あらすじ

勝手にお見合いを進めようとするなど、自分の生き方を思うとおりに決めようとする父に歩は不信感を募らせていく。父の前では萎縮し食事することもままならないが、年齢も名前も知らない少年の前では、不思議と美味しく食べられ、自分の気持ちも話せる。少年と会える日を心待ちにするようになる歩だった。
死にたがりだが腹は鳴る 1

裕福な家庭に育ちながらも父からの期待を一身に受ける事で、生き方に思い悩む女子校生の西条歩。小さな誤解をきっかけとした友人関係のもつれと父からの叱責がさらに歩を追い詰めることになる。居場所を求めてさまよう歩が、立ち寄ったのは公園の片隅に立つ小さな小屋。誰もいないと思ったその場所で、歩の目に飛び込んできたのは……!? 自分のために生きられない少女と少年の呪いを解く物語が今、始まる。

死にたがりだが腹は鳴る 2

公園の小屋で歩が出会った謎の少年。名前もわからぬ少年だが、差し出してくれたベーコン巻きおにぎりはとても美味しそう。少年の何気ない言葉や態度に、歩は思わず笑みを浮かべ、次第に心は和み、押し込めていた感情があふれ出してくる。涙を流してベーコン巻きおにぎりを頬張る歩が、発した言葉は彼女の心からの願い? そして、その言葉を聞いた少年も教えてくれた願いとは? この出会いが互いの人生を大きく変えていく――。

死にたがりだが腹は鳴る 3

相変わらず同級生たちから距離を置かれる歩は、父が敷いたレールに乗って生きたほうが幸せだという考えに至る。そして、少年にハンカチを貸したままだと気づく。一方、少年も同級生たちにイジめられていたが、そんな事はつゆ知らずに歩はハンカチを返してもらうために少年の暮らす家へ。そこで歩は、自分とはまったく違う環境の少年の暮らしを見る事になる。

死にたがりだが腹は鳴る 4

母の帰宅に気づいた少年は押し入れに歩を隠す。恐怖の表情を浮かべながら母の前に立つ少年……母からの蹴りを腹に受ける。始まる激しい折檻、少年を罵倒し、体罰を与える母と謝り続ける少年。そして、動けず隠れ続ける歩。あまりにも自分と違う少年の境遇に歩はショックを覚え、父の事を思い出し、心が揺らぎ始める――。「なんのために生きてるかわからない」歩と少年はパンを分け合いながら、少しずつ互いの気持ちを語り始める。

死にたがりだが腹は鳴る 5

勝手にお見合いを進めようとするなど、自分の生き方を思うとおりに決めようとする父に歩は不信感を募らせていく。父の前では萎縮し食事することもままならないが、年齢も名前も知らない少年の前では、不思議と美味しく食べられ、自分の気持ちも話せる。少年と会える日を心待ちにするようになる歩だった。

死にたがりだが腹は鳴る 6

少年もまた、歩と会う事が心のよりどころとなり始めていた。友人、教師、母親からさえも、心身への暴力を振るわれる少年にとって歩は心のよりどころ。歩にとっても少年は苦しい気持ちを打ち明けられる存在。歳の離れた二人だが、美味しいものを一緒に食べて、話をする時間は自分らしくいられるかけがえのないものになっていた。そんな二人を引き離そうとする影に気づくことはなく――。

死にたがりだが腹は鳴る 7

歩が少年と会っていた事を知った父は激怒し、少年の家へと怒鳴り込む。罵りあう父と少年の母。必死に止めようとする歩に、父は「うるさい!」と手を上げてしまう。それを見た少年の行動に歩は言葉を失う――。歩と少年は、お互いにとって心の内を話せる唯一の仲。今、その関係が大人たちによって引き裂かれようとしている。

死にたがりだが腹は鳴る 8

家を飛び出した歩が、迷わず向かった先は二人の秘密基地。そこには、膝を抱えた少年の姿があった。少年を泣きながら抱きしめる歩。自分のために涙を流してくれる歩に、少年も特別な感情を抱く。夜の公園、並んでラーメンを啜る歩と少年。一時の幸せを感じながら、少年は「美味しいものを食べてから死にたい」と言った理由を歩に静かに話しはじめる。

死にたがりだが腹は鳴る 9

無事に祖父のお墓に着いた啓太と歩。手を合わせる二人の後ろから声を掛けてきたのは……啓太の祖父だった。二人は啓太の状況を伝え、さらに祖父に問う。啓太はなぜ祖父が死んだと聞かされていたのか?啓太はなぜ母に置いて行かれ、そして再び一緒に暮らすことになったのか?罪悪感を覚える祖父は啓太に謝り、「じいちゃんと暮らそう」と提案する。母親から離れ、啓太は新しい居場所での生活を始めることになるのか――。

死にたがりだが腹は鳴る 10

自宅に戻った歩を待っていたのは父の激しい怒りだった。それでも歩は、自身の「やりたいこと」を伝え、少しずつ父の呪縛から脱しようとしていた。行動の制限が厳しくなるも父への抵抗を見せる歩は「啓太に会いたい」と考え、再び父の目から逃れ秘密基地へと向かう。啓太と会うことに喜びを感じている歩。しかし、久しぶりに会う啓太はか弱い声で体の不調を訴えるのだった……。

死にたがりだが腹は鳴る 11

啓太が運ばれた病院で啓太の祖父と母親が再会する。啓太を巡る二人のやり取りを聞くことになる歩。なぜ、啓太を苦しめるのか……母親の口から語られるその理由を聞いた歩は、啓太の母と自分の父を重ねる。啓太は母親から、歩は父親から一方的で理不尽な育てられ方をしてきた。親が持つ歪な価値観が、子どもを苦しめる……これは「呪い」だ。歩が達した結論は、親子を和解へと導くのか――。

死にたがりだが腹は鳴る 12

歩の言葉を受けて、父親はさっそく取引先の子息とのお見合いの席を設ける。粛々と結婚に向けた話が進んでいく中、口を開いた歩は「結婚する気はありません」と驚きの言葉を放つ。歩の真意がまったくわからず困惑する父、歩は目に涙を浮かべながらも強い意志を持って心の中を吐露。果たして親子はわかり合えるのか?

死にたがりだが腹は鳴る 13

「一人でひっそりと死のう」と考えていた啓太だが、歩の優しさに触れることでその気持ちは変わっていった。「歩みを悲しませたくない。心配かけたくない」……そう思うようになった啓太はいつものように暴力を振るう母親に初めての抵抗を見せる。そして、ある決断をする――。

死にたがりだが腹は鳴る 14

厳しい父親のせいで居場所を失っていた歩と、暴力を振るう母親のせいで自死を考えていた啓太。ある日、秘密基地で出会い、一緒に美味しいものを食べ合い、互いに必要な存在となっていた二人の深く悲しい呪いは解けるのか…? 父からの独立、母との決別、それぞれが選択した道で待つのは希望か、それとも……。