あらすじ

久留米に現れた吉之助は、吉之助と同じ“意気”で商売をする久留米絣の店主・田中ヤヨイと意気投合する。彼女は天才発明家・田中儀右衛門の姪でもあった。遂に銀座に着いた吉之助は、商人宿で泥棒騒ぎに遭い、日本一の鰹節屋「にんべん」の主人・高津と知り合う。彼の尽力で、吉之助は土橋に九州名産店・薩摩屋を持つことが出来た。見逃してやった泥棒・丑松を店番として雇い、牛鍋屋の店員だった由乃も加わる。儀右衛門の勧めで、横浜を見聞した吉之助は、これからは紙巻タバコの時代が来ると予感して、その製造販売に全てを賭ける決心をした。
てんぐ大将(1)

幕末の動乱が迫る嘉永3年、子宝を求めて多羅岳の天狗大明神に願を掛けた、薩摩の国川内の郷士・岩田卯之助の妻・梅。それによって授かったのが、吉之助だった。並外れた一物の持ち主で、生まれついての商才とスケベ心に長けた吉之助は、10歳で本家の磐田酒造所に奉公し、13歳で島津公の側女・小夜と初体験を果たす。薩摩と英国が戦火を交える中、横暴な薩摩藩士から庇ってくれた月乃屋の女郎・八重やその仲間たちとも仲良くなった。父と母が相次いで亡くなった後、島流しから帰ってきた西郷吉之助(隆盛)に会い、日本のために新しい経済を打ち立ててくれとの言葉を貰う。日本に国産タバコ産業を根付かせた風雲児、羨まし過ぎる女遍歴とその商才を描いた一代記!

てんぐ大将(2)

西郷隆盛と坂本竜馬の会談で、維新の原動力となった薩長連合が成った頃、左文寺の破戒坊主・諒善が、岩田屋の乗っ取りを狙って画策、娘の佐意子を嫁にしようとする。その企みを暴いた吉之助は、一物勝負で諒善を撃破、薩摩から追放した。京阪地方で起こった「ええじゃないか」の狂乱が薩摩にも波及してきた時、天狗に扮して暴徒から岩田屋を守った吉之助は、岩田屋に婿として迎えられ、佐意子と結婚する。時代は明治へ!

てんぐ大将(3)

明治政府の中央集権体制が進む中、新制度実施で甘い汁を吸おうとする藩の役人に反撥した吉之助は、自ら薩摩藩御用を降りた。そして娼妓解放令で行き場を失っていた月乃屋の女郎達を請け出し、彼女たちをホステスに使って川内に天狗酒場…今で言うビア・ガーデンを開く。酒場は大盛況になるが、ホステスの一人・お富美の兄・生駒新十郎が、征韓論に敗れて野に下った西郷隆盛の暗殺を狙っている事を知った。吉之助の説得は失敗。しかしお富美を外国に売ろうとしていた長崎の女衒が店に乗り込んできた時、佐意子の危機を新十郎が救う。吉之助は、女衒達を切り捨てたのは天狗の仕業だと警官に告げ、生駒兄妹を密かに逃がした。

てんぐ大将(4)

西南戦争で敗退を続ける西郷。政府軍に食料を売ったことを咎められて、城山の陣に連れて行かれた吉之助は、西郷から商人の信念を貫けばいいと激励され、梅干を2樽注文された。何とか入手して届けた吉之助に、西郷は自分の有り金全てを渡す。その金は日本のために役立てると誓った吉之助は、店を畳んで単身東京へ。賊軍・官軍双方に付け狙われる中、妹の遺言で吉之助のために命を懸ける生駒や、これまでに関わった女たちが、吉之助の危機を救っていく…。

てんぐ大将(5)

久留米に現れた吉之助は、吉之助と同じ“意気”で商売をする久留米絣の店主・田中ヤヨイと意気投合する。彼女は天才発明家・田中儀右衛門の姪でもあった。遂に銀座に着いた吉之助は、商人宿で泥棒騒ぎに遭い、日本一の鰹節屋「にんべん」の主人・高津と知り合う。彼の尽力で、吉之助は土橋に九州名産店・薩摩屋を持つことが出来た。見逃してやった泥棒・丑松を店番として雇い、牛鍋屋の店員だった由乃も加わる。儀右衛門の勧めで、横浜を見聞した吉之助は、これからは紙巻タバコの時代が来ると予感して、その製造販売に全てを賭ける決心をした。

てんぐ大将(6)

偶然月乃屋にいたトヨと再会した事で、紙巻タバコの製造技術者を手に入れた吉之助は、薩摩国分へタバコの買い付けに向った。そこで女房の佐意子と、幼い頃に離れ離れになっていた弟の吉次郎と再会する。吉次郎もタバコ造りを計画していたのだ。吉之助は吉次郎を連れて東京へ。しかし東京では、諒善がヤヨイを誘拐して、吉之助への復讐を企てていた。丑松はヤヨイの居所を掴むために、泥棒の元締めと取引をする。ヤヨイは無事に救出されたが、元締めは丑松に店の鍵を開けたままにさせ、品物をごっそり盗んでしまう。独り罪をかぶった丑松は、監獄へ…。

てんぐ大将(7)

川内の資産を処分して上京してきた佐意子たち。窃盗事件は女たちの結束も固めていた。銀座に開店した天狗タバコ店は、由乃、ヤヨイ、サトの看板娘の魅力もあって大繁盛。また吉之助は丑松の丑を筆頭に、干支のタバコを売り出す事に決め、大金貸しの沼田リクに交渉。大秘貝の持ち主のリクを失神させる事に成功し、無利息で資金を借りた。これもまた大成功を収めるが、もう一人紙巻タバコを研究していた、吉之助の終生のライバルとなる井村小三郎が出現する。

てんぐ大将(8)

諒善は、出所した丑松とともに雇われた前科者のなかに、仙造と源五郎というスパイを潜り込ませていた。やっと刈り入れの済んだタバコが、放火によって焼き尽くされ、吉次郎が死ぬ。その翌年、遂に井村の両切りタバコが売り出された。材料はアメリカからの輸入葉、製造は日本という代物である。中には世界各国の風景写真が付いていた。熾烈な販売競争が始まる。人気挽回の為に、吉之助がとった手段とは?

てんぐ大将(9)

井村との激烈な販売競争が続く中、改心した仙造が諒善・源五郎と刺し違えて死ぬ。アメリカのタバコ・トラストが吉之助にトラスト傘下に加わるようもちかけてきたが、日本の国益を重視する吉之助は、これをきっぱりと断った。そのトラストと、井村が手を組む。戦いは永遠に続くかと思われたが、明治36年日本政府はタバコの専売制に乗り出した。トラストの買収額1000万円を断った吉之助は、わずか36万円の保証金で政府にタバコ産業の全てを譲り渡す。初めてタバコを日本で作り、企業化した男…。偉業を成しながら偉人伝に名を連ねる事の無かった男は、現在に何を思うのだろうか?