あらすじ「僕がアミーナ様のことでわかるのは、仇を討つために戦いたいならそうするべきだ、ということだけです。そのためなら、僕はアミーナ様のために戦います。僕と父の剣に賭けて誓います」第64回日本推理作家協会賞受賞作『折れた竜骨』。魔法が存在する世界で展開される本格ミステリーのコミカライズ第3巻!難攻不落の小ソロンの秘密を看破したファルク。天然の密室と思われていた小ソロンの秘密とは? 積み上げられた事実は誰を<走狗>と指し示すのか!?
12世紀のイングランドを舞台にした「魔法や呪いの存在する世界でのミステリ」という大変意欲的な作品です。作者は「古典部シリーズ」「満願」「王とサーカス」の人気ミステリー作家・米澤穂信。 超常的な力の働く世界で推理によって論理的に犯人を導くことはできるものかと初めは疑いましたが、ふたを開けてみればその美しい論理展開、美しくも切ないラスト、そしてなにより美しい文章にただただ感動させられていました。推理をする上で足場となるべき我々のよく知る物理法則が働くこの世界とは異なる、魔術が発動し、作用する、ローファンタジー世界のルール。このルールを読者に信じ込ませる圧倒的説得力は見事でした。 原作小説の話はこれくらいにして肝心の漫画ですが、背景や服装の細部にいたるまでかなり凝っていて、一つの漫画作品としては満足度の高いクオリティに見えます。ただ、少女漫画風の美麗で(上手い形容詞がみつかりませんが)クリアーな絵が、小説を読んで想像していた不衛生で武骨な中世世界とは少しイメージとは違っていました。例えばヴィンランド・サガやベルセルクのような……まぁでもこの絵はこの絵で素晴らしいので言うだけ野暮ってもんですかね。