この航海記を 完成させようと思うんだ 17世紀。英国公認の海賊船に、博識かつ好奇心旺盛な探検家・ダンピアも乗船した──。未知の世界を食べて調べる、実在の人物と史実をもとにした海洋冒険飯漫画。好評第4巻! ダンピアと共に「未知の南方大陸」を目指すことを誓ったリングローズに、まさかの事態が…! 【目次】 CHAP. 25 礼砲と共に CHAP. 26 ふたりの航海記(1) CHAP. 27 ふたりの航海記(2) CHAP. 28 ふたりの航海記(3) CHAP. 29 狙われた楽園 CHAP. 30 ミンダナオの甘い生活 CHAP. 31 シグネット号の反乱(1) CHAP. 32 シグネット号の反乱(2)
僕は知りたい、世界の全てを。様々な波乱、予期せぬ出来事、繰り返される出会いと別れ。世界に未知を求め、その一部始終を手記に書き留めていた ウィリアム・ダンピアの旅は、いよいよ終幕へ。『ダンピアのおいしい冒険』全6巻、ついに完結です。描きおろし番外編『楽園に背を向けて』収録 時はさかのぼり1679年12月、英領ジャマイカ。シャープは私掠船帳リチャード・ソーキンズらと、南海に向けてダリエン地峡を越えんとする。そこでクナ族の王に依頼され、囚われた王女を救出することになるが…。『ダンピアのおいしい冒険』本編を補完する、全54ページのスピンオフ・エピソード。【目次】 CHAP.41 モンスーンの中で CHAP.42 自由の在処 CHAP.43 入れ墨の王子 CHAP.44 思いがけない航路 CHAP.45 喜望峰の探検 CHAP.46 ロンドンにて 楽園に背を向けて EPILOGUE
17世紀の海賊の航海日誌を膨らませた「事実を基にしたフィクション」の伝記漫画なのだが、とても素晴らしい。 昔の学習漫画のようなシンプル絵柄だが、当時の海賊という事情からも病気や戦闘などのともすればグロテスクな部分も読みやすく、またダンピアも実年齢より若々しく感情移入がしやすいし、異常なまでの参考資料から読み取ったであろう先住民や欧州、東南アジアなど各々の文化を、しっかり漫画に落とし込み、題材となった人物をしっかり主人公として魅力的に描くのは相当な筆力を感じる。 英国生まれの青年ダンピアは、貧困と教育を軽んじる当時の価値観から大学に通えず、紆余曲折の果て、はみ出し者だらけの海賊船に流れ着いた、当初は悲観していたが、誰も知らない事の発見者になれる喜びを噛みしめ、未だ未知なる事に溢れた太平洋の冒険に胸を躍らせる。 当時航海も盛んになっていたとはいえ、人々にとっては日々を生きるのが精一杯というのは珍しくもないだろうし、ダンピアのような青年はきっと多かっただろうけど、どんな状況にあろうと好奇心と探求心に満ち溢れ、恐れず行動し、海賊というヤクザ稼業をすらチャンスとして学ぶダンピアが実に魅力的。 「おいしい冒険」の名の通り、食事に関する描写が豊富だが、当時誰も食べたことの無い未知の食材を調理するその風景は、その航路からも正に「先駆者であることの歓喜と偉大さ」を訴えかけてくる。 しかし食事だけでなく、授業料の無いフィールドワーク、税金にせよ犯罪にせよ許され、実力勝負故に人種差別の薄い海賊という職業、それらもひっくるめてのダンピアの「おいしい冒険」であるのも面白い。 危険に溢れた海賊稼業が「おいしい」と言えるかは人によるだろうけど、職業選択の自由もない時代で、海賊以上に劣悪な環境の海軍の事情なども併せて語っているのでダンピア達にとっては正においしい冒険だったのだというのが伝わってくる。 教科書には載らなくとも歴史を彩る偉人の生涯を実に魅力的に描いていて、とても良い読後感を得られる名作。