こういう強さも、ある #1巻応援

松永久秀、斎藤道三と並び戦国三大梟雄と称される宇喜多直家を描いた戦国4コママンガです。 かわいらしい絵ながら、内容はしっかりとしていることに定評のある重野なおきさん。「梟雄」と呼ばれた男の激烈な生き様を、多分にギャグも交えながらもシリアスに描いていきます。普通に劇画で描かれるとエグい内容になりそうなところですが、重野さんの絵だからこそ重くなりすぎません。ただ、戦国時代の凄惨さもしっかりと感じさせてくれる絶妙なバランスです。 なお、作者自身の注釈がありますが「宇喜多直家については『備前軍記』という軍記物が元となっており真偽不明の部分も多いのであくまで物語として楽しんでください」とのこと。実際、他の戦国三大梟雄についても近年の研究によればそこまで残忍でもなかったということが明らかになってきているそうです。歴史の授業で習うことも少しずつ変わっていきますし、その辺りも逆に醍醐味ですね。 ダメ人間である興家と、豪傑な母親の間に生まれた直家の人生は、大きな没落から始まります。そこから這い上がっていく様は、まさに下剋上のお手本でありドラマチックです。 後に彼と激しく鎬を削ることになる浦上宗景は、「酒宴大好き!宗景さん」というサブタイトルのスピンオフを出してもいいくらいのウェイ感全開面白パリピ兄ちゃん。しかしそんな表の顔の下に、たまに鋭く強かな眼光が宿るいいキャラとなっています。 祖父の仇敵と絶妙な距離感を保ったり、妻の父親を殺す命を受けたりと乱世らしい選択を迫られることの連続の中で少しずつ成長していく直家は、立派で魅力的な主人公です。一風変わった節約術など、治世部分にも面白さが色々とあります。 普通の歴史ものが苦手な人でも、少し違った毛色で楽しめるかもしれません。

兎来栄寿
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