あらすじ読書の習慣など全くなかった嘉山。彼は「人を知るため」に本を読むようになる。ある時は腐れ縁の友人に勧められ、ある時は宗教勧誘の女性から好きな本を聞き出して。なぜそうまでして人を知りたくなったのか――。人に出会い、言葉に出会うあたたかな物語。
顔が良くて優しそうで、飄々としていて掴みどころがなく、優柔不断だけどすっと懐に入ってくる、そして執着しない、いい男。 本作はそんな「チャラい男」が女性を取っ替え引っ替えしながら、女性から好きな本を教わる話……と思わせておいて、次第に彼の人間関係とそこで出会う本、そして彼の身に起こる不思議な出来事が綴られる。 「チャラい男」という第一印象から入った私は、次第に彼の多面性を目撃する。底が浅そうな人物という評価は次第に崩れる。感性の豊かさ、分からないと素直に言えるところ、そして抱える複雑さ。時々ある整合性の取れないエピソードや夢と思われるシーンもまた、彼の深みを増す。 チャラい男に懊悩はあり、分かりにくいけれど愛はあった。分からない人に心を寄せるためには、その人にも多面性があると思うことからなのかもしれない、と思わされた。