麺面むすび

上手くいかない大人の女へ #1巻応援

麺面むすび ヨドカワ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

社会人多めの百合短編集。一番年下で大学生なので、全体的に大人の雰囲気。 描かれる人はみんなお化粧をきちんとしていて、大抵は対人スキルもある。それでもこんがらがって、時に乱れてしまう様子は、多くの大人の共感を得られるのではないか。 女性達それぞれの、上手くいかなさ。それはことさら異様なものではないので、自分事のように共感できたり、「こういう人いそう」という気がしたり。そんな人達が同じ「女性」に救われる物語に、ホッとする。 ●『麺面むすび』…コスメ大好きな女性は男ばかりの職場で消耗して、蕎麦屋の店員の女性に癒される。 ●『おそろそろい』…付き合う二人の女性は一緒の時間を求めてオンラインゲームを始める…しかし何故か片方の「お揃い好き」が加熱。 ●『風船カズラは今日も飛ばない』…元モデルの彼女にウェディングドレスを着せたいデザイナー。甲斐甲斐しく世話を焼く彼女の心は? ●『区域外閑談料』…彼女に振られた女性は、母校の大学で出会った子に「公衆電話から電話して」と告げる。 ●『フライングコスモ』…中学時代憧れていた、上品なあの子に大学で再会。地味な私をイメチェンして接近! ●『初嵐のつむぎ歌』…都会でお姉様との出会いが無く田舎に戻った女性と、農業体験で実家にいる純朴ドジっ子の出会い。趣味じゃ無い……。 ●『クラムジーコール』…モンスターデザイナー志望の女性、背景から抜擢!しかしリーダーの女性から迫られる。こいつがとんだナンパ女で……。

倒錯少女症候群

匿名で非現実な偏愛はグロテスク

倒錯少女症候群 shimazaki
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

登場人物の「名前」は、キャラクターのイメージ形成の重要要素かもしれないが、例えば関係性の思考実験の様な作品では、その様なイメージは必要ないのかもしれない。 この『倒錯少女症候群』は、まさにその様な作品集である。 登場人物に固有の名前は無い。大抵はA子とB子の物語。キャラのイメージは絵で充分伝わる。名前を思い出す手間が無いと、思い入れは薄まるがかなり読みやすい。 そうして描かれる短編達は、AとBの関係があって、強く求め、踏み込み、反転してゆく非現実的世界が描かれる。 ①『貴女にすべてをささげると私の眼球はそういった。』は、眼球を舐めるというフェチの強さも凄いが、その先の「視覚を分け合う」に至る強い愛着と世界観についての哲学にやられる ②『ショウケースガール』は、家猫と思しき猫と飼い主の関係性と「外の世界」の秘密の話。飼い主らしき人の感情は、動物好きなら分かる? ③『シスタス』は、声の小さな気弱妹がしっかりした姉に依存する関係性。姉は妹の「声」をコントローラーで操作するが……関係性の変化は身体的特徴から。堕ちていく姉が愛らしい……。 ④『ブンレツ・ガール』は、分裂する病気に冒された子と彼女の側にいる親友の話。オリジナルとフェイクの恋と実存を巡る物語はどこまで行っても救いが無く、それでも自己を保つのか……と悲しくなる。 いずれも歪な関係性とグロテスクな愛着に至る時が、至高の瞬間の作品達だ。

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