンセスメゾン。 家を買いたい女の子の話。だけじゃ、なかった。 これは作者の気まぐれですか?ってほど、ふ、とした拍子に「閑話休題!沼越ちゃん以外の女性の生活を垣間見てみよっか!」という回がたびたびあるんだが、私はその回のどれだったか今やわからないが、 女性が朝おきて、夜、ベッドで眠る。 というだけの描写にしか思えない回で、なぜか泣いてしまった。 なにがそんなに感動的だったのやら、言語化するには能力が足りないだけかもしれないが、とにかく 絵で殺され、そして泣いたのだ。 じわ、と滲むようにそれは広がり、幸せと寂しさのはざまにゆれるような、そういう不思議なきもちをくれた。 かなり売れて、確か実写化とかしてたけど、これは漫画、静止画でないと、そしてこの絵柄でなければ、出せないものが絶対にある、と思う。 池辺葵は他作品もステキに滲む作品ばかりなので、プリンセスメゾン以外もおすすめです。
みこチャン
みこチャン
2020/09/29
ネタバレ
もう一度読みたいけれどもう読みたくない漫画
中学生くらいの頃だった。初めて1巻を読んだ時、なぜか私はそれが続きものだということを知らなかった。短編集だとばかり勘違いしたまま、数年後に続きがあることを知る。そして全巻を文庫で揃え、むさぼるように三原順ワールドに飛び込んだ。 なかでもとりわけアンジーが好きだった。アンジーはヒラヒラの服を着た髪の長い少年だ。そのわりにオラオラしている。という矛盾がまた魅力的だった。グレアムも、サーニンも、マックスもどいつもこいつも個性的で、ただかわいいだけの男の子ってわけでもなくて、訳アリの、大人びた捻くれたこまっしゃくれた浮浪児たちが、うつりゆく暮らしを描いてあるほのぼの漫画だとばかり思っていた。 そしてまさかの、事件が起きる。 突然の、数年後…というくだりは、ドキッとした。 まさかまさか、アンジーの大人になった姿が見れるとは思いもよらなかったのだ。そこには風子という、アンジーにはお似合いには一見みえない、だけどアンジーにとっては癒しであるお姉さんが現れていた。グレアムはあんなことになってるし…。マックス、忘れてるし…。 どういうことなの!?とハラハラしながらページをめくる手がとまらなかったのを覚えている。 結局、最終的には「はっきりとした結果(オチ)」はなかったので、その当時は無性にどういうことなの!?と後ろ髪をひかれる思いばかりが湧きだっていたが、いい大人になった今思えば、あれは…結果がうやむやだったからこそ、よい作品なんだな、と改めてはみだしっ子の凄みを感じるのであった。 もうほとんど、内容は忘れているのでもう一度読みたい。 しかし、心の奥底で残る、あの複雑怪奇でせつなく苦しい、そして愛おしい気持ちをほじくりかえすのには、若々しいエネルギーがものすごく必要だから、もう読みたくない。 私にとってはそういう漫画だ。 もう、読みたくない。それほどに熱い漫画であった。