概要
手塚治虫は医学生時代に演劇に出会い、自らも劇団に所属して舞台に立っていました。期間的には2年足らずと短かったのですが、この経験もマンガの創作には活かされていて、時折作品の中で緞帳や能舞台が描かれたりしています。 その舞台経験の集大成として描かれたのが「七色いんこ」です。「ぼくのなつかしさを込めて、ぼくが現在描いているマンガの方式のルーツのようなものとして」描き始めたと本人が話しているこの作品は、シェイクスピアの「ハムレット」や曲亭馬琴(滝沢馬琴)の「南総里見八犬伝」など実在する演劇をベースにしながら、オリジナルストーリーが展開されていきます。また、連載の序盤から巧みに伏線が張られており、終盤でそれらが解明される様は、まさに舞台作品をみているように一気に引き込まれます。 今回の企画展では、手塚の演劇歴を紹介した上で「七色いんこ」をはじめとして、演劇の影響が見受けられる作品を幾つか紹介します。新たな視点から、手塚作品の魅力にふれてください。