リューリタン

これはスゴイ…!!圧倒的なファンタジー流離譚

リューリタン 田埜宗一
たか
たか

週刊少年サンデー2019年31号に掲載された、ガチガチにガチの硬派なファンタジー漫画。これを雑に「異世界漫画」と呼び、一般的な異世界モノと同じカテゴリには絶対入れたくない…! https://twitter.com/tano_so/status/1146183694077456384?s=20 異世界にやってきてしまった女子高生・アールが、「黒いマスク」を手がかりに同じトーキョーからやってきた人間を探しつつ観光を楽しむというストーリー。 ・雨の降りかたで120もの呼び方がある街 ・50年に一度ボードゲームの一手を指す街 ・寝相の悪い街 など、文化や習慣が異なる街が魅力的に描かれていてたまりません…! アールの移動手段「クロ」についての説明をあえてせず省いているところも、世界観を想像する余地を残してくれていてすごく好きです。 またたった1コマだけ描かれているアールの回想シーンで、現在とは違う「まだセーラー服(しかもリボンがない)を着ていたアール」が描かれていて、言葉を使わずに時間の経過を伝えているところが見事でした。 田埜宗一先生が描くファンタジーの世界への「流離譚」。絶対読んだほうがいい読切です…! https://csbs.shogakukan.co.jp/book?comic_id=31113 (画像は本編より)

道士郎でござる

行動理念は武士道

道士郎でござる 西森博之
名無し

「力なき正義は無力なり、正義なき力は暴力なり」という言葉があります。社会的にも肉体的にも力のない僕には全く関係のない言葉ですが、『ザ・ムーン』や『DEATH NOTE』をはじめ、正義を問いかける作品は強くココロに残っています。その中でも、もっと身近な正義を描く『道士郎でござる!』が、僕は大好きなのです。  物語は、12年前にアメリカに渡った桐柳道士郎が、なぜか武士になって日本に帰ってくるところからはじまります。ふと、現代に蘇った憲兵を描く『ケンペーくん』(ならやたかし)を思い出しましたが、道士郎とは全く関係ありません(これもある意味、正義を問いかける作品であります)。道士郎はチートといえるほど強大な力を持つ男です。そして、行動理念は武士道。武士道的観点からクズだと思えば、ヤンキーだろうがヤクザだろうが問答無用で叩き潰します。道士郎が殴ればヤンキーは空中を回転しながら飛んでいき、復讐など考えられないほどのトラウマを植え付けられます。身近にある悪に天誅を下すのが道士郎なのです。  向かう所敵なしの道士郎の代わりに、物語の主役となっていくのが、道士郎に目をつけられ、殿にされてしまった健助です。健助は、小心者で、常識的で、自身に危険のない範囲で優しい、そんな普通の少年です。道士郎に関わったことで、ちょっとした優しさを発揮してしまったがゆえに、どんどん道を踏み外し、高校は退学し、転校した底辺校では級長になってしまい、挙句の果てに、ヤクザと対決するはめになります。  はじめのうちは、健助が巻き込まれたトラブルを道士郎とが解決するという、「水戸黄門」か「いけ、ピカチュウ!」のような展開もあります。しかし強大すぎる道士郎の力と見境のない正義感は、およそ制御できるものではなく、放っておけば無限にトラブルが拡大してしまうのです。社会から完全にはみ出した道士郎という存在に振り回されることなく一般生活を営むために、健助は自分の力で解決を目指すようになっていくのです。  健助はちっぽけな人間でしたが、道士郎によって追い詰められることで身につけたクソ度胸で、強大な敵に立ち向かうことができるようになります。どんな敵でも必ず倒す道士郎と、弱くて殴られても決して折れない健助の姿に、周囲のクズたちも少しずつ変わっていくのです。あの二人がいるから俺は頑張れる――そうやってグズでザコだったモブキャラが頑張る姿には心動かないはずがないのです。  とてつもなく笑えて、グズの所業に心から頭にきて、成長するキャラクターたちに感動する……全8巻の短い物語の中で、あらゆる方向に心が揺さぶられる、王道の名作が『道士郎でござる』なのです。

ガンバ! Fly high

3馬鹿トリオこそ真の主人公

ガンバ! Fly high 菊田洋之 森末慎二
名無し

スポーツで汗を流す青春って妬ましいですね。僕が一人きりの部屋で不健康な汗をかいていたとき、グランドや体育館で健康的な汗をかいていた彼らは、きっと美人マネージャーと幸せな関係になっていったのでしょう。僕は2次元な彼女と不適切な関係になっていたというのに……。ああ妬ましい。今回紹介する『ガンバ! Fly high』も“スポーツ”と“ねたみ”というキーワードは欠かせません。「オリンピックで金メダルをとりたい」と、逆立ちもできない運動音痴の藤巻駿が飛び込んだのは、県最弱の平成学園体操部。そこには、一芸だけは秀でた三馬鹿トリオの先輩、内田、真田、東がいた。藤巻のひたむきな姿に3人も影響されて――。そんなプロローグから始まる『ガンバ~』の主人公・藤巻駿は典型的な少年漫画の主人公です。はじめはどんくさいけれど、眠った大きな才能をもち、努力を厭わない。あっと言う間に日本代表になり、世界初のオリジナル技を発明するまでになります。しかしこうなると、なんとも感情移入できなっなくなってしまいます。「努力とかいいながらも、結局“天才”の物語かよ」と。ああ妬ましい。しかし、『ガンバ~』はひとあじ違う。後半になると、完璧超人となった藤巻から、藤巻に追いこされてしまった3馬鹿トリオにフォーカスが移るのです。身近にいる天才・藤巻が世界の舞台で活躍するのをみて、感動しながらも焦りを感じた内田と真田は、自分なりの努力を重ねます。しかし、どうしても、どうしても、藤巻の背に追いつくことができない。藤巻に逆立ちを教えた内田は言います。 「俺はあいつに負けたくねえのよ! 体操の技術がどうとか得点がどうとかじゃなく、一生懸命ガンバるってことにおいて!」 決定的に実力の違う天才の背中を見ながらも、そんな気持ちをストレートに吐きだし踏ん張り続ける3馬鹿トリオこそ、読者が感情移入に足る、真の主人公だと思えてならないのです。これは、ひとつの【凡人萌え】マンガの極みと言えるではないでしょうか。そうジメジメした部屋の中で思うのです。

BE BLUES!~青になれ~

優希の巨乳

BE BLUES!~青になれ~ 田中モトユキ
名無し

悩んでばかりいるコンニャク主人公が跋扈する(大分減ってきたような気がしますが)『BE BLUES!』の主人公・一条龍は、かなりメンタルの強い主人公です。わかる人にだけわかればいい例えでいうと、『無限のリヴァイアス』の相葉昴治並にメンタルが強いのです。  物語は、一条龍の小学校時代からはじまります。一条龍は小学の頃から話題の選手です。個人技から戦術眼、そしてメンタルまでふくめて、観客だけでなく敵チームまで魅了するようなスタープレイヤーです。「オレは計画をやりとげるタイプだ」と、将来ワールドカップに出場するまでの計画をしっかりたて、そこに向かって邁進していくはずだったのですが…龍は親友の命を守るために大怪我を負ってしまいます。サッカーどころか日常生活も危ぶまれる龍。誰もが、サッカー選手としての一条龍は終わったと、思っているなか、当の本人だけは全くあきらめていないのです。そこから2年の月日を経て、彼はサッカーに復帰します。友人、家族はサッカーを龍がプレイできるだけで感動しますが、かつての龍を知る人間は、変わり果てたその姿に落胆を隠しきれません。  声高に泣きもわめきもせず、苦しみは全て腹に込め、目的にひたむきに向かう龍は、それはもうかっこいいのです。事故で失ってしまったものはなにか?その時間で得たものはなにか?みんなが絶望している間も、龍だけは計画の達成を目指し、できる努力を重ねていた。復帰してそれが花開いていくストーリー展開は非常に盛り上がっていきます。登場人物誰も彼もが泣くし、読んでる私も泣けてくる。そんな展開です。  諦めないといえば、たしかに、梶原一騎作品の主人公たちも不屈な人たちでした。けれど彼らの不屈さって、破滅型というか、自己陶酔というか…目標に向うよりも、美しく散ることに焦点があるように思えます。陶酔もなく増長もせず、まっすぐに生きる一条龍の主人公像はかなカッコイイのです。  と、十分に作品の素晴らしさを説明したところで、ここからはヒロインの可愛らしさを述べますね。この作品には巨乳幼なじみの優希と金髪ハーフのアンナという2人のヒロインが出てくるのですが、とにかく可愛い。王道ツンデレなアンナもよいのですが、龍をずーっと支え続ける優希は本当によいヒロインです。そして巨乳可愛い!  巨乳な女の子ってボタンで止めたシャツに隙間できちゃうじゃないですか(僕も巨乳なのでわかります)。そういった巨乳ならではの服装のたるみを、あらゆるシーンでさしこみ、優希の巨乳を強調する田中モトユキ先生は偉大だと思います!

神聖モテモテ王国

強烈にマニアックな一発ネタの数々

神聖モテモテ王国 ながいけん
名無し

これは、ナオンと彼らだけの蜜あふるる約束の地・モテモテ王国の建国を目指す、自称謎の宇宙人ファーザー(23の秘密がある)とオンナスキー(メガネ)の物語です。舞台となるモテモテ王国は普通のアパートの一室。ちなみに王権は神から授けられたもの(王権神授説)なので、その正統性に疑問を挟む余地はありません。ファーザーとオンナスキーは、何者か(悪の組織や犬やトーマス)の陰謀にもめげず、とにかく女にもてようと、バンド・フィンガーツーを結成したり、お笑いコンビ・ザビ山ドズル、ガルマを結成したり、宮廷画家・宮廷ハニーになったり、ユカイツーカイ俗物くんになったりする、いろいろアレな8ページギャグマンガなのです。  はっきりいって、何をいってるかわからない説明かもしれませんが、あらゆる意味で伝説の作品であることは、わかっていただけたことでしょう。私は、この作品の言葉の感覚が大好きです。一つ一つの言葉に宇宙的な何か…イデが込められているのです。  第一話「別に死んでもいい奴ら」(タイトルからすでに最高だ)の冒頭からキレキレです。  「オンナスキー… わしらがなぜもてないかというと…」「何かの陰謀じゃよ!!」セリフだけではわからないと思いますが、この間がたまらなくステキなのです。絶妙な間と、強烈なセンテンス、そして歴史、特撮、ジョジョ、三国志といった、あらゆるマニアックなネタ…それがうまく合わさっているのです。  「ご冗談でしょう、ファインマンさん」というネタはまだいいのです。「宇宙の棋士テッカマン永世名人」とは一体なんでしょうか?しかも持ち駒はペガスです。物語はこの強烈にマニアックの一発ネタを皮切りに「テッカマンは、宇宙奨励会時代からすでに「この宇宙人は将来の名人なり」と言われており、期待の大型生物として、本州・四国・九州に生息。  水のきれいな川の石の下にいて、小さな虫などを食べる」という説明(~将来の名人なりのくだりは、『月下の棋士』のパロディと思われる)が入ってあさっての方向に暴走します。でも、1コマ後にはなんの問題もなく元の物語にもどっていくのです。  これらのステキな文章を読んでいると、たとえ言葉として通じていなくても、意味が心からわかるという体験をします。文法の正しさだけが日本語ではないんだ!そんな体験をさせてくれたのは富野由悠季監督と『神聖モテモテ王国』だけです。  そんな感動と共に、オンナスキーがファーザーに投げかけた言葉が、今も僕の胸に刻み込まれているのです。「もうお前 生きたいように生きろ… だってお前の人生なんだから」