あらすじ

自らの足で前へと進み始めた燈子。だが、その隣は侑の居場所ではなかった。すれ違ったまま時が過ぎ、燈子と沙弥香は修学旅行へ。「思いを伝える。その時は、もう来ている」
やがて君になる1巻

人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える新入生・小糸侑は、生徒会の先輩・七海燈子が告白を受ける場面に遭遇する。誰からの告白にも心を動かされたことがないという燈子に共感を覚える侑だったが、やがて燈子から思わぬ言葉を告げられる。「私、君のこと好きになりそう」

やがて君になる2巻

七海燈子が生徒会長になり、新たな生徒会が動き出す。生徒会役員となった小糸侑は燈子からの想いを受けつつも、いまだに自分の中に、特別な感情が芽生えないことを苦く感じていた。「わたしも、七海先輩を好きになりたい」そう感じ始める侑だったが──。

やがて君になる3巻

七海燈子と小糸侑。徐々に距離を近付けるふたりに、佐伯沙弥香は焦燥感を募らせていた。だが、燈子が望む形で彼女の傍にいることを決めた侑は人を好きになることを諦めようとしていた。「わたしは誰も好きにならない。これまでも、これからも。」

やがて君になる4巻

七海燈子の念願である生徒会劇。夏休みに入り、その練習合宿が行われる。それぞれの思いを秘めながら合宿に臨む燈子、侑、沙弥香。その一方で、燈子の追い求め続けた理想は、揺らぎ始めていた。「侑は私のこと、好きにならないでね」

やがて君になる5巻

燈子を変えたい。自らの願いを見つけた侑は、こよみに生徒会劇脚本の改変を提案する。だが、侑の願いは燈子の望むものではなく……「お姉ちゃんになるのが間違いなら、私は何になればいいの」

やがて君になる6巻

ついに始まる生徒会劇。それは燈子にとって目的であり、今までの自分を出し切る終着駅のはずだった。侑の願いが込められた脚本が燈子の心にもたらすものは。そして──そのときが訪れる。「私だけがあなたの特別でいられたのに」

やがて君になる7巻

自らの足で前へと進み始めた燈子。だが、その隣は侑の居場所ではなかった。すれ違ったまま時が過ぎ、燈子と沙弥香は修学旅行へ。「思いを伝える。その時は、もう来ている」

やがて君になる8巻

TVアニメ化・舞台化の大ヒット恋愛作品『やがて君になる』完結巻。恋を知らない少女が出会った恋物語。その行方は――。

やがて君になる

役を生きる、私が生まれる。

やがて君になる 仲谷鳰
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

恋が分からない侑と、彼女に初恋を覚える先輩・燈子、そして燈子の親友・沙弥香。彼女達の心は、難解だ。 恋を知る私は、恋が分かない侑に感情移入しにくい。燈子の完璧さが隠す物も見えないし、沙弥香の燈子への心もどこか胡乱だ。 侑に甘えながら心を開き切らない燈子。燈子を受け止める侑の優しさ・苛立ち・変化。二人を見る沙弥香の複雑な心情。それを表現する彼女達の言葉は、時に鋭いが時に遠回り。 相手の事は思い遣れるのに、自分の心は掴めない三人。そのモノローグを追ううち、私は彼女達の本当に言いたい事を、未だ形にならない心を、考えずにはいられなくなる。 まるで人の複雑な心に踏み込む舞台の脚本の様な、彼女達の心理描写。そこには私を考え込ませ、よろめかせる強い引力がある。 ☆★☆★☆ 物語は、彼女達の心の変遷と生徒会劇の製作とをシンクロさせて進む。元々は燈子が自分の「人生の役」を完成される為に仕組んだ生徒会劇。図らずも燈子の内面と重なってしまった台本を巡り、三人の心は絡み・切迫し・圧縮されていく。 燈子のために侑が望んで変更した結末。そこに込められたメッセージを受け取った燈子は、舞台で役を生き切った時、「人生の役」から解放されていく。 舞台の完成と、燈子の新生。それが同時に表現される時、難解だった心情はシンプルになって私の心に届く。6巻まで積み上げた先に広がる光景は、凄い創作物を見た喜びと、燈子への祝福に満ちていて、脳が焼けつくような多幸感で煌めいている。 凄い創作物を見た時に、新たな発明品の目撃者である事と、純粋に描かれた内容に感激する事は、両立する事もあるし、そうで無いこともある。そして『やがて君になる』は、確実にそれらが両立する作品だ。 切ない人達の心の解放と新生を描いた、心に残る創造物が、創られ届けられた事に、深く感謝したい。