どうせ泣くなら恋がいい

王道学園恋愛の良さに浸る #1巻応援

どうせ泣くなら恋がいい 日下あき
兎来栄寿
兎来栄寿

『はじめての鮫島くん』、『はやくしたいふたり』の日下あきさん最新作です。 本作は、表紙に描かれている黒髪ロングのヒロイン・穂高と、黒髪イケメン・湊のふたりを中心とする青春ラブストーリー。 穂高は母親を亡くしており、少し悲しい過去を背負ってはいるものの前作・前々作と比べるとキャラクター造形や設定はかなりオーソドックスで王道に寄っています。ありふれた素材を美味しく料理する方が難しいのですが、本作はしっかり面白く日下あきさんの地力の高さを感じずにはいられません。 絵が綺麗でネームも読み易いのは明確な美点ですが、何よりも表情の描き分けによる感情表現が素晴らしいです。表情豊かな穂高はもちろんなのですが、クールでツンツンしている湊の無表情の中での絶妙な表情の描き分けが秀逸です。特に、3話最後のふたつの見開きでのお互いの表情は最高。こんなものを見せられてキュンキュンしないやつはいねえ! と心の中の恋愛マンガ好きの承太郎が7ページ連続ラッシュする勢いです。 そして、そんな巧さによって演出される繊細な感情が煌めいています。1話から描かれる穂高の切なる想い。傷ついた経験から怯えを抱きながらも、前に進もうという意志の美しさ。外見のかわいさだけでなく、内面の良さもあいまって応援したくなる主人公です。 なお、本筋は非常に美しいお話でありながら、幕間での兄の紹介文「熟女好きはアイデンティティであり高尚な趣味」という部分には無意識の内に敬礼のポーズを取っていました。「I am big Brother」のエプロンなども好きです。 良い少女マンガは脇役が良い法則がありますが、本作では兄のみならず穂高の友人たちもまたとても魅力的です。他にもこれから活躍しそうなキャラも散りばめられ、今後どういった関係性で展開していくのか楽しみです。 『このマンガがすごい!』などのアワードだと、男性選者も多い関係でこうしたマーガレット系の超王道恋愛少女マンガは上位にランクインしにくいこともあり、まだ少女マンガ好き以外には広く知られていないかと思いますが、もっともっと評価されて良い方です。いずれ映像化などされて更に人気がブレイクしていくことでしょう。

正反対なわたしたち

犬たちも人間たちもかわいい #1巻応援

正反対なわたしたち 夏奈ほの
兎来栄寿
兎来栄寿

初々しい爽やかなラブコメ 100点 犬たちのかわいさ 10000点 優勝です。 元気でパワフルな小型犬・門十郎(ポメラニアン♀)と、おっとりした大型犬・つぶ(ロットワイラー♂)の対照的な2匹。 そして、それぞれの飼い主である男女ふたりもまた対照的な性格で、愛犬を通した交流が始まってから次第に仲良くなっていきます。 うちの子は門ちゃんほど活発ではないものの、同じ女の子の白ポメ飼いとしては、頷けるシーンや共感するシーン多々でチェック不可避の作品でした。 10話の、家に帰ると笑顔で駆け寄ってくる白ポメの姿は、うちの子とそっくりで思わず破顔してしまいました。全体的に、犬の所作がリアルかつ愛情たっぷりに描かれているのが伝わってきます。 家に愛犬がいるから、仕事で理不尽な仕打ちを受けても明日を頑張れるのだというところなども非常に解像度高く描かれています。 「うちの子しか勝たん」、毎日観たい……。 丁度、Twitterでは飼い犬や飼い猫の「#初めて撮った写真」というタグが流行っているようで、思わずうちの子の最初の写真を眺めて長生きしてほしい……と願うことしきりでした。 人間のラブがコメる姿も、非常にかわいく初々しくて、応援したくなるふたりです。つぶちゃんと門ちゃんなら多頭飼いになってもきっと大丈夫だと思うので、末永く幸せになって欲しいです。

オタクも恋も連鎖する

生けとし生きる推しを推す者に幸あれ #1巻応援

オタクも恋も連鎖する あまいろちゆ
兎来栄寿
兎来栄寿

オタクは、好きですよね。推しの過剰供給を突然に受け幸福と歓喜に満ち満ちて、慄き震え、悶えのたうちまわり、涙を流し、語彙力を失い、奇行に走り、人の形も失い、生と死の境を彷徨い、やがて天へと還るオタクの姿を見るのが。 そんな尊死し続けるオタクたちの姿を摂取できる、読んでいてとても楽しく幸せな作品がこちら、『死がふたりを分かつとも』の天色ちゆさんの新作です。 学校一のイケメンである河合くんと、美少女である栫さんのカップリングを至上の推しとし、日々供給される栄養素によって幸せになり続ける音成くんが主人公の物語。面白いのは、音成くん自身もまた超絶美形であり、同担のクラスメイトである遠巻さんから実はリア恋の対象になっていること。そう、タイトル通り関係性が連鎖しているのです。 イケメンなのに名前が「河合(かわいい)」、美少女なのに「栫(かっこいい)」なのにも理由があり、ふたりの見せる様々なギャップは音成くんや遠巻さんでなくとも拝みたくなります。天色ちゆさんの絵力によるところも大きいですが、メインキャラのヴィジュがとにかくいいのがいい。 ″立てばムービー 座ればスチル 歩く姿は劇場版″ ″テトリスじゃねぇんだよカップリングは…!!″ ″母校が聖地″ などなど、パワフルな言の霊が溢れているのも良きです。 「天下泰平」と書いて「推しカプの平和」 と読む。ンっン〜、名ルビだなこれは。 昭和の少女マンガのようになってるモブたちや、宗教画になるシーン、BL好きで弟の創作を褒めてくれる3つ上の姉、察しの良い友人・旗谷くん、各回のノリノリの煽り文、音成くんより遠巻さんの方が身長が5cm高いところ、かわいいヒロイン顔して盗撮してる遠巻さんなども好きです。 そして、1巻最後の引き。今後もますます楽しみです。