寒風ふきすさぶ奥羽山脈のそのまた奥地。鳥海山に暮す一流の鷹匠(たかじょう)の源造が出会った角鷹(くまたか)は、気迫に満ちた風格をただよわせていた。金色に輝く瞳、カギ状に鋭く研ぎ澄まされたくちばし、獲物をつかんだらひと握りに窒息させるような頑丈な爪…。自分の倍もあるような狐を一瞬で狩るその勇姿を見せつけられ、源造は、この鷹こそが60年もの間、求め続けていた本物の角鷹であると見抜いた! その5年後、孫の源太郎をともなって山に出る。かつて見たあの鷹を母に持つ子鷹を捕らえ、源太郎に一から鍛えさせ、最高の鷹と鷹匠を創り上げるために! 大自然をこよなく愛する矢口高雄がお贈りするシリーズの第1巻。綿密な取材に基づいて構築され、鷹匠による調教のイロハから、鷹のくわしい生態まで生き生きと描かれた感動の名作がついに登場! 容易に人間に屈しようとはしない角鷹を相手に、果たして源太郎は信頼という名の糸を繋げることができるのか!?
祖父の源造から鷹匠の哲学と技術をいくつも教わった少年・源太郎。驚くべき知能と堂々たる体格を兼ね備えた極上の角鷹(くまたか)・太郎丸との間に絆をつくることにも成功し、このまま鷹匠として順調に成長するかにみえた。しかし、ある事件がきっかけとなり、鷹を使って動物の命を奪うことが正しいことなのかどうか、分からなくなってしまう。祖父から一流の技術を学び、最高の鷹を友に持ちながら、道を見失った源太郎。果たして、彼がその左拳にもう一度、籠手(こて)を着ける日は来るのだろうか? そして源太郎の手から太郎丸が大空へとはばたくことはあるのだろか? 大自然の摂理と少年の純粋な生と死への心の葛藤が交錯する、シリーズ完結の感動の第2巻。実在の鷹匠である土田力三氏に捧げられた、鷹匠の人生と業を描く短編「最後の鷹匠」も同時収録。