サテライト・コインランドリー

かわいい宇宙のお洗濯 #1巻応援

サテライト・コインランドリー にわかあめ(よよはち×ナツノアメ)
兎来栄寿
兎来栄寿

日本列島に最強寒波が襲来して、各地でとんでもない寒さになるとのこと。皆さんも暖かくしてご自愛しながら、部屋でゆっくりマンガなど読みながら過ごすのが良いのではないでしょうか。 そんなゆったりとした時間のお供にお薦めなのが、こちらの『サテライト・コインランドリー』。心の洗濯になる、SF洗濯マンガです。 表紙や1話だけでも見ていただければ解りますが、とてもゆるくて可愛らしい絵で可愛いらしいお話が展開されていきます。ちょっと疲れて、難しいことを考えたくないときにもスッと入ってくる作品です。 聞いた話ですが、アメリカの砂漠地帯の方だとコインランドリーのような施設が極端に少ないところがあり、またホテルの洗濯サービスもコロナの影響で使えなくなってしまっていた時期があって、結果洗濯をできるところが全然ないため旅行者向けに臨時の洗濯代行サービスを行ったら日本円にして1回8000円ほどでも大人気だったということです。 地球上ですらそうなので、とある銀河系で唯一水が豊かにある星で営まれているコインランドリーはさぞ大人気だろうなと思いました。 お客さんとして多種多様な宇宙の住人たちが来訪し、想像力を刺激されます。基本的に1話完結ですが、SFならではのスケールで描かれるお話もあれば、緩いだけではないお話もあり、楽しませてくれます。また、ピニャコなど可愛いサブキャラも魅力的です。 『ドラえもん』や、高橋聖一さんの作品が好きな方にお薦めしたい一作です。

ドラゴンクエスト 幻の大地

夢が大きな力となる!!

ドラゴンクエスト 幻の大地 神崎将臣 堀井雄二 とまとあき
酒チャビン
酒チャビン

国民的RPGのコミカライズです。コミカライズものは、小説のコミカライズにしろ、ゲームのコミカライズにしろ、なぜなのか変にストーリーが端折られて、急ぎ足で短めに完結するものが多く、場合によっては原作を知らない人が読んでも理解できないくらいになってしまってるものも多いのですが、この作品は大丈夫です! 確かに中盤のイベントで結構端折られてるものもなくはないのですが、テリー&ミレーユの過去を序盤から細切れに挿入してくるなどの工夫や、補足エピソードの追加などによって、うまく纏まってるなと思いました! ドラクエの中でも、6はストーリー上、詳細があまり明言されない匂わせるくらいの要素が多いため、シリーズの中でもわかりづらい(解釈が分かれる)ことが多い作品なのですが、こちらのマンガ版ではうまい具合にわかりやすくなってると思います!! 「夢が人々の大きな力となる」というメッセは変わらないのですが、夢をブレイクダウンした要素が、上の世界で封印されていたエリアに割り振られていたのも良かったと思います。 ・ダーマ神殿:知識 ・メダル王:希望 ・カルベローナ:愛 ・クラウド城:勇気 最終決戦ではキズブチ(初期からの仲間のぶちスライム)も勇者となり、モブキャラ含めた世界中のみんなからの力を得てミナデインで締める展開も熱かったです。 ただアモスのルックスは、自分の中では梅干し食べてスッパマンみたいな感じだと思っていたのが、キャプ翼のピエール君みたいな感じで登場したのがビビりました。 ゲーム版をやったことがない人も楽しめる内容となってると思いますので、機会があれば読んでみてほしいです。

私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記

老成せざるを得ない子供の悲しみ、辛み

私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記 水谷緑
兎来栄寿
兎来栄寿

「ヤングケアラー」という言葉を知らない方や、自分が実際にそうである・そうだったという人に切実に届いて欲しい一冊です。 「ヤングケアラー」とは、「介護や病気、障がいや依存症など、ケアを要する家族がいる場合に大人が担うような責任を引き受け、家事や看病、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」のことであると幕間のコラムで解説されています。 発売から3ヶ月が経ちましたが、本日発売の電子ストアもあるということで、改めてこのタイミングで推薦しようと思います。 本作は、さまざまな子供たちの実際のエピソードを元にして作られたあるヤングケアラーの少女のお話で、単なるフィクションではないことが明示されて始まります。 統合失調症の母によって物理的にも精神的にも傷付けられる日常を送る主人公・ゆい。父親も弟も助けてくれず、認知症の祖父もおり、家事は自分がやって当然。年相応に遊ぶことが生業である同級生たちとは、まったく違う生活を強いられていますが、なかなか自分の境遇が特殊であるとは当事者は気付きにくいものなんですよね。それがたとえ、妄想の中では何度も母親を殺したり、ぬいぐるみを破壊しては直したりして何とか心を保っているような、危うい状態であったとしても。 また、そんな窮状を何とか大人に伝えられる機会があっても、事勿れ主義の権力を持つ輩によって闇に葬られてしまい、子供一人ではいかんとも動かし難い状況の絶望感も描かれます。助けを求めることすら諦めてしまうようになる、そんな悲しいことがあるでしょうか。 私も認知症の祖父を自宅で介護したり、一親等以内ではないですが統合失調症の身内がいて途方もない大量の妄想を子供の頃からじっと傾聴したりして生きてきました。また、幼い頃からネグレクトやDVその他により強い殺意を抱かされ絶対にこの遺伝子を後世に残さないと決意させられた父親とは、若い頃に絶縁して久しいです。なので、多少形は違えど共感できるポイントが多々ありました。 本当の自分の感情を切り離して辛い事象をワンクッション置いて俯瞰的に捉えるやり方などもそうですし、冒頭のミヒャエル・エンデの『モモ』を読みながら「夜 皆が寝た後一人で本を読んでいるのが安心で安全な時間」と綴られるモノローグは正に自分と重なりました。バラバラになりそうな心を繋ぎ止めてくれてたのは、私にとってはマンガを始めとする物語やキャラクターたちでした。 恐らく、この本を読んで初めて「自分も助けを求めていいんだ」と思える子もいることでしょう。そういう子たちに届くように、ぜひ色々なところに置かれていて欲しい作品です。当事者の子供にも読めるように、と総ルビになっているのは素晴らしい配慮です。 また、現実に存在する個々別々の地獄を知っておくことは、社会でさまざまな人に出会った際の想像力の助けになります。そういった意味でも、広く読まれる意義のある作品です。

私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記

老成せざるを得ない子供の悲しみ、辛み

私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記 水谷緑
兎来栄寿
兎来栄寿

「ヤングケアラー」という言葉を知らない方や、自分が実際にそうである・そうだったという人に切実に届いて欲しい一冊です。 「ヤングケアラー」とは、「介護や病気、障がいや依存症など、ケアを要する家族がいる場合に大人が担うような責任を引き受け、家事や看病、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」のことであると幕間のコラムで解説されています。 発売から3ヶ月が経ちましたが、本日発売の電子ストアもあるということで、改めてこのタイミングで推薦しようと思います。 本作は、さまざまな子供たちの実際のエピソードを元にして作られたあるヤングケアラーの少女のお話で、単なるフィクションではないことが明示されて始まります。 統合失調症の母によって物理的にも精神的にも傷付けられる日常を送る主人公・ゆい。父親も弟も助けてくれず、認知症の祖父もおり、家事は自分がやって当然。年相応に遊ぶことが生業である同級生たちとは、まったく違う生活を強いられていますが、なかなか自分の境遇が特殊であるとは当事者は気付きにくいものなんですよね。それがたとえ、妄想の中では何度も母親を殺したり、ぬいぐるみを破壊しては直したりして何とか心を保っているような、危うい状態であったとしても。 また、そんな窮状を何とか大人に伝えられる機会があっても、事勿れ主義の権力を持つ輩によって闇に葬られてしまい、子供一人ではいかんとも動かし難い状況の絶望感も描かれます。助けを求めることすら諦めてしまうようになる、そんな悲しいことがあるでしょうか。 私も認知症の祖父を自宅で介護したり、一親等以内ではないですが統合失調症の身内がいて途方もない大量の妄想を子供の頃からじっと傾聴したりして生きてきました。また、幼い頃からネグレクトやDVその他により強い殺意を抱かされ絶対にこの遺伝子を後世に残さないと決意させられた父親とは、若い頃に絶縁して久しいです。なので、多少形は違えど共感できるポイントが多々ありました。 本当の自分の感情を切り離して辛い事象をワンクッション置いて俯瞰的に捉えるやり方などもそうですし、冒頭のミヒャエル・エンデの『モモ』を読みながら「夜 皆が寝た後一人で本を読んでいるのが安心で安全な時間」と綴られるモノローグは正に自分と重なりました。バラバラになりそうな心を繋ぎ止めてくれてたのは、私にとってはマンガを始めとする物語やキャラクターたちでした。 恐らく、この本を読んで初めて「自分も助けを求めていいんだ」と思える子もいることでしょう。そういう子たちに届くように、ぜひ色々なところに置かれていて欲しい作品です。当事者の子供にも読めるように、と総ルビになっているのは素晴らしい配慮です。 また、現実に存在する個々別々の地獄を知っておくことは、社会でさまざまな人に出会った際の想像力の助けになります。そういった意味でも、広く読まれる意義のある作品です。

前科者

良い意味でよく題材にしたなと思える作品

前科者 香川まさひと 月島冬二
六文銭
六文銭

過去に犯罪を犯した人間と、彼らが社会更生するためのお手伝いをする保護司との関係を描いた作品。 私、この作品を読むまで、保護司という職があること存じてませんでした。 しかも無給のボランティアという待遇(一定経費でるようですが)にもかかわらず、日本では約4.8万人が従事されていることにも驚きでした。 給料がでなくてもやることもそうですが、何より犯罪を犯した人間と関わる勇気というか、怖くないのかな?と思ってしまった。 本作を読むと、そして主人公の阿川佳代の考えや行動を目の当たりにすると、自分が上記の考えになっていたことが何とも恥ずかしい気持ちになりました。 親のネグレクトのせいで満足に食事を与えらなかった受刑者に対して 「(親から愛されなかった)寂しい思いは記憶としてずっと残る」 とか 「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか?」のよくあるドラッグのメッセージに対して 「覚醒剤やっても、人間はやめられない」 とか、犯罪にばかり目がいくのではなく、人間讃歌とも言える、犯罪に手を染めなくてはならなくなった人間に対する優しい思いが溢れていて、読んでいて本当に考えさせられます。 もちろん現実は、もっとどうしょうもない人もいるのでしょうが、そればっかりではないことを突きつけてきます。 テレビやネットのニュースでも、犯罪者の逮捕と犯罪の内容のみで、その後どうなったかまでは伝えることがない中で、よく題材にしてくれたなと感動しました。