あらすじ「花いけバトル」東京大会 最高潮! 好成績を収めたもみじ・イツキのペア生け。そんな二人からのエールを受け、第二予選・大将生けへとサクラは挑む。迎え撃つは、天才・里美を擁する常勝校 清光学園の主将・泉。はたして、その華道の腕前は――!? 決勝への切符を賭けた激戦が始まる!
マーチングバンドの次は、華道! 『みかづきマーチ』の山田はまちさんの待望の新作です。 プロットとしては非常に王道中の王道を行っていますが、それで面白いのが流石です。山田はまちさんの青春ものは、安定して良いですね。 華道をメインテーマとして扱う作品は多くなく、知らない世界である人も多い作品でしょう。私もそこまで詳しいわけではないので、本作で解説される内容は興味深く読んでいます。 「即興花生け」という競技のルールもシンプルかつ面白く、またその頂点である花の甲子園を目指すという目標も非常にわかりやすく、素人であるヒロイン・もみじの目線に沿って物語に容易く乗っていけます。 そして、本作の何よりの美点は、画面で華道の素晴らしい魅力を伝えてくれていることです。『みかづきマーチ』の演奏シーンで見せてくれたような表現力を以て、美しく意趣溢れる花々を生ける姿を描いています。作業中も、完成図も、等しく惹きつけられます。白黒なのに、カラーだと錯覚するような鮮やかさです。 一見使えそうにないものや傷ついたものでも、上手く用いることで素晴らしい作品になる様子は、人間の様態にも当てはまるメタファーのよう。もみじの挫折から始まり、華道という新しい道を見つけて再起していく物語ですが、多くの人に強い共感を呼びそうです。 伸び代のあるもみじのこれからの成長を想うと、ワクワクせずにはいられません。周囲のキャラクターたちも魅力的で、その関係性でも見せ場をたくさん作ってくれそうです。 広くお薦めしたい、秀作です。