『花野井くんと恋の病』『おはよう、いばら姫』『マイ・フェア・ネイバー』の森野萌さんが、新人時代に描いた長編読切が電子で単体で発売開始されました。 ある程度ページ数があると単行本の巻末に載せるにも長く、しかし連載していて他の短編が増えるわけでもないので短編集としても出せず未単行本化という作品はかなりあるので、こういう形で改めて読めるようにしてくださるのは嬉しいですね。 本作は、女優の母譲りの顔で性格も良く運動もできて友人も多いという、普通の少女マンガであれば学校のアイドル枠である少年・夏彦がある日突然クラスメイト全員から無視されるようになってしまうところから始まる物語です。 居場所をなくした夏彦が辿り着いたパソコン教室で出逢うのが、ハーフ美人のエマ。写真を撮るのが好きな彼女と、写真を通して少しずつ仲を深めていきます。 後ろ暗いところが何もない夏彦が悪し様に扱われるということは普通に考えれば何かしらの誤解が生じているということなのですが、その誤解は一体どこから生じているのか? その部分が、改めて読むとより今日的なテーマを感じさせてくれました。特に、55Pのセリフは非常に大事なことだと思います。 それと同時に、エマとの関係性やそれを築くために紡がれる言葉ひとつひとつに煌めくものがあります。夏彦の置かれた状況は辛いものですが、そこから立ち直っていく夏彦のポジティブな心根は気持ちの良いものです。 ボーイミーツガールの上質な短編です。
兎来栄寿
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