あらすじ父親の命日、閉店した古書店にひとりの少年が訪ねてきた――。2年前、古書店を営む父を亡くした樹。ある事件をきっかけに、樹と父には修復できないような確執が生じていた。完全に憎むことも、忘れることもできず、葛藤を心に抱いたまま…。新鋭、中陸なかが描く、少年たちの本をめぐる冒険。
先日五反田に行ったのですが、数年前にあおい書店が閉店してしまったのに加えて、とてもマンガの品揃えや陳列センスが良かったかつてのあゆみブックスであるTSUTAYA五反田店すらもなくなってしまっており非常に寂しくなりました。 最近は書店がどんどん減っています。私が子供のころにお世話になった書店も今はほとんど無くなってしまいました。それは中古書店も例外ではありません。 本作は中古書店を営んでいた父親を亡くした息子の物語です。本にばかり感けていて自分の方を向いてくれなかった父親を、サッカー少年であった主人公・樹(たつる)は厭っていました。そんな父親が亡くなってしまい、経営していた古書店「佳日」に父親を下の名前で呼複雑な想いを抱えていたところ謎の少年がやってきて物語の車輪が回り始めます。 『めくり、めぐる』というタイトルの通り、古書店にある本はみな読まれた誰かの手から、また別の誰かの手へと渡っていくもの。考えてみれば、そこに置かれている本はみんな誰かが読みたいと思ったり、あるいは誰かに読んでもらいたいと思われたりした本なのだと思うと、その1冊1冊の裏側にある見えない無限の物語に想いを馳せます。こればかりは、電子書籍ではできない紙の本ならではの魅力ですね。 本が繋ぐ、世代や背景などを超えて生まれる絆。たとえ言葉が通じない人とでも、本が共通言語となって心を交わし合うことができる瞬間が確かにある。自分が長年心の底から探し求めていた本や、昔は興味がなくて読まなかったけど年月を経てから改めて読んでみたら夢中になった本のことなどを想いました。 1話から本当にいいお話ですし、中陸なかさんの絵がまた叙情性溢れる物語にぴったりハマっています。思春期の少年たちの眼がいいですね。 今月に上巻が、1ヶ月後に下巻が発売となるので、まずは上巻だけ買って続きを楽しみにするのも良し、上下巻あわせて買って一気に読むのも良しです。