コオリオニ
自分を異常者だと社会不適合者だと思いたい全ての人へ
コオリオニ 梶本レイカ
生卵
生卵
『コオリオニ 上下巻』 再読 警察官×ヤクザのBL 異常者と異常者が必然的に出会いヤクザと警察を巻き込んだ愛憎劇を繰り広げていく作品。 実際にあった日本警察最大の不祥事事件と言われている稲葉事件をベースにこの作品は描かれている 物語の軸は自分をまともだと思い込んでいる異常者の警察官鬼戸と 女性のような見た目をしたサイコパスヤクザ八敷が共犯関係になっていくに連れ 愛を深めていきそれに周りの人間が巻き込まれていくといったストーリーであるが 個人的にはこの二人ではなく 佐伯という八敷と幼なじみのヤクザに僕は感情移入してしまった。 この佐伯という人物は書字障害という文字を読む事はできるが描く事ができない発達障害を持っていて この文章を書いてる僕個人もその書字障害を持っている。 佐伯は自分は人よりも劣っている自分は人とは違う人間だという意識を持っていて それは僕個人も幼い頃から感じていた。 しかし佐伯は出会ってしまう。 自分よりも倫理観もバグったヤバイ存在である八敷と。 自分はマトモじゃないと思っていたのに自分よりもマトモじゃない存在と出会ってしまったことで 自分はマトモな人間だったという事に気付かされてしまう。 マトモじゃないと気づいてしまったら それは単なる自分の努力不足になってしまう、異常者だから許されてたことが一気に許されなくなってしまう。 そんな佐伯の気持ちを僕は他人事だとは思えない。 心が苦しくなる。 自分はマトモじゃないからみんなと違うように生きなきゃいけないんだと思ってたのに 本物の異常者を見てしまったら 今までの自分の生き方さえも否定されたような気持ちになる この本物の異常者の2人の恋愛を見ていると 社会の中で生きる普通のファッション異常者の俺には突き刺さる。 世の中の自分を異常者だと思う全ての人に読んでほしい 死ぬぞ
マグネット島通信
独特な磁場が、読後の満足感を引き寄せる
マグネット島通信 伊藤正臣
名無し
南の島に移住してきた低迷気味な青年翻訳家。 爽やかさとほのぼの感の両方が漂う島の女子高生。 空から降ってきたらしい謎の金属片。 ちょっとSFが混じったメルヘンでドリーミイな物語が 始まるのかと思いきや、謎のカケラが色々なことを引き起し、 繋がり、広がって、やがて時空を超えた壮大な物語になっていく。 空から金属片が降ってくるという完全なSF設定でありながら、 SF設定を夢や愛や物語を成就させるためだけで使っていない。 小さな部品それぞれがちゃんと繋がることで 凄い働きをする機械が出来上がるように、 夢も希望も不満も事情も抱えたそれぞれの人たちの心が いくつも繋がって動いて大きなものになっていく。 その「ちゃんとした繋がり」にするためにSF設定が 使われてはいるが、決して安直に使われていない。 SFで繋げることで、湿っぽい繋がりにならずに済んでいるし、 パニック物な展開もありながら、最後までほのぼの感も崩れない。 夢物語と論理的物語をバランスよく組み合わせて 「マグネット島通信」という物語を構築するために SF要素が必然性を持って組み込まれている。 読後には滅多にないそして独特な満足感を味わいました。