概要
日本人はこんなにマンガを描いてきた―プロの作家のみならず、実に多くの人が「絵」を描いています。マンガ読者の多くは、愛好するマンガ作品の「絵」をまねて自らも「描く」という体験を一度はしています。このような「描く読者」が分厚い層として存在し続けてきたことが、現代マンガの隆盛を支えてきたと言っても過言ではありません。次の世代の才能がいつも人々の「描く」という営みの大海のなかから現れてきたことは、マンガの文化的「強み」と言ってよいでしょう。本展覧会は、マンガを「描く」「人に見せる」「たのしむ」という、マンガの本質的な営為に着目しています。原画などの展示によって、優れたマンガ家たちの卓越した作画技術を鑑賞する機会を提供するとともに、描き手たちをはぐくんできた「場所」として、各時代の媒体資料を出版物の現物などでご紹介します。また、原画以外にも、洗練された個々の表現、描線や構図、コマわり等についての特徴を、具体的に図示して解説します。マンガ表現史という観点をテーマに展示全体の基盤とすることで、マンガ表現の豊かさと多様性を、マンガファンにのみならず多くの方に感じでいただける、またとない機会となるでしょう。 1.すべての夢は紙とペンからはじまる 不朽の名作を生み出してきた巨匠たちの子ども時代やデビュー前後の作品を展示し、彼らもまた先達の表現に憧れ、影響を受けながら自らのスタイルを築きあげていったことを紹介します。 《出品作家》赤塚不二夫、石ノ森章太郎、手塚治虫、藤子不二雄(A)、水野英子 2.名作の生まれるところ―マイスターたちの画技を読み解く 現代マンガの最前線を走るマンガ家8名の作品をご紹介します。各作家独自の描線や画面構成の「技術」を原画や拡大パネル等で提示し、多くの人々に支持されたヒット作の数々がどのように生まれてきたのか、マンガ家・田中圭一氏の解説も交えて展示します。 《出品作家》あずまきよひこ、さいとう・たかを、島本和彦、竹宮惠子、平野耕太、PEACH-PIT、陸奥A子、諸星大二郎