第1巻・巣立ちの季節 人並み外れた人見知りの20歳の堂本繁は、札幌で印刷工をしながら絵の勉強をしていた。意気地がなく同僚の女性に失恋してしまった繁は生まれ変わるつもりで100号の大作に挑む。公募展に出品したその作品は特別賞を受賞する。しかし、同僚の嫉妬と上司のイヤミに生まれて初めて怒りを爆発させる。怒りに任せ会社を辞めた繁は、安アパートを借り絵描きの道を志すのだった。そんな彼の前に現れた青年・青野。彼は将来最大のライバルとなるのだった。そして、謎の女・麦子。彼の行くところどこまでも付きまとい繁を困惑させる。その他様々な人物が登場し、物語が展開していく。
後に描かれる『蒼き炎』と近い形で、主人公が色んな芸術家と出会い絵で勝負する。 いい絵を描くために必要なものが人間的な成長(労働の絵を描くために農作業する)ということや、芸術に全てを賭ける登場人物は昨今フィクションの世界でもあまり見られないので逆に新鮮。インテリに支配されハイコンテクストになってしまった現代美術に対して、こういったポリコレ無視の破天荒さ、愚直さが突きつけるものもある。 そんな感じなので現代的な感覚だとところどころに都合のいい女が出てきたり、こんなうまい話あるか!とつっこみたくなる場面があったりするけど、一気に読んでしまった。