私的漫画世界|手塚治虫|ブラック・ジャック
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日本の漫画界に革新的な変化をもたらした手塚治虫は1960年代の中ごろまではトップクラスの人気を維持してきましたが,1960年代の後半になると漫画の読者層は子どもたちから青年層にまで広がっていきます。その結果,ビックコミックに代表される青年誌の登場により漫画界の地図が大きく変動しています。
その中で手塚治虫も生き残りのためいくつかの新しい作品を手がけていますが,少年誌でのヒット作はなく,少年漫画の潮流から取り残された存在となっていきます。編集サイドでも手塚治虫は古いタイプの漫画家であるとみなされるようになり,連載依頼が途絶えるようになります。
「ブラックジャック」は漫画家として最大の試練に立たされていた手塚治虫が少年チャンピオン編集部に持ち込んだ企画でした。手塚の花道を飾る引退作品となったかもしれないこの作品は1973年に連載が始まります。
一話読みきりの形式にしたのは当時の少年チャンピオン編集部の編集方針であったようです。読者の反応が悪ければ数回で打ち切りもあり得た状況です。ところが読者の反応は上々であり,3週目で連載の続行が決定されたといういきさつがあります。「ブラックジャック」はほぼ同時期に発表された「三つ目が通る」ともに手塚治虫にとって少年漫画における最後のヒット作となりました。