ストアに行く
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
この作品のお気に入り度は?
星をタップしてお気に入り度を入力しましょう
メモ(非公開)
以下のボタンから感想を入力することができます(別ウィンドウが開きます)
感想を投稿
完了する
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
先月から、山岸凉子さんの名作短編が復刊し電子書籍でも発売され始めました。『日出処の天子』や『アラベスク』などの代表作は一昨年から電子化されており、そちらも人生で一度は触れてみてほしいのですが、この夏の怪談シーズンに読むには『わたしの人形は良い人形』や『汐の声』といったホラーの方での代表作もまたうってつけでしょう。 そんな中で、8月10日に同時に刊行されたのは『白眼子』。こちらは、2000年に短期連載していた表題作「白眼子」と、1990年の短編「二日月」の2篇が収録されています。 『白眼子』は、戦後間もないころの北海道を舞台に、行き場を失った戦災孤児の少女が不思議な力を持つ盲目の男性の下で暮らし始める物語。行き場もなく、恵まれた容姿や能力も持たずに喘鳴しながら生きる主人公の閉塞感が強く伝わってきます。決して楽とは言えない環境でありながらも、少しずつ成長を重ね人生を歩み営んでいくさまに胸を打たれます。 一方で、物語の焦点が白眼子と呼ばれる男性の人の運命を観る力の方に当たっていくと、興味の方が強く立ち上ってきます。白眼子はただ単に「観る」だけのこともあれば、特別な行為を以てそれ以上の干渉を行うこともあります。その力がどういう性質のものなのかが解る瞬間は、なるほどと思わされ山岸凉子さんらしさも感じました。 「災難はどうしたって訪れる。大事なのは、それをどう受け止めるか」という件は、人生を生きるに当たって服膺したいところです。「白眼子」はホラー的な要素もありながらも、全体を通してみると上質なヒューマンドラマであり読後には暖かさがあります。2000年以降の山岸作品の中では特に好きです。 「二日月」の方は、不気味な転校生によって穏やかな日常が浸食されるサイコホラーです。仲の良い友達や気になる男の子という普通の少女マンガで見られる関係性の中に、じっとりと粘りつくように入り込んできて掻き乱してくる転校生。何とも言えない厭な感じの演出が、非常に巧みです。転校生がとあるゲームチェンジを果たしてからは、ますます追い込まれていく主人公。 『わたしの人形は良い人形』や『汐の声』のように直接的に怖がらせてくるお話ではないですが、いわゆる「人にしか出せない湿り気」のようなものを存分に感じさせてくれる一篇です。二日月の日になると思い出してしまう作品ですね。 この機会に、他の名作たちと併せて読んでみてはいかがでしょうか。 余談ですが、少し前に北海道に訪れたときに狸小路を訪れていたのですが「白眼子」の舞台になっていたことに改めて読んで気付かされました。知らず知らずのうちに聖地巡礼をしていたようです。これが、『わたしの人形は良い人形』や『汐の声』の舞台であったら夜眠れなくなっていたと思うので、「白眼子」の舞台で良かったです。
兎来栄寿
兎来栄寿
『白眼子』のクチコミ投稿
クチコミで好きなマンガを広めよう!
話題の種類
「マンガのクチコミってどうやって書けばいいの?」という方へ!選んだ話題の種類に応じて書き方のヒントになる例文を表示します。
クチコミのヒントを表示する
タイトル
本文
白眼子
白眼子
山岸凉子
山岸凉子
あらすじ
戦後間もない北海道小樽で見知らぬ男に拾われた少女。彼女はそこで常人には知る事のできない世界を垣間見て暮らす――(「白眼子」)。表題作に加え、謎の転校生が日常を侵食していく中編「二日月」の全2編を収録。
白眼子の情報の提供お待ちしてます!
掲載している内容の誤りや、この作品に関するおすすめの記事、公式情報のリンクなどはこちらからお送りください。みなさまのご協力をお願い申し上げます。
鬼

M美大のサークル“不思議圏”は、埋もれた故事、遺跡を求めてとある寺で合宿することになったのだが……。表題作のほか、家の習わしである好みを食べた少女の物語『時じくの香の木の実』、『ある夜に』の2作品を収録。
汐の声

汐の声

霊感少女として売り出し中の佐和(さわ)は、オカルト特集のゲストに呼ばれ、取材班とともに郊外の無人の屋敷を訪れるが――(「汐の声」)。表題作のほか、いずれも恐ろしさに息を呑む短編「千引きの石」「夜叉御前」「キルケー」の全4編を収録。
艮(うしとら)

艮(うしとら)

出版社に勤める樋口晶子は霊能者・由布由良の取材をすることに。半信半疑ながら、気になることを言われて……。表題作『艮(うしとら)』のほか『死神』『時計草』『ドラゴンメイド』の怪異・恐怖ストーリー3作品を収録。
ゆうれい談

ゆうれい談

漫画家にとって最大の敵は睡魔。山岸プロでの眠気ざましの話題は“ゆうれい談”。萩尾望都、大島弓子など著名漫画家たちの不思議体験談を始め、アシスタントさんが経験した怪異譚、著者が旅先や自宅で遭遇したほんとうにあった怖い話や魔訶不思議な話を満載。怖いけれど怪異を蒐集せずにはいられない著者の幽霊談。表題作ほか、「読者からのゆうれい談」「蓮の糸」「ゆうれいタクシー」「タイムスリップ」 の5作を収録。解説:小野不由美
ケサラン・パサラン

ケサラン・パサラン

イラストレーター兼エッセイストの星由良子は、突然最寄り駅近くに家を建てることを決意する。美大に通いながら由良子のアシスタント兼秘書をしている姪の紫苑はその無謀な決断を危惧するが……。自宅建設にまつわる新感覚コミック!
テレプシコーラ/舞姫 第1部

テレプシコーラ/舞姫 第1部

篠原六花は小学五年生。バレエ教室を開く母のもと、姉の千花とともにバレエを習ってきた。そんなある日、六花のクラスに不思議な転校生がやってきた。その転校生もまた、バレエを習っているようだったが……。バレエに魅せられた者たちの運命が、今、ゆるやかに交差し、回りはじめる。山岸凉子の傑作長編バレエ漫画、第1巻!
ヴィリ

ヴィリ

バレエ団を経営する東山礼奈は、本公演にも匹敵する意欲的な発表会として「ジゼル」全幕を企画。IT社長・高遠和也をパトロンに得た礼奈は、精神的にも経済的にも充実した状態で稽古を始めるが……。バレエの深淵を垣間見せる、山岸凉子の傑作バレエ漫画!
牧神の午後

牧神の午後

20世紀初頭、バレエ・リュスの創成期に活躍した天才バレエダンサー、ニジンスキーの悲劇の物語「牧神の午後」。天才振付師ジョージ・バランシンの妻マリアの苦悩「ブラックスワン」。ズッコケ・バレエエッセイ漫画「瀕死の発表会」&「Ballet Studio 拝見」。そして『テレプシコーラ』につながる「ローザンヌ国際バレエコンクール」のドタバタ取材旅行を綴った珍道中記。山岸凉子、バレエの世界を堪能あれ。