あらすじ

世間を震撼させた猟奇殺人は極限の愛の形だった。情夫の遺体に愛の刻印を血文字で綴った女……、その名は阿部定(アベサダ)。三十路に差し掛かった定は、流浪の人生に疲れを感じはじめていた。真面目になろうと決意し、水商売から足を洗い割烹料理屋の女中になったが店の主人・石田吉蔵と不貞を犯し、愛欲に溺れてしまう。「─――吉蔵を殺し、永遠に自分のものにしたい!」定が犯した猟奇殺人は愛ゆえの行動でもあった……。収録作「気違いの象」ほか「不良時代」「父」「震災前夜」「富山市清水町平安桜」「コレラと梅毒」「籠の鳥」の全7話を収録。
淫花伝(1) 阿部定 上

世間を震撼させた猟奇殺人は極限の愛の形だった。情夫の遺体に愛の刻印を血文字で綴った女……、その名は阿部定(アベサダ)。三十路に差し掛かった定は、流浪の人生に疲れを感じはじめていた。真面目になろうと決意し、水商売から足を洗い割烹料理屋の女中になったが店の主人・石田吉蔵と不貞を犯し、愛欲に溺れてしまう。「─――吉蔵を殺し、永遠に自分のものにしたい!」定が犯した猟奇殺人は愛ゆえの行動でもあった……。収録作「気違いの象」ほか「不良時代」「父」「震災前夜」「富山市清水町平安桜」「コレラと梅毒」「籠の鳥」の全7話を収録。

淫花伝(1) 阿部定 下

芸者、高級娼婦、妾の道を繰り返し、三十路を過ぎた阿部定は昭和11年、東京・中野の鰻屋「吉田屋」の女中となり、すぐに主人の石田吉蔵と関係をもってしまう。妻の目を避けながら、逢引を繰り返していた彼らの関係は泥沼愛欲の深みにハマっていく。やがて吉蔵への独占欲に駆られた定は、衝撃の凶行へとおよんだ……。収録作「崩壊感覚」ほか「邪恋地獄」「ぬかるみ」「危険な関係」「痴戯の果て」「定吉ふたりきり」「一人芝居」の全7話を収録。

淫花伝(2) 高橋お伝

ホルマリン漬けの女性器――――殺人者お伝は、ただ不幸に染まった女だった……。江戸末期の激動期に、ヤクザの父の種を宿した母から生れた彼女は、養女として富農の高橋家で育てられる。だが、わずか十四歳で無理やりに結婚を強いられ、決して幸福とは言えなかった。その美貌と官能的な肉体ゆえに、男たちに蹂躙される不幸を背負ったお伝であったが、愛する波之助と出会い、再婚してからの日々は幸福になれたかに見えた。だが呪われた数奇な運命は思いも寄らぬ方向へと暗転していくのだった……。収録作「高橋お伝の母」ほか「冬の日のお伝」「お伝故郷に帰る」「お伝故郷仁義(前・後編)」「お伝旅の宿」「高橋お伝」「高橋お伝・その生活とご意見」「お伝夢幻地獄」の全9話を収録。

淫花伝(3) 本牧お浜

大正から昭和初期にかけて世界中にその名を知られた娼婦・お浜。横浜・本牧のチャブ屋(日本在住の外国人や、外国船の船乗りを相手にした「あいまい宿」の俗称)で、外国船の船員や乗客に肉体を供給していた彼女の人生の光と影。一見、華やかに見えるお浜の日常生活だが、幼い少女時代に洋妾(外国人向けの娼婦の蔑称)奉公に出されたくらい過去があるのだった……。収録作「チャブ屋の女王」ほか「洋妾くずれ」「桜ホテル創業記」「生卵譚」「健治のバカ」「性紀の対決」「夏泥」「愛の夜」「グッドバイ」の全9話を収録。