BREAK BACK

超エゴイストな元世界7位のプロ選手が主人公…!!

BREAK BACK KASA
たか
たか

偶然作者のツイートを見て読んでみた作品。 怪我で引退した元世界ランキング7位の女子プロテニスプレーヤー・上條は、試合で強敵を前にした恐怖と高揚が忘れられずギャンブルにのめり込む。1億の借金を背負うが、ある人物に無名の高校を全国優勝させたら借金をチャラにすると言われ指導者になるというあらすじ。 https://twitter.com/KASA_TENIS/status/985751371113623554?s=20 とにかく面白いのが、この主人公・上條の傍若無人ぶり! 初対面の高校生を躊躇なく相手を殴り「お前」と呼び捨て、理論的な説明を求められたら「天才だから無理」と理不尽に却下する。 …どこかの女子高生天才小説家ばりに傲岸不遜。 さらに初めての練習試合でボロ負けしたときは、無言でとっとと帰宅し、その翌日には 「テニスの天才美少女と世間を騒がし…小中高と全て日本一…全日本選手権も最年少優勝…そんな私の輝かしい経歴に昨日」 「お前らが泥を塗った」 …と言ってのける。そこに痺れる憧れる…! まだ1巻を読んだ時ところなので、正直「うわなんだこいつ」感は否めないが、彼女のふるまいは世界ランク7位という充分実力に裏打ちされたもののはず。 今一番続きの気になるスポーツ漫画です…!

新装版 しゃにむにGO

人の脆さとテニス愛の四重奏曲

新装版 しゃにむにGO 羅川真里茂
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

愛情を見失う者、支配しようとする者、失いたくなくて縋る者、恋と競技愛が混乱する者……。悩み足掻き、それでもテニスを「愛する」高校生達の、頂点を目指す三年間の物語。 ----- 常に世代のトップを争ってきた、滝田留宇衣と佐世古駿。精神面で佐世古駿に水をあけられ、ジュニア界から脱落した滝田留宇衣は、高校で出会った運動神経の鬼・伊出延久と共に、学生テニスの頂点を目指す。 物語は、この三人に、足の障害でテニスを断念した尚田ひなこを加えた四人が、様々に関わり、響き合う、切迫し熱気を帯びた四重奏の様相を呈する。 物語は、伊出延久の能天気さに覆われた、前向きコメディタッチで進行して行くが、話が進むにつれ四人は様々に、苦しみ崩れてゆく。 闘う動機を試合中に見失い、プロを目指したい気持ちが試合に反映されない滝田留宇衣。 しがらみから逃れる為に、自分のテニスにライバルの滝田と、好意を持つひなこのみを入れて孤立する佐世古駿。 プレイできない代償を、伊出と佐世古の両方を支えることに求め、自分の本心を見失う尚田ひなこ。 そして、常に明るい伊出延久も、テニスをする動機をひなこへの恋に置いてしまい、恋に躓くと立ち止まってしまう。 彼等が等しく見失うのは「テニスへの初期衝動」。この物語は、四人がそれぞれ苦しみながら、最終的に本当の愛と実力を手に入れる「歓喜の歌」なのである。 苦しみが深い分だけ、解放された時の晴れやかさと、きらめきに包まれた彼等の姿に、共に涙するほど心動かされる。 彼らの周りのチームメイト、指導者、ライバル達も、全員が苦しみを抱えており、その物語の解決を、ひとつひとつ丹念に描く。大小様々な物語にじっくり寄り添って、最後に皆で笑いたい、そんな作品だ。 ----- 加えて、作中で「車椅子テニス」をがっちりと取り上げて、困難の中でも、自分の心に真っ直ぐ向き合うことが描かれていて、心温まる。パラリンピック東京大会前に、『ブレードガール 片脚のランナー 』などと併せて読んでおきたい。

燃えるV

一応テニス漫画

燃えるV 島本和彦
マウナケア
マウナケア

なんとか、格好がつくくらいならテニスはできます。しかし体力の続く限りガンガン打ち込むだけなので、相手に「テニスをしてない」と言われる始末…。で、そんなときに思い出すのがこの作品。一応テニス漫画ですが、作者自ら「あの漫画はテニスなどいやっていない」といっている、そのまんまの内容です。生き別れた父と再会するため、勝ち続ける事を宿命づけられた主人公・狭間武偉。彼はルールも知らずにテニスを始め、インターハイ、そして4大大会で頂点を目指す。なんて書くのもばかばかしいほどで、実際にやっていることといえば、ダブルスを一人で戦ったり、ストリート・テニスなるもので日銭を稼いだり、あげく必殺技は相手の体を狙う技…。テニス漫画として読んではいけません。でも、テニスに格闘(熱血では無い)要素を取り入れて、笑いも涙も盛り込むなんて、凄いことだと思いません? 後の『逆境ナイン』や『無謀キャプテン』などより、テニスというスポーツを突き抜けているこちらのほうが全然いい。最近、作者のこの手の作品はないようなので、ライバル・赤十字の息子編とか描いてくれると、また燃えるんだけどなあ。

ベイビーステップ

新しい形のヒーロー

ベイビーステップ 勝木光
名無し

よく、犬に追いかけられます。犬は僕をみると何故か興奮し、どこまでも追いかけてくるのです(マルチーズに追われたこともある)。集団でいても僕を狙い撃ちするので、おそらく弱いものが直感的にわかるのでしょう。しかし、犬はどんな基準で僕を“弱い”と判断しているのでしょうか。たしかに一対一なら全く歯が立ちませんが、助けを呼んだり、道具をつかえば互角になれないこともない。要は創意工夫が大事なのです。  『ベイビーステップ』の主人公・丸尾栄一郎は、自分と相手の特性を把握し、着実な一歩を重ねることで勝つという、新しい形のヒーローです。  丸尾栄一郎は、小学校から成績はオールA。周囲の人間からはエーちゃんと呼ばれています。クソ真面目で完璧主義で学業優秀ですが、それは性分であって、まだ将来の目標を見つけられていませんでした。そんな、こなすだけの日々を変えたのがテニス(+ヒロイン・鷹崎ナツ。すげー可愛い)との出会い。テニスの面白さに夢中になった栄一郎は、数々のライバルを打ち破り、やがてプロの道を選ぼうと考えていきます……。スポーツ漫画の王道とも言える展開ですが、ほかのスポーツ漫画にはない特徴があります。  一つはとにかく理詰めで進められる漫画だということ。スポーツ漫画ですから、努力を重ねたりもしますが、その努力は常に理屈を必要とします。なんのためかもわからない、ムダな山ごもりはしません。  もう一つは、栄一郎の武器が、恵まれた身体でも特化した技術でもないことです。遅くにテニスを始めた栄一郎は、技術も体力もライバルたちに比べて劣っています。「派手な武器はひとつもないが 穴という穴もない」そんな特色のない地味な栄一郎と、華やかなライバルのギャップを埋めるのは、観察し、考え、挑戦する、という力です。  ゲームの結果を常にノートに書き込み、どのような流れになっているか、相手が好む傾向はなにかを確認します。そして、勝つために自分に足りないものは何か、それを覆すために挑戦すべきことは何かを考えるのです。今の段階で勝機が見つからないなら、状況を変えるための挑戦をする。的確な観察、考察、挑戦の繰り返しが、効率よくエーちゃんを成長させていくのです。  こんな地味にスゴイ主人公のエーちゃんと、スポーツ漫画の主人公タイプの井手義明との対決(15~16巻)は非常に盛り上がります。井手は、エーちゃんとの対戦に遅刻しますが、その理由も交通事故にあった少年を助けたものという。その少年と勝利の約束もしているという、スポーツ漫画の黄金パターンです。勢いのある井手に対して、自分のペースを守ろうとするエーちゃんですが、徐々に試合場全体が井手応援の空気になっていきます。そんな逆境のなか、エーちゃんは空気に呑まれないメンタルの作り方を考えはじめるのですが…。スポーツにおけるメンタルについての非常に重視しているのも、この漫画の特長だと思います。  自分の目標を見据え、自分と相手の能力を確かめ、今できる最善策を選び続ける――。大事なのは“意志”であるということが描かれる『ベイビーステップ』は、普段、何に悩んでいるかもわからないで鬱屈としている時に、きっと新しい道を指し示してくれるはずです。