あらすじ

〈虫〉を駆除するために引き離された高坂と佐薙。高坂は治療が順調に進み社会に適応していった、――ように見えた。予想に反し、〈虫〉を殺すことはまったく逆の作用を起こした。そして、佐薙は病室から姿を消した。
恋する寄生虫(1)

失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。

恋する寄生虫(2)

佐薙の恋人となった高坂に、和泉が衝撃的な事実を告げる。「あんたの頭の中には新種の寄生虫が住み着いている。その感情は〈虫〉によって作り出されたものだ」。真実を知った二人の「操り人形の恋」の行方は――。

恋する寄生虫(3)

〈虫〉を駆除するために引き離された高坂と佐薙。高坂は治療が順調に進み社会に適応していった、――ように見えた。予想に反し、〈虫〉を殺すことはまったく逆の作用を起こした。そして、佐薙は病室から姿を消した。

恋する寄生虫

「虫」によって導かれる切ない恋

恋する寄生虫 三秋縋 ホタテユウキ しおん
ANAGUMA
ANAGUMA

人間社会での生きづらさを抱えた潔癖症の男・高坂と不登校の女子高生・佐薙が少しずつ互いの心の穴を埋めながら惹かれていくという「年の差」ジャンルのマンガです。 ラブストーリーは正直得意ではないのですが、タイトルのインパクトと美麗な表紙に惹かれて手にとりました。結論から言うとすごいよかったです。 自分の感情が何者かによって作られたものだとしたら…というのは思春期を生きた者なら一度は考えたことがあるんじゃないでしょうか。 それでもなお人を愛せるのか、その気持ちに基づいた恋は本物なのか…というのが本作のテーマです。そこまでだとよくある展開ですが、もう一捻りあるのがゾクゾクするんですよね…。 おとなになって読むのと、中高生ぐらいの時分に読むのとでまた味わいも変わるんだろうな。見事なジュブナイルだと思います。 作画の方もあとがきで語られていましたが、物語に寄り添うかのように絵のエネルギーがグッと増していき、真に迫ってくる瞬間がとても心地よかったです。 高坂と佐薙、どちらの気持ちにもズブリと入り込める画面と物語の説得力に飲み込まれてしまいました。 どちらかというと自分も「希死念慮を抱えた薄幸の美少女なんて手垢のついた青臭いモチーフだぜケッ」と思っちゃうタチなのですが、読み終わる頃には感情プールに投げ出されて浮かんでいるような状態でした。完敗。 実は好きなのかもしれんこういうジャンルが…ということにちょっと気付かせてくれた意味でも、出会えてよかったと思える作品です。ありがとうございました。