あらすじ

語り、悩み、考え…西夜は泊を、一帆は鈴をそれぞれのパートナーとして選んだ。だが同時にその過程の中で、寮長としての一帆と西夜の絆はより強いものとなっていったのであった。夏が過ぎ、迎えた文化祭「蒼風祭」。寮生たちは皆、力を合わせ、寮に黄金の羊毛を探す冒険船「アルゴー船」の艤装を施す。それは、アルゴー寮が男女の垣根を越え一丸となった事を証明するものだった。後夜祭で歌い、喜びあう寮生たち。そんな中、一帆の元に父親から一通の手紙が届く。そしてその手紙は寮生たちを新たな渦に巻き込んでゆく…。いろいろな思いが交錯する中、一帆が出した結論は…!? 「出帆旗(ブルーピーター)ヨーソロー!」一帆が、お鈴が、西夜が、そして寮生たちが、今、新しい航海へと出帆する! 女子寮を束ねる紅尾鈴(べにおりん)、一帆の隣部屋の十文字唱、南部希美、三郷西夜(みさとせいや)ら女子寮生と、一帆や亀、壱岐たち男子寮生の交流を描いた学園ドラマ。『すくらっぷ・ブック』に続く、小山田いく青春3部作第2弾最終巻!! 特別読み切りエッセイ漫画「航跡(ウェーキ)ひいて」第3話も収録! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『連載物の最終回を描き終えた時は半分虚脱状態に陥るのが常です(といっても、まだ二度目ですが)。あまり見られた図ではないので、今回はすぐ旅行に出てみました。初冬の十和田湖畔、奥入瀬渓流は、みごとな紅葉。何もかも忘れて歩きまわり、帰りのバスに乗ったとたん、あたり一面霧と雪に閉ざされました。旅の終わりは雪の中…でもかえってスッキリしたようです。少々寂しくても、終わりは終わりの心で迎えよう...と。』
ぶるうピーター【第1巻】
蒼風高校学生寮「アルゴー寮」に入った新入生、明科一帆(あかしなかずほ)と壱岐良知(いきよしとも)が割り当てられたのは男子禁制のはずの女子寮(2号館)だった!? 直情一直線の一帆は激怒するものの、男子の入寮希望者が多く部屋の割り当て変更は行われない。一帆の幼馴染で共に入寮した亀行道は、そんな一帆達をうらやましがるが、実は女子寮と男子寮の間には埋められない溝があったのだ。一帆は持ち前の行動力で問題に立ち向かって行くが、そこはなかなか一筋縄ではゆかず……!? 女子寮を束ねる紅尾鈴(べにおりん)、一帆の隣部屋の十文字唱、南部希美、三郷西夜(みさとせいや)ら女子寮生と、一帆や亀、壱岐達男子寮生の交流を描いた学園ドラマ。『すくらっぷ・ブック』に続く、小山田いく青春3部作第2弾!! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『中学から、五年制の工業高専に進んだボクは、16歳から20歳までを寮と下宿で暮らしました。だから「学校」というと、すぐ「寮」を連想してしまうのです。その寮という、同世代だけの大家庭で知ったいろんなことを、いつかかいてみたいと、ずっと思っていました。……かかずにおくにはあまりに楽しい場所でしたから。』
ぶるうピーター【第2巻】
蒼風高校学生寮「アルゴー寮」に入った新入生、明科一帆(あかしなかずほ)と壱岐良知(いきよしとも)が割り当てられたのは男子禁制のはずの女子寮(2号館)だった。女子寮と男子寮の間の埋められない溝、しかしこの溝にも一帆達の行動で少しづつ変化が…。夏休みのある日、入寮して初めて念願の海に向かった一帆たち。そこで偶然同じ海に来ていた西夜、唱、希美の3人組と一緒になる。急接近する一帆と西夜。初めての恋の行方は?? 女子寮を束ねる紅尾鈴(べにおりん)、一帆の隣部屋の十文字唱、南部希美、三郷西夜(みさとせいや)ら女子寮生と、一帆や亀、壱岐達男子寮生の交流を描いた学園ドラマ。『すくらっぷ・ブック』に続く、小山田いく青春3部作第2弾!! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『「ぶるう――」は、ボクにとって不思議な作品です。2巻目が出るころになっても、落ち着いて先を見通すことができないのです。一帆は勝手に動いてしまうし、カメはふさけてばかりだし…、何をやらかすかわからないんです…みんな。ボクまで、何が起こるかわからない航海にまきこまれたような気がします。――それが今、とても楽しいんですけど。』
ぶるうピーター【第3巻】
蒼風高校学生寮「アルゴー寮」に入った新入生、明科一帆(あかしなかずほ)と壱岐良知(いきよしとも)が割り当てられたのは男子禁制のはずの女子寮(2号館)だった。女子寮と男子寮の間にある埋められない溝、しかしこの溝にも一帆達の行動で少しづつ変化が…。夏も終わり、アルゴー寮に世代交代の時期がやって来た。今まで寮を取りまとめてきた大野とお鈴にかわり、新たに寮長となったのは梶一(はじめ)と下川律子。争い事が嫌いな律子は今までと異なり寮の運営に柔軟性を持たそうとするがそれが裏目に出てトラブルになってしまう。律子の判断に従っただけで自分は悪くないと言い張る一帆を叱る梶。一帆は梶に突っかかってゆくが全く歯が立たない。初めての敗北にショックを受ける一帆。しかしその体験が、また彼を一つ大人にしてゆく…。その他、「ヌク」こと温田稔と希美の淡い恋を描く「チャンス」など掲載。 女子寮を束ねる紅尾鈴(べにおりん)、一帆の隣部屋の十文字唱、南部希美、三郷西夜(みさとせいや)ら女子寮生と、一帆や亀、壱岐達男子寮生の交流を描いた学園ドラマ。『すくらっぷ・ブック』に続く、小山田いく青春三部作第2弾!! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『しばらく前から、急に勉強(?)が好きになってきました――。といっても、漫画に使うための勉強ですけど。気を休めるつもりで本を読んでいても、いつの間にか片手でメモをとっていたり、徹夜で仕事をすませた後、どういうつもりか資料整理をはじめてしまったり…。異変の前ぶれでなければいいんですけどね。もっとも僕にとってはこれ自体、起きてる時間は全部仕事になってしまうという、重大な異変のようですが…。』
ぶるうピーター【第4巻】
蒼風高校学生寮「アルゴー寮」に入った新入生、明科一帆(あかしなかずほ)と壱岐良知(いきよしとも)が割り当てられたのは男子禁制のはずの女子寮(2号館)だった。女子寮と男子寮の間にあった溝も少しづつ埋まり、お鈴の一穂に対する態度にも変化が現れてくるが…。受験勉強に打ち込む一方、ちょっとストレスがたまり気味のお鈴。そんな時、ヨットの先輩で寮の近くに帆船模型工房を営む久留野からスキーに誘われた一帆は息抜きにと大野とお鈴も誘う。颯爽と滑るお鈴だが、ちょっと油断した隙に転倒。足を痛めてしまったお鈴に一帆は自分が誘ったせいだと自分を責める。責任を感じてお鈴の世話をする一帆だが実はお鈴は…。その他、壱岐と唱の心の交流を描く「十日夜のワラ鉄砲」など収録。女子寮を束ねる紅尾鈴(べにおりん)、一帆の隣部屋の十文字唱、南部希美、三郷西夜(みさとせいや)ら女子寮生と、一帆や亀、壱岐達男子寮生の交流を描いた学園ドラマ。『すくらっぷ・ブック』に続く、小山田いく青春三部作第2弾!! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『動物が大好きです。イヌやネコはもちろん、ハ虫類や水生昆虫が好きなので、変わってるね…と言われることもあるくらいなのですが……、たった二つ、苦手があります。ガとゴキブリなのです。下宿時代、廊下でゴキブリ君と出会ったとき、何を思ったかゴキブリ君、パッと羽をひろげてボクに向かって飛んできたのです。そのときの恐怖! ボクは一生忘れられないでしょう。』
ぶるうピーター【第5巻】
まさか・・・アネゴが・・・ 寮に伝わるジンクス『寮長を努めると国立大学に落ちる』を知りつつあえて国立大受験に挑んだアネゴこと紅尾 鈴。しかし、彼女はジンクスを打ち破る事は出来なかった。冷静を装うアネゴにアルゴー寮の仲間達は安堵するが一帆は感情を隠すアネゴに苛立ち、彼女に手を上げてしまう。一帆の直情に自らの思いを爆発させたアネゴは一帆に殴り掛かってゆく・・。本音をぶつけ合う一帆とアネゴ。それを見守る西夜達アルゴー寮の仲間たち。彼らの胸に去来するものは・・・。その他、実は一帆は寮生たちに、いいように使われてる??「影の寮長」。アネゴが旅の途中ふらりと立ち寄ったお寺は実は...「亀山寺ララバイ」など。女子寮を束ねる紅尾鈴(べにおりん)、一帆の隣部屋の十文字唱、南部希美、三郷西夜(みさとせいや)ら女子寮生と、一帆や亀、壱岐たち男子寮生の交流を描いた学園ドラマ。『すくらっぷ・ブック』に続く、小山田いく青春三部作第2弾!! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『故郷(ふるさと)小諸にもどって暮らしはじめてから、もう四年になります。当時、東京ほど遊ぶところはありませんし、もともと人ごみや狭苦しいところが嫌いなので、本当にノンキに暮らしていますが…「漫画家たるもの、いろいろ遊ぶことも勉強だ!」と、オニの担当さんのキツいおしかり。もっともだ!と思いながらも、あ…やっぱり山のタヌキと遊びたい。』
ぶるうピーター【第6巻】
新しい季節を迎え、一帆たちも2年生へ進級。新入生を迎えて活気づくアルゴー寮だが、中には元生徒会長の常盤井幹子のようになかなか大変な子も・・・。突然の指名を受け、寮生たちの支持で寮長を引き受けることになった一帆と西夜。ある日、いつものように寮生会室に集まって事務仕事をしていた一帆たちだったが、皆が退室したあと…亀たちが悪ふざけに使っていた道具が原因でボヤ騒ぎを起こしてしまう。幸い被害は軽微だったものの寮の貴重な資料である寮生会史を焼失。幹子たち寮生は一帆に責任を取って寮長を辞任するよう迫るが、一帆は断固として辞任を拒否したのであった。それは全てを元に戻してから身を引くと言う一帆の強い責任感だった。一帆の思いを知った幹子は協力を申し出、仲間たちは失われた記録を求めて奔走する。果たして一帆たちは失われた記録を取り戻せるのか!? その他、寮長に専念するため、ヨット断ちする一帆の「コルキスに進路を取れ」など。特別エッセイ漫画『ぶるうピーターの素 航跡(ウエーキ)ひいて その1 アルゴー号と出会った日』も追加収録した『すくらっぷ・ブック』に続く、小山田いく青春三部作第2弾!! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『海へのあこがれには二通りあるようです。海辺で暮らす人が、海に感じる親しみと、山に住む人が、普段見ることのできない海に惹かれる心と…。ぼくはまぎれもなく後者なので、「ぶるうピーター」もついそんな視点で描いてしまうことが多いのです。もしぼくが、海辺で育っていたら、どんな「ぶるうピーター」ができたか…。想像するのも楽しいかもしれません。』
ぶるうピーター【第7巻】
一帆と恋人、西夜の間にできたほんのわずかのボタンの掛け違い。そのわずかのはずの掛け違いが次第に大きくなって行き…。ある日、カメが盗撮した女子更衣室の写真を一帆の机に隠したことがきっかけで一帆と西夜がケンカ。いつもの些細なケンカのはずだったが、互いに素直になれない二人のすれ違いはだんだん大きくなってゆく。そんな時西夜の前に現れた泊 順(とまり じゅん)に西夜は一帆にない優しさを見る。一方、一帆への想いを隠していたお鈴だったが、ある日、その想いを爆発させ一帆にキスをしてしまう。動揺し女性への不信感を募らせる一帆。そんな一帆に業を煮やしたかえでは、皆で二人がつきあい始めた海に行き、そこで二人の仲が壊れない事を証明するよう一帆に迫る。だが、そこでは思いもかけない結末が! 女子寮を束ねる紅尾鈴(べにおりん)、一帆の隣部屋の十文字唱、南部希美、三郷西夜(みさとせいや)ら女子寮生と、一帆や亀、壱岐たち男子寮生の交流を描いた学園ドラマ。特別読み切りエッセイ漫画「航跡(ウェーキ)ひいて」第2話も掲載。 小山田いく先生の当時の単行本コメント『ぼくは人の顔や名前を覚えるのが大の苦手です。二・三度会った人でも、忘れている事の方が多いので、時々困ったことになります。先日も街を歩いていると、学生風の女の子が、にこっと笑って頭を下げて…はて、だれだったかな?と考えているところへ、今度は太ったおばさんと、セールスマン風の男の人がぺこり。―――結局その三人、誰だったのか未だにわかりません。誰か記憶術教えて。』
ぶるうピーター【第8巻】
語り、悩み、考え…西夜は泊を、一帆は鈴をそれぞれのパートナーとして選んだ。だが同時にその過程の中で、寮長としての一帆と西夜の絆はより強いものとなっていったのであった。夏が過ぎ、迎えた文化祭「蒼風祭」。寮生たちは皆、力を合わせ、寮に黄金の羊毛を探す冒険船「アルゴー船」の艤装を施す。それは、アルゴー寮が男女の垣根を越え一丸となった事を証明するものだった。後夜祭で歌い、喜びあう寮生たち。そんな中、一帆の元に父親から一通の手紙が届く。そしてその手紙は寮生たちを新たな渦に巻き込んでゆく…。いろいろな思いが交錯する中、一帆が出した結論は…!? 「出帆旗(ブルーピーター)ヨーソロー!」一帆が、お鈴が、西夜が、そして寮生たちが、今、新しい航海へと出帆する! 女子寮を束ねる紅尾鈴(べにおりん)、一帆の隣部屋の十文字唱、南部希美、三郷西夜(みさとせいや)ら女子寮生と、一帆や亀、壱岐たち男子寮生の交流を描いた学園ドラマ。『すくらっぷ・ブック』に続く、小山田いく青春3部作第2弾最終巻!! 特別読み切りエッセイ漫画「航跡(ウェーキ)ひいて」第3話も収録! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『連載物の最終回を描き終えた時は半分虚脱状態に陥るのが常です(といっても、まだ二度目ですが)。あまり見られた図ではないので、今回はすぐ旅行に出てみました。初冬の十和田湖畔、奥入瀬渓流は、みごとな紅葉。何もかも忘れて歩きまわり、帰りのバスに乗ったとたん、あたり一面霧と雪に閉ざされました。旅の終わりは雪の中…でもかえってスッキリしたようです。少々寂しくても、終わりは終わりの心で迎えよう...と。』
島崎藤村物語

島崎藤村物語

明治14年、長野県(現在は岐阜県)の馬籠宿から兄弟と共に上京した島崎春樹は明治学院を卒業。明治女学校に英語教師の職を得ると共に女学雑誌社で詩人、北村透谷、作家、星野天地らと親交を深めながら文学の道へと足を踏み入れるが、それは決して平坦な道ではなかった。教え子への慕情と自責、世の中の混乱、愛する人との別れ。一度は悩み、全てを捨てて旅に出た春樹だったが、やがて自らの文学の道を見出し、名を藤村と変えてその道を歩み始める。「夜明け前」「千曲川旅情の歌」などの作品で知られる詩人、小説家の島崎藤村が信州、小諸に居を構える前、文学者として歩み始めた頃を描いた高木達の脚本による演劇を小諸出身の漫画家小山田いくがコミカライズ!
小山田いく まんが昔ばなし傑作集

小山田いく まんが昔ばなし傑作集

日本の各地に古くから伝わる昔話。それらはあるものは面白おかしく、あるものは教訓的な内容をもって今の世に至るまで長く語り継がれて来た。しかし、これらの昔話のルーツをたどってゆくと、その先に見えてくるのは実は人間の情念に彩られた生々しく、そして禍々しい物語なのかもしれない。鶴の舞う村である日突然老夫婦の前に現れた美しい女性…「鶴の恩返し」、藪の中で旅の夫婦に起きた惨事が意外な者の口から語られてゆく「藪の中」、若返りの水を探して一人で山に入った妻を探しに行った夫が見た物は…?「若返りの水」など5作品を収録。「すくらっぷ・ブック」などで若者のみずみずしい青春を、また「風の宿」などで情緒あふれる大人の物語を綴って来た小山田いくが心機一転、新しい切り口で描いてゆく新シリーズ第1巻!
Queen Bee

Queen Bee

花邑姫蜜(はなむら ひみつ)は12歳。蜂と心を通わす事の出来る不思議な女の子。これはそんな姫蜜と、転地養蜂で日本各地を巡る九州は熊本の養蜂一家の物語だ。転地養蜂とは春真っ先に花の咲き始める九州や四国から花を追って日本列島を北上し、ミツバチを育てながらハチミツを採る仕事。今年は春から中学生になる姫蜜を家に残して熊本を発った花邑たち一行だったが、そんな彼らの元に姫蜜が蜂たちをおって家出をしたとの一報が入るところから物語は始まる。やがて花邑たち一行と合流し旅を始める姫蜜。春から夏、そして秋、冬と季節が移り行く中で彼女は旅を続け、時には人と出合い、時には自然の驚異に直面し、時にはその脅威と真っ向から戦いながら蜂たちと寄り添い日々を過ごしてゆく...。日本の四季の中で自然と寄り添いながら生きてゆく養蜂家の生活、そして蜂たちの生態を小山田いく先生が緻密に調べ上げ、丁寧に描き上げた逸品を是非とも味わってみてください。その他、占いを通じ人々に幸せを示すと言われる「吉祥師」が日本屈指の財閥、真田グループの後継者争いに絡む連続殺人事件をその占いと鋭い推理で解決してゆく「吉祥師京太郎の推理」。この恋は本当自分が望んでいた物なのか...今まで単行本化されていなかった幻の作品、恋に悩む高校生の姿を淡々と描いた「ダスト、ジャケット」を収録。小山田いく先生の当時の単行本コメント「昆虫は人間とは全く別の進化の道をたどり、むしろ人間より地球に適応して繁栄している生き物なんだそうです。小さな頃から不思議な連中だとは思っていましたが、やっぱりすごいやつらです。」
くすのき亭の日々

くすのき亭の日々

一昨年母親が急逝してから父と一緒に大衆食堂「くすのき亭」を切り盛りする楠了子(くすのきりょうこ)。以前は色々夢もあったような気もするが、今は淡々と店の仕事をこなす毎日… そんな毎日の筈なのだが、彼女の周りにはいつも不思議な出来事がついて回るのだった。ある日、閉店直後に電話が鳴り、了子が受けるとそれはラーメンの注文だった。自分で調理し出前に行った了子だったが、電話をしてきた女性はこの世の者では無かった。そしてその日から了子の元には閉店後のラーメンの注文が入るようになる。了子は何者かに憑かれたように夜の出前を繰り返すが…。 その他、表題作品「くすのき亭の日々」の他、とあるレストランのオーナーが突然家に友人の娘を住まわせたことからそのオーナーと息子の間に起きる出来事を描いた「すぺしゃる料理人」、昔一緒に遊んだ男の子の面影を追って信州、小諸を訪れた女性の一日をほのぼのと綴る「約束」を掲載。小山田いくが大衆食堂「くすのき亭」の日常にからめて、人間の機微を丁寧に描く珠玉のホラーストーリーの決定版!
五百羅漢

五百羅漢

2006年5月に「五百羅漢」のタイトルで発表されていた小山田いく短編集を今回は3冊に分けて配信。第1巻は表題作品「五百羅漢」の他短編4作品を収録しました。 「五百羅漢」…雑誌「野仏」の専属ライターとして石仏を取材して歩く数巳(かずみ)と恋人の美津子(みつこ)は2人で美津子の実家を訪れる。それは村にある五百羅漢を訪れるためだったが、村ではこの場所は立ち入り禁止という暗黙の了解があった。五百羅漢を訪れてからいつもと違う暗い雰囲気を漂わす美津子と数巳を見て亡き従弟、純生(すみお)の名前を呼ぶ美津子の兄に違和感を覚える数巳。やがて数巳は美津子に隠された秘密を知る事となるが、その時彼を不可解な現象が襲う…。その他、訪れる人もいない山荘を守り続ける老人とそこを訪れた一人の女性。老人はやがて女性に山を愛し、山を描き続けた一人の男について語り始める…「山荘夜話」、薄幸の少女、災子は交通事故で命を落とすがひょんな事から妖怪「猫又」になり?!の「災子、猫又ね!」、とある中学校の庭にある卒業記念の桜とそれを守り続ける教師、朝森(あさもり)。植物を愛する少女、春水(はるみ)は朝森との触れ合いを通してその桜に寄せた人々の想いを知る…「記念樹」、あとわずかで定年を迎える刑事、岩佐の元に配属されてきた新人刑事、栗林奈美。彼女は岩佐が心残りという事件を再捜査するよう、彼に力をかすが、その裏には彼女の隠された秘密があった…「風舞人」。 今回の配信にあたり、特別に録り下ろした『すくらっぷ・ブック』の登場人物・桜井光代のモデル・光代さんのインタビューを掲載しています。
魑魅

魑魅

河童、猫又、人魚など、世の中には昔から正体のわからない生き物が語り継がれて来た。そしてそれらは今も存在する…。私立十種高校には部員がたった二人しかいない生物部があり、その部室の地下には数多くの正体不明の標本が安置されていた…。ある日、この生物部の二人、東森 覚(ひがしもり さとる)と専女 摩未 (とうめ まみ)のもとに2年生の白河啓子(しらかわ けいこ) が猫の死体を抱いて現れた。目の前で車に轢かれて死んだその猫をせめて綺麗な姿で葬りたい、という彼女の願いを受け遺体の修復を引き受けた東森は、その修復の際に地下にあった猫又の手と言われる標本を欠損部の修復に使用した。そして…翌日に彼女は姿を消し、彼女の周りの生徒が次々に事故に遭い始める。果たしてこれは猫又の呪いなのか?! その他、東森が部室に保管してある河童のミイラを返せと必死の形相で部室を訪れた女。その女と河童のミイラの意外な正体は…「河童の巻」、人の怨念が腫瘍になって現れると言われる人面疽。その標本が生物部室から盗まれた。その盗難直前に生物部室を訪れていた少女は夜道でその標本を顔に投げつけられ、やがて少女の顔には不気味な腫れ物が…「人面疽の巻」、生物部室に置かれた哺乳類の内蔵の標本とその中から出てきた人の目玉。調査の先に見えてきたのは人と動物の絆の物語だった…「名のない内蔵の巻」など。古くから言い伝えられる正体不明の動物たち。それらの物語を通じて小山田いくが人の心の機微を描く、感動ホラーコミックの決定版!
合歓リポート

合歓リポート

小春日 合歓(こはるび ねむ)は14歳、小さい頃から身体が小さく、臆病な中学生。両親は大気汚染、河川の汚染などの問題が「公害」と呼ばれた時代に育ったが、彼女にとってはそれは既に昔の事、いや、昔の事の筈だった。小学5年生の時、合歓の友達、省二(しょうじ)が新しくできた道路の脇の池で酸を被ったような状態で亡くなっているのが発見された。それから3年が経ち、合歓は今も現場に建つ地蔵に花を手向けるが、当時一緒にいた本田、千香の二人は目の前の事だけに夢中な毎日だ。そんなある日、地蔵に花を供えに行った合歓は、地蔵の顔が醜く変わっていることに恐怖する。同じ時、合歓の前を通り過ぎた女性があの時と同じように死んだ。そして、あらためて現場を訪れた合歓、本田、千香の3人に恐怖が忍び寄る。その他、海に遊びに来た合歓といとこの早苗が、そこで村の男たちの奇妙な行動を目撃して…「死水母」(しくらげ)、肝試しでとある博覧会の跡地に来た合歓たち。そこで彼女たちが見たのは幻か、恐るべき人類の未来か…「枯れた地平を見ぬように」、誤って学校の地下室に閉じ込められた合歓たちが見た遠い日の飢餓の記憶 「フォメ(飢餓)」 など。現代の人類が抱える数々の問題を小山田いくがホラータッチで鋭く切り込む意欲作! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『あなたは何か怖いものがありますか? 幽霊…地震…暴力団…テスト…タレントAさんの顔……。何かあるでしょう? 恥ずかしいことじゃありません。怖いものを怖くなくすことで、街は進歩してきたんですから…。だから今、ほんの少し、自分のまわりを見て、怖いと思ってほしいんです。山ほどある怖いことに、気づいてほしいんです。』
アニマルDr.由乃

アニマルDr.由乃

人と心を通わせ、共に生きる動物をコンパニオンアニマルという。人と心を通わせる彼らにも魂はあり、そして魂の有るところには時として不思議な出来事が起きる…。染井由乃(そめいよしの)は黒崎動物病院に勤める新米獣医師。失敗をしながらも病院を訪れる動物たちに日々真剣に接している。ある日、白猫ルリを連れ動物病院に訪れた少年は、まるで少年の方が病気のようだった。そして…不思議な事に少年が体調を崩す前には必ずルリが体調を崩すという。そんなルリを少年は「運命を知らせる猫」と可愛がっていたが、実はルリは重篤な病気を患っていた。由乃の必死の治療に次第に回復の兆候を見せ、退院していったルリだったが、ある日突然ルリが失踪。ルリを探す由乃はやがて不思議な出来事に巻き込まれて行き…。その他、可愛がっていた子犬の突然の死をきっかけに街を徘徊する様になった老女。老女の娘は彼女に同じパビヨンの子犬を与えて落ち着かせようとするが、何故かやがて娘の方がその子犬に怯え出し…「ペットロス」、黒崎動物病院の建物では以前殺人事件が有ったという。そして、以前はこの家の令嬢に飼われていたというキバタンの「ヒメ」は、その事件にまつわる、ある夫婦の悲しい物語を全て見ていた…「語りつづけたヒメ」など。動物と人間の絆を若き獣医師の視点からオカルトタッチを交えて描く、小山田いくのハートウォーミングストーリー第1巻!
衆楽苑

衆楽苑

昭和の時代、上野駅は北の国から東京へ来る人々たちの玄関だった。多くの人々が夢を追い、この駅へ降り立った。そんな上野駅横で昭和3年に創業した大衆食堂「衆楽苑」。創業以来、たくさんの人に愛され続けているのは、和・洋・中、なんでも美味しいメニューを揃えていることもさることながら、そこに働く人の温かさにもあるようだ。今日も人々は様々な想いを胸に衆楽苑を訪れる…。夢を追い、東京へ出て来た長田と鮎川。衆楽苑で食事をした二人は景気づけにとウェイトレスのおばさんから餃子をごちそうしてもらう。2人は3年後にここで再会する事を約束し、おばさんにそれを告げてそれぞれの道を歩き始めるが…。その他、家族を嫌悪し、東京に出て一人暮らしをしていた若者が体を病んではじめて気づく母親の愛情「赤い爪」、頻繁に店を訪れ昔話をする老人。だが、彼の本当の歴史とは…「歴史」、ある石屋がテレビで紹介された事で昔の仲間から連絡を受けるが、それは終戦直後の彼の許し難い経験を思い起こさせるものだった…「雑炊」など。人々が様々な想いを胸に上野駅に降り立った昭和の時代、その上野駅横にある大衆食堂「衆楽苑」で交錯する人間模様を、小山田いくが丁寧に綴るハートウォーミングヒューマンドラマの決定版! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『東北・上信越に住む人にとって、上野駅は特別な駅です。上野駅はそれ自体が、故郷と都会をつなぐ大きな待合室なのです。故郷から都会へ、都会から故郷へ、気持ちを切り替えるための、待合室なのです。そんな、様々な心の交錯する上野駅のような食堂を、描きたいと思っています。』
きまぐれ乗車券

きまぐれ乗車券

九城;興生(くじょう おきお)、高校2年生。兄が経営する九城出版で歴史と文化の雑誌、「おのごろ」の雑用係も務めている。ある日、兄に言われて長野に取材に向かった興生だったが、切符を買おうとする興生の前に一人の女の子が急に現れ、強引に一緒に長野行きの切符を買わされる。彼女の名は江馬 環(えま たまき)。あまりに世間知らずで奔放に振る舞う環に振り回されながらも心配でつい世話を焼く興生だったが、どうも環には厄介なお家の事情があるようで、興生もいつの間にかトラブルに巻き込まれてしまう。そんな中、世間知らずながらにしがらみを振り切って一歩を踏み出そうとする環に、興生は彼女の背中を押す事を決意した。そして、そこから二人の旅が始まった…。緻密な鉄道描写も必見! 鉄道での旅を通じて興生と環、そして旅先で出会う人々との心の触れ合いを描いた小山田いくのハートフルストーリー。巻末には当時の単行本には未掲載の「興生と環の20年後」のイラスト&コメントも収録!