寅之介は、奉公人の薫に恋をする。 22年の間二人は少しずつ愛をはぐくみ、昭和の不器用夫と、おっとりだけど脳筋な妻の夫婦が生まれた。 夫婦は長い時間を共に過ごし、寅之介の病室で薫は懐かしそうに語り始める――。 これは、深い愛を紡いだ夫婦の優しい記憶。
奉公入りする幼い薫を引きとめにやってきたのは妹のちづる。しかしちづるはとんでもない阿修羅少女で…!?そして、現在の薫には寅之介の絶望的な病状が告げられる――。
一時帰宅したが、再度意識をなくし病院に運ばれた寅之介。医師は、「もう目を覚ますことはないだろう」と絶望的な状況を告げる。逡巡する薫は、かつて戦争で別れた家族のことを思い出していた…。
暗い戦争が影を落とした薫たちの幼少期。特攻隊として飛び立った寅之介の兄は、残された寅之介と最後の約束をしていた。そして、目を覚ました寅之介は愛する人と最期を迎える――。