「二番目に好きな女」が一番好き 『鼻下長紳士回顧録』完結に寄せて|佐渡島庸平(コルク代表)
佐渡島庸平(コルク代表)
先日、知人の心理カンセラーからある話を聞いた。 「御巣鷹山の救助隊が、当時のことを最近、語り出している。彼らが語り出すのに30年かかった。」 苦しみや悲しみが大きかった時、反応が現れるのに、それだけ時間がかかってしまうのだ。 安野モヨコが、鬱になり、体調を崩し、10年近くの時間が経った。『鼻下長紳士回顧録』を描き始めたのが6年前。描き始められた時、ここまで回復することができたと手を取り合って喜び合った。でも、そこからが長かった。 体調を崩す前は、2、3本の連載を同時に進めるのが当たり前だった。『オチビサン』を毎週連載していたものの、上下巻2冊の