あらすじ212X年、サイボーグを重視する思想に傾くNYでの生活に疲れた人間のデュナンは、機械文明を嫌う「人間農場」に身を寄せる。一方、恋人でサイボーグのブリアレオスは、デュナンを探して単身人間農場に乗り込もうと試みる。だが、NY市長の双角はサイボーグへの偏愛を一層顕著にし、人間農場のジョニーもNYに対抗すべく暗躍を図る。軋轢が増す二者のもとに、ついに「宇宙人」オリュンポスが姿を現し――。
まず、この本を企画した人の発想と、本当に実現させてしまう力量が凄いと思います。士郎正宗原作を黒田硫黄に依頼するなんて考え方、一体全体、何をどうしたら思い付くのでしょうか。私はアップルシードも、黒田硫黄作品も好きでしたが、何かが激しく合いそうな気がする一方で、これはどうなんだという両方の気持ちが同居する作品でした。 蓋を開けてみれば、作風は真逆ながらしっかりとハードSFしてまして、特にごちゃごちゃした「雑多さ」なんかは、本家とは別の方向でしっくりくるものがあります。いやいや、原作版アップルシードと全然違うじゃないか!とおっしゃる方もいるかと思いますが、私にはこのアップルシードαはもう一つの世界のアップルシードとして存分に楽しめました。 とはいえ、アップルシードの世界観にはいまひとつマッチしてない部分もあったのは確かです。特に戦闘シーンは泥臭くスタイリッシュさがないなんてことは言いませんが、黒すぎて何が何だかわからない場面が少なからずありました。まぁ元々、相反する性質のものが融合してるので、それくらいは仕方ないという気持ちもありつつ、何ならアクション抜きの「アップルシード」でも全然良かったのになぁと思ったり。