卯年の2023年が始まりました。 ということで、新年1発目は『兎-野性の闘牌』……ではなく、高口里純さんの『兎』です。 『紅のメリーポピンズ』に登場し、『グランマの憂鬱』では主人公となった百目鬼ミキなどもそうですが、高口里純さんの描く凛とした大人の女性はとにかく格好いい。 本作『兎』も多分に漏れず、主人公・会田兎(不良仲間からは「ラビット」「ウサ公」などと呼ばれています)の母親・よし江がこの世の酸いも甘いも知り尽くしたような、非常に深い味わいのある良いキャラです。 1話目から、躾の甘い他人の子供に対して ″赤ン坊は腹ン中でめーいっぱい甘えられるんや  いい思いするんや  せやから腹ン中から出たら一番最初に教えてやらにゃならんことは  居心地の悪さやないでっしゃろか  世の中気持ちのいいことばっかやないっちゅーのを  教えるのが母親(オヤ)やないですか  せやなかったら子供に我慢やら思いやりやら  身につきゃしませんわな″ ″いくら世の中便利になったゆうたかて  ガキの育て方まで便利になってどないすんや″ といった具合です。 更に、2話では突然の襲撃に動じることもなく、1対複数人の戦いでドスを振り回して相手の指を斬り落とす大立ち回りを見せます(多分、今だとなかなか描けない描写でしょうか)。 息子の兎に対しては最初憎らしさが先に来ていたものの、やがて母親としての愛情が芽生えてきたという複雑な感情を持っており、その変化を表す雅な表現も伴って人間的な魅力を生み出しています。 実際、動物の兎は人間や犬や猫と違って1日に1〜2回4分程度の授乳しかせず、一見愛情が薄いように見えますが、それには子供に近付く時間をなるべく減らすことで外敵が巣に近付く確率を下げるという意味があります。一部では寂しいと死ぬとも言われる兎は実は放っておかれた方が強く生きられるという生態があり、それに準えているのかもしれません。 ただの街の不良程度であった兎が、よし江の教育の甲斐もあってか ″ウサギ1匹暴れたところで大したことねえさ  それにライオン相手なら立派に正当防衛だ″ と、極道と本気で抗争を始めるように急成長していく様、そしてその際に何故かうさ耳を着けていくところが2023年の年明けに相応しいでしょう。 主人公の成長と共によし江というキャラクターに、そしてこの親子の関係性とそれを彩るセリフに注目して読んでみて欲しいです。
兎来栄寿
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